
熱性けいれん(熱性発作)に解熱薬を使う?使わない?
■ 熱性けいれんは、5歳までの子どもに2~5%の割合で起こるとされており、日本人ではさらに多いと考えられています。
■ 一度起きると同じ発熱中に14.8%の確率で繰り返し起こり、2年以内には約30%が再発することが知られています。
■ 日本のガイドラインでは、重症度の高い熱性けいれんにはジアゼパム(っダイアップ)を予防的に使うことが認められており、安全性と効果を示す研究もあります。
■ また、発作は高い熱と関係があるため、解熱薬がよく使われています。
■ 解熱後に急に熱が上昇するときに熱性けいれんを起こしやすくなるという考え方もありますが、最近、日本で実施されたランダム化比較試験では、そのリスクはむしろ下がることが示されました。
■ ただし、解熱薬が熱性けいれんの再発を本当に防ぐかどうかは、研究によって結果が分かれています。
■ そこで、熱性けいれんの際の解熱薬が、熱性けいれんを再燃させやすくするのか、その逆なのかをメタアナリシスで検討されました。
※ 最新のガイドラインでは、発熱時の解熱薬使用が熱性けいれん再発を予防できるとする工ビデンスはなく、再発予防のための使用は推奨されない(解熱薬使用後の熱の再上昇による熱性けいれん再発の エビデンスはない。また、発熱による患者の苦痛や不快感を軽減し,全身状態の改善を図り、家族の不安を緩和するために解熱薬を投与することはほかの発熱性疾患と同様に行ってよい) 、とされています。様子を見ながら解熱薬を使いましょうという意味ですね。
Hashimoto R, Suto M, Tsuji M, Sasaki H, Takehara K, Ishiguro A, et al. Use of antipyretics for preventing febrile seizure recurrence in children: a systematic review and meta-analysis. Eur J Pediatr 2021; 180:987-97.
生後60か月までの熱性けいれんと診断された小児1503名(4か月~4歳)を対象とし、8つの研究(RCT 6件、非RCT 2件)において解熱薬投与による介入を行った。
背景
■ 小児の熱性けいれん再発を予防するための解熱薬の有効性は、最近の研究で報告されており、その結果は従来のエビデンスを覆す可能性がある。
目的
■ 解熱薬による熱性けいれん再発予防効果について、投与のタイミングに着目して系統的に検討した。
方法
■ Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsのデータベースを検索し、熱性けいれんと診断された生後60か月までの小児を対象とした、解熱薬による治療を行った無作為化および準無作為化試験、並びに前向き非無作為化研究を抽出した。
■ 8つの研究からデータを抽出した。
結果
■ 同一発熱エピソード内での熱性けいれん再発を解熱薬が予防したと報告したのは1つの研究のみであり、アセトアミノフェン群では9.1%、対照群では23.5%であった(p < 0.01)。
■ 別の発熱エピソードにおいて解熱薬が熱性けいれん再発を予防する有効性を示す根拠は、4つの研究では示されず、2つの無作為化比較試験のオッズ比は0.92(95%信頼区間, 0.57-1.48)であった。
結論
■ 本レビューは、同一発熱エピソード内での熱性けいれん再発を防ぐ目的で解熱薬を使用することを支持する根拠はきわめて限定的であり、遠隔した発熱エピソードでの使用を支持する根拠は得られなかったことを示す。
■ 解熱薬の効果が投与タイミングに基づくかどうかをさらに明らかにするためには、新たな研究が必要である。
論文のまとめ
✅️ 同一の発熱エピソード内での熱性けいれん再発において、アセトアミノフェン投与群で9.1%、対照群で23.5%と有意な予防効果が認められた(p < 0.01)。
【簡単な解説】 熱が出ている間に、アセトアミノフェンなどの解熱薬を使うと、何も使わない場合と比べて、もう一度けいれんを起こす確率が約3分の1に減ることがわかった。
✅️ 別の発熱エピソードにおける熱性けいれんの再発予防効果については、2つの無作為化比較試験のメタアナリシスでオッズ比0.92(95%信頼区間0.57-1.48)と有意な予防効果は認められなかった。
【簡単な解説】 次に熱が出たときのけいれんを予防するために解熱薬を使っても、効果がみとめられなかった。
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