ダニの多い環境にいると、甲殻類アレルギーになりやすくなるか?

乳幼児期にダニにさらされると甲殻類アレルギーになりやすい?

■ エビやカニなどの甲殻類アレルギーは、エビやカニを食べたときに起こるアレルギーで、小児期から発症することがあります。
■ 地域によって有病率に違いがあり、アジアでは西洋よりも高い割合(5.1%~7.7%)でエビアレルギーがみられるそうです。
■ エビアレルギーを起こしやすくしている原因の一つとして、ダニ(ヒョウヒダニ)アレルギーが注目されています。

■ たとえば、エビに対する皮膚プリックテストの膨疹径が5mm以上あると、ダニ皮膚プリックテストも5mm以上になるリスクが5.31倍になるという報告もあります。

■ エビとヒョウヒダニにはトロポミオシンという共通のたんぱく質があり、それがアレルギー反応を引き起こすことがあります。

■ ヒョウヒダニが増える環境にいるとハウスダストアレルギーのリスクが高まり、エビにも反応しやすくなるかもしれないと考えられています。
■ ただし、今のところはエビ「感作」とエビ「アレルギー」をはっきり区別して調べた研究がまだ十分ではなく、ヒョウヒダニがどれだけエビアレルギーに影響するかははっきり分かっていません。

■ そこで、日本の4歳児における甲殻類アレルギーの実際の発症率と、環境中のヒョウヒダニとの関係を調べた研究が実施されました。

Kojima R, Shinohara R, Kushima M, Yui H, Otawa S, Horiuchi S, et al. The association of environmental house dust mite allergens and crustacean allergy: the Japan Environment and Children’s Study (JECS). Asia Pacific Allergy 9900.

Japan Environment and Children's Study(JECS)のサブコホート研究に参加した4,242組の母子ペアを対象とし、生後18か月および3歳時点での室内ダニアレルゲン量と4歳時点での甲殻類アレルギーの関連を前向きに検討した。

背景

■ アジアにおいて甲殻類アレルギーの有病率が欧米よりも高い要因として、エビとダニの交差反応が関与している可能性が指摘されている。
■ 環境中のチリダニ(house dust mite)の存在量が多い場合、チリダニに対するアレルギー感作が進行し、それに伴い甲殻類アレルギーの有病率が上昇する可能性がある。

目的

■ 日本の未就学児において、環境中のチリダニアレルゲンと甲殻類アレルギーとの関連を明らかにすることを目的とした。

方法

■ 前向き出生コホート研究であるJapan Environment and Children’s Studyのサブコホート研究に参加した4,242組の母子ペアのデータを用いた。

■ ロジスティック回帰モデルを用いて、生後18か月および3歳時に採取した室内のハウスダスト中のチリダニアレルゲンと、4歳時点での甲殻類アレルギーとの関連を解析した。

結果

■ 甲殻類アレルギーの有病率は0.4%であった。

■ 生後18か月時点でのチリダニ曝露量が高いほど甲殻類アレルギーの有病率は上昇する傾向にあったが、この関連は統計学的に有意ではなかった。
■ 一方で、3歳時点でのチリダニ曝露量と甲殻類アレルギーとの間に有意な正の関連は認められなかった。

結論

■ 乳児期のチリダニアレルゲン曝露と、未就学児期における甲殻類アレルギー発症リスクとの間に明確な関連は認められなかった。
■ 小学生を対象としたトロポミオシン感作の検討を含むフォローアップ研究が必要である。

 

論文のまとめ

✅️4歳児における甲殻類アレルギーの有病率は0.4%であり、アレルギー症状として皮膚症状が最も多く報告された。
【簡単な解説】 調査対象となった4歳児のうち、100人に0.4人(約250人に1人)が甲殻類アレルギーと診断され、その症状は主に皮膚のかゆみや発疹などであった。

✅️生後18か月時点でのダニアレルゲン量(Der 1)は中央値71.2 ng/m2であり、量が多いほど甲殻類アレルギーの発症率が上昇する傾向を認めたが、統計学的な有意差は認められなかった。
【簡単な解説】 赤ちゃんが1歳半の時点で、部屋のダニの量が多い家庭の子どもほど、将来甲殻類アレルギーになりやすい傾向があったが、その差は統計的には差がなかった。

 

 

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