ピーナッツアレルギー児にデュピルマブを使用すると、ピーナッツアレルギーは改善するか?

ピーナッツアレルギー治療は、現在も課題が多く、デュピルマブの効果に期待されています。

■ ピーナッツアレルギーは、特に先進国で多く見られ、最大で全体の3%が影響を受けています。
■ 子どもの時に始まり、大人になっても続くことが多く、問題となっています。

■ 現在のところ、ピーナッツアレルギーを根本的に治す治療法はなく、除去食が基本となります。
■ しかし、加工食品中のピーナッツの有無の確認や、コンタミネーション(意図せず混入すること)にも注意する必要があります。

■ しかし、他の食物アレルギーも言えることですが、常に食事に気を使わなければならず、精神的な負担も大きいです。
■ そこで、少しずつピーナッツを食べて体を慣らしていく、すなわち経口免疫療法療法も開発されていますが、副作用の問題があります。

■ そのようななか、オマリズマブ(抗IgE抗体)は、経口免疫療法の安全性や成績を上げるという報告が増えてきました(現状、日本における保険適用はありません)。

■ 一方、最近、生後6ヶ月から使用できるようになったデュピルマブは、アレルギー反応に関係するサイトカイン(IL-4とIL-13)の働きを抑える効果があることが分かっています。

■ では、デュピルマブは、ピーナッツアレルギーの小児に対し、リスクを軽減させ、改善を補佐するのでしょうか?

Sindher SB, Nadeau KC, Chinthrajah RS, Leflein JG, Bégin P, Ohayon JA, et al. Efficacy and Safety of Dupilumab in Children With Peanut Allergy: A Multicenter, Open-Label, Phase II Study. Allergy; n/a.

6-17歳のピーナッツアレルギー患者24名に対し、体重に応じてデュピルマブ300mg(≧60kg)または200mg(≧20-<60kg)を2週間ごとに24週間皮下投与した。

背景

■ ピーナッツアレルギーは小児において生命を脅かす可能性のある食物アレルギーである。

目的

■ 本研究は、インターロイキン(IL)-4/IL-13の活性を阻害するヒトモノクローナルIgG4抗体であるデュピルマブが、ピーナッツアレルギーの小児においてピーナッツ暴露に対する安全性と脱感作を改善するかを検討した。

方法

■ 米国とカナダで第II相、24週間、多施設、単群、非盲検、概念実証試験が実施された(NCT03793608)。

■ ピーナッツアレルギーを有する小児/青年に、体重に応じてデュピルマブ300mg(≧60kg)または200mg(≧20-<60kg)を2週間ごとに皮下投与した。

■ 主要評価項目は、24週目に二重盲検プラセボ対照食物経口負荷試験(DBPCFC)で累積≧444mgのピーナッツタンパクに耐えられた参加者の割合とした。

■ 副次評価項目には、安全性の評価(食物アレルギー研究コンソーシアム重症度分類システム)と、ピーナッツ特異的(ps)-IgG4、総IgE、ps-IgEのベースラインからの変化が含まれた。

結果

■ 24名が登録しデュピルマブを投与された:75.0%が男性、79.2%が白人で、平均(標準偏差)年齢は11.7(3.3)歳だった。
■ ほとんど(95.8%)の参加者はアレルゲン免疫療法を受けていなかった。
■ 2名(8.3%)が主要評価項目を達成し、24週目のDBPCFCをパスした。
■ 15名(62.5%)が66件の治療下有害事象を報告したが、すべて軽度または中等度だった。

■ 24週目のDBPCFCでは、8名(33.3%)がグレード2のアレルギー反応を示し(グレード3以上なし)、10名(41.7%)がアドレナリンをレスキュー薬として使用した。

■ デュピルマブ治療により、総IgE値とps-IgE抗体価はそれぞれ中央値で-54%と-49%減少し、ps-IgG4は0%の変化だった。

結論

■ 24週間のデュピルマブ単独療法は、食物経口負荷試験後のピーナッツ暴露に対する脱感作を改善しなかった。

 

 

論文のまとめ

✅️デュピルマブ治療により、総IgE値とピーナッツ特異的IgE抗体価はそれぞれ中央値で54%と49%減少したが、ピーナッツ特異的IgG4は変化しなかった。
【簡単な解説】 アレルギーの原因となる抗体(IgEとピーナッツに特異的なIgE)は半分程度減りましたが、アレルギーから体を守る抗体(IgG4)は変化がなかった。
✅️24週間の治療後、24人中2人(8.3%)のみが444mg以上のピーナッツ蛋白に対する耐性を獲得した。
【簡単な解説】 治療を受けた24人のうち、ピーナッツ2粒分くらいを安全に食べられるようになったのは2人だけで、あまり効果が見られなかった。

 

 

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