ゾレア(オマリズマブ)のバイオシミラーは、同等の薬効を発揮するか?

慢性蕁麻疹治療薬オマリズマブのバイオシミラーの有効性と安全性は?

■ バイオシミラー(バイオ後続品)は、先行した特許が切れたバイオ医薬品と同等または同質の品質、安全性、有効性を持つ医薬品です。
■ 先発のバイオ医薬品とは別の製薬会社によって開発され、先行品と比較して価格が低く設定されることが多いため、患者の経済的負担や医療費の軽減が期待されています。
■ 「ジェネリック医薬品」のような意味合いですが、ジェネリック医薬品は化学合成による低分子医薬品であり、先行品と完全に同一の有効成分を持つことが可能です。

■ しかし、バイオシミラーはバイオ医薬品の複雑な構造や製造工程の影響を受けるため、完全に同じものを実現することは難しくなります。
そのため、バイオシミラーは「同等性」や「同質性」を証明することが求められます。

■ さて、慢性特発性蕁麻疹は、かゆみの強い蕁麻疹が長い間続く病気で、地域のよって有症率は異なるものの、世界の人口の約1%の人がかかっていると言われています。

■ 第一選択の抗ヒスタミン薬だけでは、効果が不十分な人が多いという問題があります。
■ そこでオマリズマブが開発されました。これはアレルギー反応に重要なIgEに結合し、症状を改善します。

■ しかし、オマリズマブは有効であるものの、薬の費用が高いことから、多くの患者が使いにくいという課題があります。
■ そこで、バイオシミラーという、元の薬とほぼ同じ性質を持つ後発医薬品が登場すると、より安価に治療が行えるようになる可能性があるわけです。
■ CT-P39はオマリズマブのバイオシミラーとして開発・承認され(日本ではありませんが)、薬物動態などで、オマリズマブとほぼ同等だと確認されています。

■ では、CT-P39とオマリズマブを比べて、慢性蕁麻疹に対する効果や安全性が同等でしょうか?
■ 最近、ランダム化比較試験が公開されました。

Saini SS, Maurer M, Dytyatkovska Y, Springer E, Ratkova M, Krusheva B, et al. CT-P39 Compared With Reference Omalizumab in Chronic Spontaneous Urticaria: Results From a Double-Blind, Randomized, Active-Controlled, Phase 3 Study. Allergy; n/a.

慢性特発性じんましん患者619名に対し、バイオシミラーCT-P39(300mg群204名、150mg群107名)またはオマリズマブ(ref-OMA)(300mg群205名、150mg群103名)を12週間投与する二重盲検ランダム化第3相試験を実施した。

背景

■ 本研究では、慢性特発性じんましん患者において、オマリズマブのバイオシミラーであるCT-P39と、EUで承認された参照薬オマリズマブ(ref-OMA)の治療効果の同等性を比較した。

方法

■ 本研究は、二重盲検、ランダム化、実薬対照の第3相試験(NCT04426890)であり、2つの12週間の治療期間(TP)が含まれた。

■ TP1では、患者はCT-P39 300 mg、CT-P39 150 mg、またはref-OMA 150 mgを投与された。
■ TP2では、ref-OMA 300 mgを投与されていた患者がCT-P39 300 mgまたはref-OMA 300 mgのいずれかに再度ランダムに割り付けられ、CT-P39 300 mgに最初に割り付けられた患者は同じレジメンを継続した。
■ また、CT-P39またはref-OMA 150 mgに最初に割り付けられた患者は、同じ薬剤で300 mg投与を受けた。
■ CT-P39 300 mgとref-OMA 300 mgの治療効果の同等性を評価する主要エンドポイントは、12週時点における週毎のそう痒重症度スコア(ISS7)のベースラインからの変化量とした。

結果

■ TP1において、合計619名の患者がランダム化され(CT-P39 300 mg群 n=204、ref-OMA 300 mg群 n=205、CT-P39 150 mg群 n=107、ref-OMA 150 mg群 n=103)、12週時点のISS7ベースラインからの平均変化量において、CT-P39 300 mgとref-OMA 300 mgの間で同等性が示された。
■ 信頼区間(CI)は事前に設定した同等性の許容範囲内に収まり、グローバル解析では治療差0.77(95% CI –0.37~1.90)、米国解析では治療差0.70(90% CI –0.22~1.63)であった。
■ 治療関連有害事象を1件以上経験した患者の割合は、各群間で同程度であった。
■ 二次的な有効性、生活の質、薬物動態、安全性、および免疫原性に関する評価項目も、各用量レベルで群間に差はなく、スイッチングによる明らかな影響は認められなかった。

結論

■ CT-P39とref-OMAの間で同等の有効性が確認され、安全性も同様に良好であることが示唆された。

 

論文のまとめ

✅️ 12週時点での痒みの重症度スコア(ISS7)の変化量において、CT-P39 300mgとref-OMA 300mgの治療の差は0.77(95%信頼区間:-0.37~1.90)となり、同等性が示された。
【簡単な解説】 バイオシミラーと既存薬オマリズマブで、かゆみの改善度を比べたところ、ほぼ同じくらいの効果があることがわかりました。

✅️ 治療に関連する副作用の発生率は全群で同程度であり、薬の切り替えによる明らかな悪影響も認められなかった。
【簡単な解説】 バイオシミラーを使った場合も、既存薬オマリズマブを使った場合も、副作用の出る割合はほぼ同じでした。また、途中で薬を切り替えても特に問題は起きませんでした。

 

 

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