洗浄・掃除製品の使用頻度と喘息・喘鳴の発症に関連はあるか?
■ ぜん息は世界中で約3億人もの人が患っている、とても多い呼吸器の病気です。
■ 原因や悪化に関わる要因として、家庭や仕事場で使う「消毒剤や洗浄剤(DCPs)」が注目されています。
■ これらの洗浄剤を職業的に使うと、ぜん息になりやすいとか、すでにあるぜん息や喘鳴がひどくなりやすいといった研究結果があります。
■ 家の中でも、漂白剤やアンモニアなどを含む薬剤やスプレーを使うことで、ぜん息が新しく起こったり悪化したりする可能性があることが示されています。
■ しかし、ほとんどの研究は短い期間だけの薬剤使用を調べていて、長い期間での使用がどう影響するかはあまり分かっていません。
■ 唯一、EGEAという研究で、8年の間に2回の調査を行ったところ、スプレーや刺激物質を使う量が増えた人はぜん息リスクが高く、減った人はリスクが低くなることが報告されています。
■ ところが、多くの研究では自分でアンケートに答える方法しか使っておらず、実際には家や職場でいろいろな薬剤を同時に使っている可能性があるのに、それを正しく分けて分析できていない場合があります。
■ そこで、最近では、クラスタリングという方法を使って「いくつもある薬剤の使い方のパターン」を探り、ぜん息との関係を詳しく調べる必要性が指摘されています。
■ そこで、SOLARというデータを使って、10年にわたる消毒剤や洗浄剤の使い方を調べ、それらが現在のぜん息や喘鳴(息をするときにヒューヒュー音がする)や、新しく発症するぜん息にどのように関係するかが調査されました。
※SOLARは、ドイツで実施されている、20年以上にわたり小児期から成人期にかけて喘息やアレルギーの経過を追跡し、環境的・職業的・心理社会的な健康リスク要因との関連を評価する目的で実施された人口集団ベースの疫学コホート研究です。
Pacheco Da Silva E, Weinmann T, Gerlich J, Weinmayr G, Genuneit J, Nowak D, et al. Exposure Profiles for the Long-Term Use of Disinfectants and Cleaning Products and Asthma. Allergy; n/a.
ドイツの小児喘息調査(ISAAC)に参加した1143名の若年成人を対象に、20年以上にわたって消毒剤および洗浄剤(DCPs)の使用頻度とぜん息の関連を追跡調査した。
背景
■ 家庭や職場での消毒剤および洗浄剤(DCPs)の使用は、ぜん息の発症と経過の両方に影響を及ぼすことが知られているが、多くの疫学研究ではDCPsへの曝露の多面性や相関関係を十分に考慮されてこなかった。
■ 本研究では、潜在クラス分析(LCA)を用いてDCPsの長期的な週単位使用に関する曝露プロファイルを特定し、それらがぜん息とどのように関連するかを評価することを目的とした。
方法
■ 本研究では、International Study of Asthma and Allergies in Childhood(ISAAC)の第II期においてドイツの研究センターで最初にリクルートされた1143名の若年成人を対象とし、計3回の追跡調査を行ったデータを用いてLCAを実施した。
■ LCAモデルには、19–24歳(第1回評価)および29–34歳(第2回評価)の時点で測定された、洗浄スプレー、消毒スプレー、スプレーを用いない消毒方法の使用状況を組み込んだ。
■ 特定された曝露プロファイルと、現在のぜん息および呼鳴(wheeze)、さらに新たに発症したぜん息/呼鳴との関連はロジスティック回帰により評価した。
結果
■ DCPsの長期曝露プロファイル(潜在クラス)として、週単位のDCPs未使用(参加者の55%)、第1回評価時のみ使用(7%)、第2回評価時のみ使用(18%)、持続的使用(8%)、および洗浄スプレーの持続的使用(12%)の5つを特定した。
■ 「週単位の未使用」と比較した場合、「持続的使用」プロファイルに属することは、現在のぜん息(OR=1.68, 95% CI=[0.48–5.88])および現在の呼鳴(OR=1.71, 95% CI=[0.75–3.90])の両方と関連していた。
■ 一方、新たに発症したぜん息/呼鳴については、区間推定値が非常に広く、不確実性が高い結果であった。
結論
■ 本研究は、DCPsに対する5つの異なる長期曝露プロファイルを特定した。
■ そのうち、複数のDCPsを週単位で継続的に使用し続けるプロファイルのみが、ぜん息に対して有害な影響を及ぼす可能性が示唆された。
■ ただし、信頼区間が大きいため、不確実性が大きい点に留意すべきである。
論文のまとめ
✅️ DCPsの使用パターンを分析した結果、「未使用」(55%)、「初回評価時のみ使用」(7%)、「2回目評価時のみ使用」(18%)、「持続的使用」(8%)、「洗浄スプレーの持続的使用」(12%)の5つのグループに分類された。
【簡単な解説】 参加者の掃除用品の使い方を分析したところ、半数以上は「ほとんど使用しない」グループに分類され、約1割が「継続的に使用する」グループに分類された。
✅️ 掃除用品を継続的に使用するグループは、未使用グループと比較して喘息(OR=1.68)と喘鳴(OR=1.71)のリスクが高い傾向を示したが、統計学的な有意差は認められなかった。
【簡単な解説】 掃除用品を継続的に使用する人は喘息になりやすい傾向があったが、確実にそうだと断言できるほどの明確な証拠は得られなかった。
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