離乳食を早期導入しても、乳児期の食物アレルギーは減らない?早期導入後の食物アレルギーの発症要因を探る研究が発表されています。
■ 乳児期早期に、ピーナッツや卵などのアレルギーを起こしやすい食品を導入することは、食品アレルギー予防のために効果が高いとされています。
■ しかしオーストラリアのメルボルンでは、ガイドラインに従ってピーナッツを早くから与えていても、ピーナッツアレルギーの率が高いことがわかりました。
■ さらに卵アレルギーや、全体的な食品アレルギーの頻度は、早期に離乳食を開始した児達ではまだ詳しく報告されていませんでした。
■ 一方で、生後6か月より前にアレルゲンに触れたときでも、初めて食べたそのときにアレルギー反応を起こす赤ちゃんがいると報告されています。
■ そのため、アレルギーになりやすい要因のうち、食生活や環境のように変えられる要素(修正可能な要因)を調べて、新しい予防策を考える必要があります。
■ ただし、これまでの多くの研究はアレルギー食品の導入を遅らせた赤ちゃんを中心に行われており、早い時期に導入してもアレルギーを起こすケースの原因はあまりわかっていません。
■ そこで、最近の研究で、生後1年以内にアレルゲンを導入するのが一般的なメルボルンの赤ちゃんを対象に、(1)どれくらい食品アレルギーがあるのか、(2)生後6か月までにアレルゲンを与えていてもアレルギーになってしまう赤ちゃんの特徴は何か、(3)変えられる生活環境や食習慣がどのようにアレルギーに影響しているのかが調査されました。
Soriano VX, Allen KJ, Dharmage SC, Shifti DM, Perrett KP, Wijesuriya R, et al. Prevalence and Determinants of Food Allergy in the Era of Early Allergen Introduction: the EarlyNuts Population-Based Study. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2024.
オーストラリア・メルボルンにおいて2017年から2019年にかけて1,420人の11-15ヶ月齢の乳児を対象とし、4種類の食物(ピーナッツ、卵白、牛乳、カシューナッツ)に対する皮膚プリックテストと保護者へのアンケート調査を実施した。
背景
■ オーストラリアでは2016年に、食物アレルギー予防のために1歳までに一般的なアレルギー誘発食品を導入することを推奨する乳児栄養ガイドラインが変更された。
■ 現在、オーストラリアのほとんどの乳児が6ヶ月までにピーナッツと卵を摂取しているが、一部の乳児はアレルゲンの早期導入にも関わらず食物アレルギーを発症している。
目的
■ 全国的なアレルギー予防推奨導入後のコホートにおける食物アレルギーの有病率を明らかにする。
■ アレルゲンの早期導入にも関わらずアレルギーを発症した乳児の特徴を特定する。
■ 修正可能な曝露要因が食物アレルギーの有病率に与える因果効果を推定し、その効果が6ヶ月前後でのアレルゲン導入時期によって異なるかを検討する。
方法
■ オーストラリア・メルボルンで12ヶ月齢の乳児を対象とした母集団ベースのサンプルを募集した。
■ 乳児に対して4種類の食物に対する皮膚プリックテストを実施し、保護者にアンケートを実施した。
■ 感作の証拠がある乳児には経口食物負荷試験を提供した。
■ 有病率の推定値は逆確率重み付けを用いて調整した。
結果
■ ほぼすべての乳児が1歳までに卵、牛乳、ピーナッツなどの一般的なアレルゲンを摂取していたコホート(n=1,420)において、食物アレルギーの有病率は11.3%(95%信頼区間:9.6-13.4)と依然として高値だった。
■ 6ヶ月までにアレルゲンを導入したにも関わらず食物アレルギーを発症した乳児は、アジア系の両親を持つ傾向が強かった。
■ 早期発症の中等度または重症のアトピー性皮膚炎は、アレルゲンを6ヶ月前後のいずれで導入したかに関わらず、食物アレルギーのリスク増加と関連していた。
■ 6ヶ月までにピーナッツを導入した乳児において、6ヶ月までの抗生物質使用はピーナッツアレルギーのリスク増加と関連していた(調整オッズ比=6.03、95%信頼区間:1.15-31.60)。
結論
■ アレルゲンの早期導入が一般的なコホートにおいても、食物アレルギーの有病率は高いままであった。
■ 6ヶ月までに該当アレルゲンを導入したにも関わらず食物アレルギーを発症した乳児は、アジア系の両親を持ち、早期発症のアトピー性皮膚炎を有する傾向が強かった。
■ アレルゲンの早期導入では予防できない食物アレルギーの表現型を持つ乳児に対して、新たな介入が必要である。
論文のまとめ
✅️ ほぼすべての乳児が1歳までにアレルゲンを摂取していた集団において、食物アレルギーの有病率は11.3%(95%信頼区間:9.6-13.4)と高値を示した。
【簡単な解説】 赤ちゃんの頃から卵やピーナッツなどを食べさせていても、9人に1人の割合でアレルギーが発生してしまうことが分かった。
✅️生後6ヶ月までに抗生物質を使用した乳児では、ピーナッツアレルギーのリスクが大きく上昇し(調整オッズ比=6.03、95%信頼区間:1.15-31.60)、特にアジア系の両親を持つ乳児や早期発症のアトピー性皮膚炎を有する乳児でアレルギー発症が多かった。
【簡単な解説】 生後半年までに抗生物質を使った赤ちゃんは、ピーナッツアレルギーになりやすく、特にアジア系の赤ちゃんや、湿疹のある赤ちゃんは、早めに食べ始めてもアレルギーになりやすいことが分かった。
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