オーガニック食品は、アレルギー疾患を減らすのか?

乳幼児期の有機食品摂取は、アレルギー疾患の予防効果がある?

■ 喘息を含む慢性呼吸器疾患が世界の死因として非常に重要な位置を占めていること、そして一方で、アレルギー疾患が生活習慣や環境の影響を強く受けていることがわかっています。
■ 中でも、赤ちゃんのときに母乳で育てられると喘息を予防できる、地中海食などバランスの良い食事が喘息や喘鳴を減らす可能性があるなど、食事とアレルギーとのつながりが注目されています。
■ 一方で、有機食品は農薬や化学物質を抑えて作られており、「健康によい」というイメージがありますが、実際にアレルギーや呼吸器疾患にどのくらい関係しているかを調べた研究は少ないのが実情です。
■ 子どもを対象にした先行研究では、有機食品や有機乳製品を比較的多くとっていると湿疹が減るかもしれないというデータがある一方、喘鳴やアレルギー感作への効果ははっきりしていません。
■ そこで、パリで実施されているコホート試験から、有機食品の摂取頻度が子どもの喘息やアレルギーにどう影響するのかが検討されました。

※ この研究で示された結果は、信頼区間が大きく、有機野菜や食べ物を食べなかったからアレルギーになったというのは尚早のように思われます。また、有機食品の成分そのものというより、別のメカニズムが関係する可能性もあります。noteの後半では、その考察を述べました。

Pernin-Schneider M, Amazouz H, Lezmi G, Bourgoin-Heck M, Just J, Momas I, et al. Organic Food Consumption Might Protect Against Sensitisation to Inhalant Allergens at School Age: The PARIS Cohort. Allergy; n/a.

パリ市内の5か所の産科病院で募集された健康な正期産新生児3,840名のうち、8歳時の健康診断を受診し食事頻度アンケート(FFQ)への回答が得られた1,258名を対象とし、8歳時点での有機食品摂取頻度を評価した。

背景

■ 子どもの食事がアレルギー発症におよぼす影響については近年関心が高まっているが、特に有機食品の摂取に着目した研究は限られているである。
■ 本研究では、PARIS(Pollution and asthma risk: An infant study)コホートを用いて、有機食品摂取と学童期における呼吸器・アレルギー性疾患(喘息、鼻炎、湿疹、感作)との関連を検討するものである。

方法

■ 食事評価は、8歳時点で保護者が回答した食事頻度質問票を用いて行ったである。
■ 有機食品または通常食品を含む30種類の食品の食事頻度アンケート(FFQ)と、19種類の有機食品の摂取頻度をもとにクラスター解析を行い、食事パターンを同定したである。
■ これらの食事パターンと喘息、鼻炎、湿疹、食物アレルゲンに対する感作などの呼吸器・アレルギー性疾患との関連を、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて検討したである。
■ このモデルでは、家族の社会経済的地位や地中海食への遵守度(食事バランスの指標)などの交絡因子を調整したである。

結果

■ 1,258名の小児を対象に3つの食事パターンが確認され、有機食品の摂取頻度において有意な違いがみられた。
■ 具体的には、G0群(51%の子ども)では頻度が低く、G1群(28%)では中等度、G2群(21%)では高頻度だった。
■ 食事パターンと喘息、湿疹、鼻炎、食物アレルゲンに対する感作との間に有意な関連は認められなかった。
■ 一方、G2群の子どもはG0群と比較して、あらゆるアレルゲンに対する感作リスクが低く(調整オッズ比[aOR]=0.60、95%信頼区間[CI]: 0.40–0.91)、特に吸入アレルゲンに対してはさらに感作リスクが低かった(aOR=0.64、95%CI: 0.42–0.99)。

結論

■ 本研究結果から、8歳時点における有機食品の頻繁な摂取は、学童期におけるアレルギー性疾患の感作予防効果を持つ可能性が示唆される。
■ これは、8歳時点の有機食品摂取はより幼少期からの摂取状況を反映していると考えられるためである。
■ 栄養学的側面や環境曝露など、本結果に関わる基礎的メカニズムをさらに検討するために、追加の研究が望まれる。

 

論文のまとめ

✅️ 有機食品摂取頻度により3群(低頻度G0群51%、中頻度G1群28%、高頻度G2群21%)に分類したところ、G2群はG0群と比較してあらゆるアレルゲンに対する感作リスクが40%低下した(調整オッズ比0.60、95%信頼区間: 0.40–0.91)。
【簡単な解説】 有機食品をよく食べる子どもは、ほとんど食べない子どもと比べて、アレルギーの原因となる物質に対する体の反応が約4割少なかった。

✅️有機牛乳および有機乳製品を摂取する子どもは、通常の製品を摂取する子どもと比較してアレルギー性鼻炎のリスクが約45%低下した(オッズ比0.55、p値=0.03)。
【簡単な解説】 有機牛乳や有機乳製品を飲む子どもは、普通の牛乳を飲む子どもと比べて、花粉症などのアレルギー性鼻炎になりにくいことがわかった。

 

 

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