アトピー性皮膚炎の外用治療薬の効果比較が、ネットワークメタアナリシスで実施されました。
■ アトピー性皮膚炎は、世界で最も一般的な慢性の炎症性皮膚疾患です。小児の15-20%、成人の3-10%が罹患しています。
■ 外用療法は、アトピー性皮膚炎の治療の中心です。
■ これには、ステロイド外用薬、カルシニューリン阻害薬、ホスホジエステラーゼ4阻害薬、JAK阻害薬、保湿剤などが含まれます。
■ これらを使って、寛解導入と寛解維持(皮下の炎症のコントロールと再燃予防)を行うことになります。
■ しかし、新規の抗炎症薬が出てきても、それら外用治療同士の比較研究は十分に行われていませんでした。
■ すなわち、新規の抗炎症薬を含めたシステマティックレビューが必要になっていました。
■ そして、そのシステマティックレビューが実施されました。
Chu DK, Chu AWL, Rayner DG, Guyatt GH, Yepes-Nuñez JJ, Gomez-Escobar L, et al. Topical treatments for atopic dermatitis (eczema): Systematic review and network meta-analysis of randomized trials. J Allergy Clin Immunol 2023; 152:1493-519.
2022年9月5日までの主要データベースから特定されたアトピー性皮膚炎の外用治療に関するランダム化試験219件において、43,123名の患者(年齢中央値18.5歳、女性53%)を対象に、68種類の介入を実施し、寛解導入では中央値4週間、寛解維持では中央値16週間の治療期間で評価を行った。
背景
■ アトピー性皮膚炎は複数の外用治療選択肢がある一般的な皮膚疾患であるが、各治療法の比較効果は不確実である。
目的
■ アトピー性皮膚炎に対する処方外用薬の有益性と有害性を系統的に統合評価することを目的とした。
方法
■ 2023年のAmerican Academy of Allergy, Asthma & ImmunologyとAmerican College of Allergy, Asthma, and Immunologyの合同タスクフォースのアトピー性皮膚炎ガイドラインのために、2022年9月5日までMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、CINAHL、LILACS、ICTRP、GREATデータベースを検索し、アトピー性皮膚炎の外用治療に関するランダム化試験を特定した。
■ ペアの査読者が独立して記録をスクリーニングし、データを抽出し、バイアスリスクを評価した。
■ ランダム効果ネットワークメタアナリシスにより、アトピー性皮膚炎の重症度、そう痒、睡眠、QOL関連、増悪、有害事象について検討した。
■ GRADEアプローチにより、エビデンスの確実性を評価した。
■ 外用ステロイド薬は7群に分類し、グループ1を最強とした。
結果
■ 219件の試験(43,123名の患者)で68の介入を評価した。
■ ピメクロリムスは7つのアウトカムのうち6つを改善し、2つで最も効果的だった(エビデンスが高確実性)。
■ 高用量タクロリムス(0.1%)は5つのアウトカムを改善し、2つで最も効果的だった。
■ 低用量タクロリムス(0.03%)は5つのアウトカムを改善し、1つで最も効果的だった。
■ 5群の外用ステロイド薬は6つのアウトカムを改善し、3つで最も効果的だった(中~高確実性のエビデンス)。
■ 4群の外用ステロイド薬とデルゴシチニブは4つのアウトカムを改善し、2つで最も効果的だった。
■ ルキソリチニブは4つのアウトカムを改善し、1つで最も効果的だった。
■ これらの介入では有害事象の増加は認められなかった。
■ クリサボロールとジファミラストは中程度の効果を示したが、有害性は不確実だった。
■ 単独または併用での外用抗菌薬は最も効果が低い可能性がある。
■ 寛解維持に関して、5群の外用ステロイド薬が最も効果的で、次いでタクロリムスとピメクロリムスが効果的だった。
結論
■ アトピー性皮膚炎患者において、ピメクロリムス、タクロリムス、中程度の効果の外用ステロイド薬が複数のアウトカム改善と維持に最も効果的である。
■ 外用抗菌薬は最も効果が低い可能性がある。
論文のまとめ
✅️ピメクロリムスは7つの評価項目のうち6つを改善し、2つの項目で最も効果的であり、高い確実性のエビデンスが得られた。
【簡単な解説】ピメクロリムスという薬は、かゆみや皮膚の状態など、7つの評価項目のほとんどで良い結果を示しました。特に2つの項目では、他のどの薬よりも効果が高かったことが、しっかりとしたデータで証明されました。
✅️5群の外用ステロイド薬は6つの評価項目を改善し、3つの項目で最も効果的であり、中程度から高い確実性のエビデンスが得られた。
【簡単な解説】中程度の強さを持つステロイド軟膏も、多くの評価項目で良い結果を示しました。特に3つの項目では、最も効果的な治療法であることが確認されました。このデータの信頼性は十分高いと判断されています。
※ピメクロリムスは、日本では使用されていない免疫抑制薬の外用薬です(タクロリムスに近い)。
※個人的には、5群(日本で言えば4群くらいでしょう)を長期塗布することは、特に顔面や頸部はおすすめできないと思います。すくなからず、連用による副作用が報告されています。
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