小児のゴマアレルギーは、どれくらい寛解するのか?

ゴマアレルギーの寛解と持続性に関する最近の研究結果が公開されていました。

■ ゴマアレルギーは、イスラエルやオーストラリアでは0.7%〜0.8%の小児が持ちますが、一方で、日本ではそこまで多いものではありません。

■ しかし、実際に外来ではゴマアレルギーのお子さんがいることは確かです。
■ 牛乳や卵アレルギーのように自然に治る(寛解する)ことは比較的少なく、20%〜32%の子どもは時間が経つと耐性を獲得するという報告もあります。
■ しかし、持続する例の要因についてまだはっきりしていません。

■ ゴマアレルギーがなぜ長引くのかをより明らかにすることで、どの患者さんが経口免疫療法の対象になるのか、どんな治療が有効かがわかると良いと思います。
■ 最近、ゴマアレルギーの小児について、どういう人が寛解しやすいか、持続しやすいかを検討した報告がありました。

Kazancioglu A, Ocak M, Sahiner UM, Soyer O, Sekerel BE. Natural history of sesame allergy in pediatric patients: Insight from a retrospective analysis. Pediatric Allergy and Immunology. 2025;36:e70022.

トルコの小児病院で2年以上の追跡データを有する84名のIgE依存性ゴマアレルギー患者を対象に、中央値56.5か月の後ろ向き観察研究を実施した。

背景

■ ゴマアレルギー(SA)は、重篤なアレルギー反応との関連や長期予後に関する知見が限られていることから、近年ますます懸念されているアレルギーである。

目的

■ この後方視研究は、小児における持続的ゴマアレルギー(PSA)に影響を及ぼす危険因子を明らかにし、管理の向上および経口免疫療法(OIT)の適切な候補者選択に役立てることを目的として実施されたものである。

方法

■ 一貫した臨床的反応および免疫グロブリンE(IgE)を介した感作によりSAと診断された84名の小児の電子カルテを解析した。

■ 対象となった患者は、中央値(IQR)56.5(46.0–82.5)か月間フォローアップされた。

結果

■ 参加者の多く(72.6%)は男性で、71.4%が他の食物アレルギーを併発していた。

■ アレルギー反応の回数は中央値(IQR)3.0(2.0–3.7)であり、46.4%は少なくとも1回のアナフィラキシー反応を経験していた。
■ 持続的ゴマアレルギー(PSA)は、82.1%(69/84)の患者に認められた。

■ 初回反応時の皮膚プリックテスト(SPT)の膨疹径が大きいこと(調整後オッズ比=1.79、信頼区間CI:1.05–3.04、p=.03)およびアレルギー反応グレードが2以上であること(調整後オッズ比=19.93、CI:1.37–289.13、p=.02)は、ゴマアレルギーが持続する独立した危険因子であった。
■ 初回反応時のSPT結果が6.7mmを超える患者では、6.7mm未満の患者に比べて、その後のフォローアップ期間中のアレルギー持続リスクが3倍に上昇した(ハザード比HR=3.08、CI:1.17–8.12、p=.02)。
■ 最終受診時にSPT膨疹径および特異的IgEが持続的あるいは増加していた患者は、それぞれ93%および95%がアレルギーを維持しており、PSAの可能性が高かった。

■ 一方で、これらの値が低下した患者(それぞれ37%および39%が自然寛解に至った)は、SAが解消している可能性が低くなかった。

結論

■ 本研究は、初回反応時のSPT膨疹径、反応の重症度、感作指標の持続がPSAの新たな危険因子として重要であることを示した。
■ これらの知見は管理方針の策定やOITの候補者選択に役立つと考えられる。
■ また、SAの自然史を多様な集団で解明し、OITなどの早期介入を評価するために、さらに長期的な研究が必要である。

 

論文のまとめ

✅️ 対象患者の82.1%(69名)でゴマアレルギーが持続し、初回の皮膚プリックテストで膨疹が6.7mm以上の患者は、それ未満の患者と比べてアレルギーが持続するリスクが3倍高かった。
【簡単な解説】 ゴマアレルギーの子どもの多くは自然に治りにくく、特に最初の皮膚検査で強い反応が出た子どもは、アレルギーが続きやすいことがわかった。

✅️ 対象患者の46.4%(39名)が少なくとも1回のアナフィラキシーを経験しており、重症度が高い(グレード2以上)患者はゴマアレルギーが持続するリスクが19.9倍高かった。
【簡単な解説】 約半数の子どもが重いアレルギー反応を経験しており、特に強い症状が出た子どもは、アレルギーが治りにくいことが明らかになった。

 

 

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