離乳食早期導入は、どれくらい効果があり、どれくらい途中でやめているか?

食物アレルギー予防に向けた早期離乳食導入の最新エビデンスと課題とは?

■ 食物アレルギーは、かゆみやアナフィラキシーなどの症状だけでなく、生活の質やコストに大きな影響を与える問題です。
■ 卵やピーナッツなど、アレルギーを起こしやすい食品を赤ちゃんの時期に早期に導入すると、卵やピーナッツのアレルギーを減らせるかもしれないと分かってきました。

■ このため最近は、一部のガイドラインでも早めに少しずつアレルゲン食品を食べさせることが推奨されるようになってきました。

■ ところが、早期導入によって全体的な食物アレルギーが減るのかは、まだはっきりしていません。
■ そもそも、各国・地域でアレルギーになりやすい食品も異なるので、一律に話を進めることもできないのです。

■ 複数のアレルギーを起こしそうな食品をまとめて赤ちゃんに食べさせる研究もありましたが、結果ははっきりせず、研究を途中で中断する人が多かったという報告もあります。

■ 一方で、複数のアレルゲン食品を早期に導入すると、全体として食物アレルギーが減るという研究もあり、その主な理由はピーナッツのアレルギーが減ったからとされています。
■ このような背景の中、離乳食早期導入がどのくらい有効で、保護者が無理なく続けられるのかをみたメタアナリシスが報告されました。

※日本では、ピーナッツの早期導入に関しては議論があります。
※鶏卵の早期導入で卵黄に対する新生児乳児食物蛋白胃腸症が増えたという面もあります。

Scarpone R, Kimkool P, Ierodiakonou D, Leonardi-Bee J, Garcia-Larsen V, Perkin MR, et al. Timing of Allergenic Food Introduction and Risk of Immunoglobulin E–Mediated Food Allergy: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Pediatrics 2023; 177:489-97.

23試験(ランダム化比較試験 56報、13,794人参加者)を対象としたメタアナリシスにおいて、生後2~12か月(中央値3~4か月)の乳児に複数のアレルゲンとなりうる食品を早期に導入する介入を行った。

背景

■ 卵およびピーナッツを早期に導入することで、それぞれ卵アレルギーとピーナッツアレルギーのリスクが低減する可能性は高いと考えられているが、アレルゲンとなり得る食品全体を早期導入することで食物アレルギー全般を予防できるかどうかは、まだ不明である。

目的

■ 乳児期の食事にアレルゲンとなり得る食品を導入するタイミングと、その後の食物アレルギーリスクとの関連を調査することである。

データソース

■ 本システマティックレビューおよびメタアナリシスでは、Medline、Embase、CENTRALの各データベースを、データベース創設時から2022年12月29日まで検索した。
■ 検索語にはinfant、randomized controlled trial、一般的にアレルゲンとなる食品およびアレルギー発症に関連する用語を含めた。

研究選択

■ 乳児期に牛乳、卵、魚介類(魚、貝類)、木の実、小麦、ピーナッツ、大豆を導入し、1~5歳までの免疫グロブリンE(IgE)介在性食物アレルギーの発症を評価したランダム化臨床試験を対象とした。
■ 複数の著者が独立してスクリーニングを実施した。

データの抽出と総合

■ システマティックレビューおよびメタアナリシスのための推奨報告項目(PRISMA)ガイドラインに従った。
■ データは2名が重複して抽出し、ランダム効果モデルを用いて総合した。
■ エビデンスの確実性評価にはGRADE(Grading of Recommendations, Assessment, Development, and Evaluation)フレームワークを用いた。

主要評価項目と測定項目

■ 主要アウトカムは、1~5歳までの期間におけるあらゆる食品に対するIgE介在性食物アレルギーのリスク、および介入からの離脱率である。
■ 副次的評価項目は特定の食品に対するアレルギーの有無である。

結果

■ 計9,283件の文献をスクリーニングした結果、23の適格な試験(56報、13,794人のランダム化参加者)からデータを抽出した。
■ 4件の試験(3,295人の参加者)から得られた中等度の確実性をもつエビデンスによると、生後2~12か月(中央値3~4か月)で複数のアレルゲンとなり得る食品を導入することは、食物アレルギーのリスク低減と関連していた(リスク比[RR]0.49、95%信頼区間[CI]0.33~0.74、I²=49%)。
■ 食物アレルギー発症率5%の集団における絶対リスク差は、1,000人あたり-26例(95%CI, -34~-13例)であった。
■ また、5件の試験(4,703人の参加者)から得られた中等度の確実性をもつエビデンスによると、生後2~12か月で複数のアレルゲン食品を導入することは、介入からの離脱率の増加と関連していた(RR 2.29、95%CI 1.45~3.63、I²=89%)。
■ 介入からの離脱率が20%である集団における絶対リスク差は、1,000人あたり258例(95%CI, 90~526例)であった。

■ さらに、9件の試験(4,811人の参加者)から得られた高い確実性のエビデンスでは、生後3~6か月で卵を導入することが卵アレルギーのリスク低減と関連していた(RR 0.60、95%CI 0.46~0.77、I²=0%)。

■ 同様に、4件の試験(3,796人の参加者)から得られた高い確実性のエビデンスでは、生後3~10か月でピーナッツを導入することがピーナッツアレルギーのリスク低減と関連していた(RR 0.31、95%CI 0.19~0.51、I²=21%)。

■ 一方、牛乳導入のタイミングと牛乳アレルギーリスクに関するエビデンスは非常に確実性が低かった。

結論および意義

■ 本システマティックレビューおよびメタアナリシスでは、生後1年以内に複数のアレルゲンとなり得る食品を早期導入することは、食物アレルギー発症リスクの低減と関連していたが、介入からの離脱率も高率であった。
■ 乳児とその家族にとって安全かつ受け入れやすいアレルゲン食品導入法を開発するために、さらなる研究が必要である。

 

 

論文のまとめ

✅️ 4試験(3,295人)から得られた中等度の確実性を持つエビデンスによると、早期導入群では食物アレルギーのリスクが51%低下し(リスク比0.49、95%信頼区間0.33~0.74)、1000人あたり26人のアレルギー発症を予防できた。
【簡単な解説】 4つの研究(約3,300人分)のデータを分析した結果、早めに食べさせた赤ちゃんたちは、食物アレルギーになる確率が半分以下に減った。この結果はかなり信頼できるものとされている。

✅️ 卵は9試験(4,811人)、ピーナッツは4件の試験(3,796人)から得られた高い確実性のエビデンスにより、それぞれ生後3~6か月、3~10か月での導入で、アレルギー発症リスクが大きく低下した(卵:リスク比0.60、ピーナッツ:リスク比0.31)。
【簡単な解説】 卵については9つの研究(約4,800人分)、ピーナッツについては4つの研究(約3,800人分)のデータを分析した結果、生後3ヶ月頃から与え始めると、アレルギーになりにくいことが、非常に確実な証拠として示された。

 

 

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