食物アレルギー診断で広く使われる「オープン負荷試験」の精度を、盲検法と比較した検討が行われました。
■ 食物アレルギーは、増えています。
■ 食物アレルギーの正しい診断は、生活の質を大きく左右するため、とても大切です。
■ 確定診断は食物負荷試験(OFC)で行います。
■ 食物アレルギーの診断は、問診(お話を聞く)、血液検査(特異的IgE抗体検査)、皮膚テストなどで行われますが、最終的な確定診断には「食物経口負荷試験(OFC)」が必要です。
■ OFCは、疑わしい食物を少量ずつ食べさせ、アレルギー症状が出るかを観察する検査です。いわば食物アレルギー診断の"ゴールドスタンダード"と言えるものです。
■ そして診断方法には主に2種類あります。
■ 二重盲検試験(DBPCFC)とオープン試験です。
■ 二重盲検試験(DBPCFC)は、最も信頼性が高い方法で、患者さんも医師も何を食べているかわからない状態で行います。ただし、時間とコストがかかります。
■ オープン試験は、何を食べているかわかった状態で行い、より簡単で実用的です。しかし、心理的な影響で結果が変わる可能性があります。
■ 現実的には、二重盲検試験は研究で行うくらいで、一般的にはオープン試験で実施されます。
■ では、そのオープン試験は、どれほど正確性があるでしょうか?
■ このことを確認した研究が、Allergy誌に報告されました。
de Weger WW, Sprikkelman AB, Herpertz CEM, van der Meulen GN, Vonk JM, Koppelman GH, et al. Comparison of Double-Blind and Open Food Challenges for the Diagnosis of Food Allergy in Childhood: The ALDORADO Study. Allergy; n/a.
カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツのIgE依存性アレルギーが疑われる4歳以上の小児63名に対し、二重盲検プラセボ対象食物負荷試験(DBPCFC)を先に実施した後、1-6週間の間隔を空けてオープン食物負荷試験を実施する非劣性試験を実施した。
背景
■ 二重盲検プラセボ対照食物経口負荷試験(DBPCFC)は、食物アレルギーの診断における「ゴールドスタンダード」として広く認識されている。
■ DBPFCFCではバイアスを最小限に抑えるための最大限の努力がなされているが、コスト、時間と資源を要する検査である。
■ より負担の少ないオープン食物負荷試験が臨床現場で増加し、使用されている。
■ しかし、これらの検査の使用に関する推奨は、エビデンスの確実性が低く、最新の国際的な食物負荷試験ガイドラインを用いた比較研究は行われていない。
■ カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツアレルギーが疑われる小児において、オープン食物負荷試験はDBPCFCに劣らないという仮説を立てた。
方法
■ カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツのIgE依存性アレルギーが疑われる4歳以上の小児63名を対象とした。
■ すべての研究参加者は、同一食物に対してDBPCFCを最初に実施し、その後オープン食物負荷試験を実施した。
■ 負荷試験の結果は、事前に定められた基準に従って、陽性、陰性、または判定不能に評価された。
結果
■ DBPCFCとオープン食物負荷試験の結果は、41例中36例(87.8%)で一致した。
■ オープン食物負荷試験の感度は0.91(95%信頼区間0.79-1.03)、特異度は0.83(95%信頼区間0.63-1.01)で、AUC値は0.87であった。
■ 誘発用量と中止用量は、両負荷試験間で有意な差は認められなかった。
結論
■ オープン食物負荷試験の診断精度は、DBPCFCに劣らないことが示された。
■ この知見は、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツアレルギーが疑われる4歳以上の小児に対して、より負担の少ないオープン食物負荷試験を実施できることを示唆している。
■ さらなる研究により、これらの知見を検証し、他の主要な食物アレルゲンに対する診断精度を調査する必要がある。
論文のまとめ
✅️ DBPCFCとオープン食物負荷試験の結果は41例中36例(87.8%)で一致し、オープン食物負荷試験の感度は0.91、特異度は0.83だった。
【簡単な解説】 2つの検査方法の結果は、ほとんど同じでした(約88%が一致)。
✅️ 両試験における症状が出始める量(誘発用量)と検査を中止した量(中止用量)には有意な差が認められなかった。
【簡単な解説】アレルギー症状が出始める食べる量も、両方の検査でほぼ同じでした。これは、盲検法でないオープン法でも、正確な結果が得られることを示しています。
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