肥満はアトピー性皮膚炎を悪化させる?

アトピー性皮膚炎と肥満は関係する?

■ アトピー性皮膚炎は、皮膚が乾燥してかゆくなる病気で、患者さんの生活に大きな負担をかけます。

■ 最近、脂肪組織が体の中で炎症を起こしやすくする働きがあるとわかり、アトピー性皮膚炎と肥満の関係に注目が集まっています。

■ 脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵の場ではなく、内分泌機能(ホルモンを出す)を持つ臓器であり、炎症を引き起こしやすい特性を持っています。
特に肥満があると、脂肪組織が慢性的な炎症を悪化させるということです。

■ 乾癬など他の皮膚病では、肥満が症状を重くするのに関わっているという報告があり、体重を減らすと症状が改善することも確認されています。

■ ところが、アトピー性皮膚炎では肥満と病気の重さの関係について、研究結果が一致していません。
■ 米国で行われた大規模調査(34,525人の成人と13,275人の小児が対象)では、アトピー性皮膚炎がある人は肥満のリスクが高く、それが中等度から重度のアトピー性皮膚炎と関わると報告されています。

■ 一方、ヨーロッパでの研究では肥満とアトピー性皮膚炎の重症度に関係がないという報告もあります。

■ そこで最近、実際の医療の現場の大規模データを使って、肥満やほかの病気がアトピー性皮膚炎の重症度とどう関係するかが調査されました。

Traidl S, Hollstein MM, Kroeger N, Fischer S, Heratizadeh A, Heinrich L, et al. Obesity is linked to disease severity in moderate to severe atopic dermatitis—Data from the prospective observational TREATgermany registry. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology 2025; 39:136-44.

ドイツの69施設において、中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者1416名(うち肥満患者234名)を対象とし、BMIに基づき3群に分類して前向き観察コホート研究を実施した。

背景

■ 肥満とアトピー性皮膚炎(AD)に関連があるかどうかについては、これまでの研究結果が一致していない状況にある。
■ 本研究の目的は、肥満とADの重症度との関連を調査することにある。

方法

■ TREATgermanyレジストリコホートの患者を、体格指数(BMI)に基づき3つの群に分けた。

■ サンプル数が少なかったため、低体重(BMI <18.5 kg/m2)の患者は解析対象から除外した。
■ 医師評価および患者自己評価による疾患重症度スコア、ならびに追加の表現型特性について、BMIとの関連を評価した。
■ 一般化線形混合モデルおよび多項ロジットモデルを用いて、BMI、年齢、性別、および現在の全身的アトピー性皮膚炎治療と疾患重症度との関連を検討した。

結果

■ 本研究では、1416名の患者を対象とし、そのうち234名(16.5%)が肥満(BMI ≥30 kg/m2)であった。

■ 肥満は学歴が低いことや喫煙との関連が認められた。

■ それ以外の点では、肥満群と非肥満群のAD患者のベースライン特性に大きな差異はみられなかった。
■ BMIの上昇はoSCORAD(調整後のβ: 1.24, 95% CI: 1.05–1.46, p=0.013)および患者指向型湿疹指標(POEM)(調整後のβ: 1.09, 95% CI: 1.01–1.17, p=0.038)の上昇と関連していた。

■ しかし、肥満群と非肥満群のAD患者間でのoSCORAD全体の差は小さく(Δ oSCORAD=2.5)、臨床的な意義は疑わしい可能性がある。

■ アレルギー性の併存疾患は3群間でほぼ同程度であったが、喘息のみ肥満群で高い頻度がみられ(p<0.001)、顕著であった。

考察

■ 本研究のように大規模かつ十分に特性が明確化されたAD患者コホートにおいて、肥満は医師評価および患者評価のAD重症度指標と有意に関連していた。
■ しかし、その効果量は小さく、臨床的な重要性については疑問が残る。
■ ドイツのAD患者における肥満の全体的な有病率は、他国のADコホートを対象とした研究の報告より低く、これはドイツ人集団を対象とした先行研究の結果を裏付けるものであり、ADと肥満の有病率が地域ごとに異なる可能性を示唆している。

 

 

論文のまとめ

✅️ BMIの上昇は、客観的アトピー性皮膚炎重症度スコア(oSCORAD)(調整後のβ: 1.24, p=0.013)および患者指向型湿疹指標(POEM)(調整後のβ: 1.09, p=0.038)の上昇と有意な関連を示した。
【簡単な解説】体重が増えると、医師が評価した皮膚の症状(oSCORAD)と、患者さん自身が感じる症状(POEM)の両方が少し悪化することがわかりました。

✅️ 肥満群では喘息の合併頻度が有意に高く(p<0.001)、また教育水準が低い傾向と喫煙率の上昇が認められた。
【簡単な解説】 体重が多い人は、喘息を持っている人が多く、また学歴が比較的低めで、タバコを吸う人が多いという特徴がありました。

 

 

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