
アトピー性皮膚炎の新規治療薬デュピルマブ、「いつまで続ける?」
■ アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が何度も悪化したり良くなったりする病気です。
■ デュピルマブは、この病気のかゆみや湿疹を改善し、日常生活の質(睡眠など)を高めることが、さまざまな研究結果から明らかになっています。
■ さらに、デュピルマブは長く使っても安定して継続できる患者さんが多いという報告もあります。
■ しかし、「デュピルマブをどれくらいの期間使うべきか」「中止しても大丈夫な患者さんはどんな人か」という点は、まだ十分にわかっていません。
■ 多くの患者さんは、「中止後に病気が再び悪化するのではないか」と思いつつ治療を続けています。
■ 一方で、患者さんの希望やお金の問題などでやむを得ずデュピルマブを中止せざるを得ない方もいらっしゃいます。
■ そもそも、「長く使いたくない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
■ そこで、実際の医療現場でデュピルマブを使った場合の状況を調べ、さらにデュピルマブを中止して外用薬だけで症状が安定している患者さんがどのような特徴を持っているかが調査されました。
※この結果から「中止が出来ない」というのは尚早で、note後半で考察しました。
Watanabe A, Kamata M, Okada Y, Suzuki S, Ito M, Uchida H, et al. Possibility of maintaining remission with topical therapy alone after withdrawal of dupilumab in Japanese patients with atopic dermatitis and their characteristics in the real world. Exp Dermatol 2024; 33:e15175.
2018年6月から2022年7月にデュピルマブを開始し3カ月以上治療を受けた成人アトピー性皮膚炎患者138名を対象とし、2023年7月までの後ろ向き調査を実施した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)に対するデュピルマブの中止の可能性と、その適切なタイミングは依然として明確ではない。
目的
■ 実臨床においてデュピルマブを中止した後、外用療法のみで寛解を維持できる患者が存在するかどうかを検討する。
■ さらに、そのような患者の特徴を同定する。
対象と方法
■ 2018年6月から2022年7月に当院でデュピルマブを開始し、3カ月以上治療を受けた成人のAD患者を本研究に組み入れた。
■ 観察期間は2018年6月から2023年7月までとした。
結果
■ 138名のうち、58名(42.0%)がデュピルマブを少なくとも1回中止した。
■ そのうち18名(13.0%)は中止後に症状が悪化したため、後に再度デュピルマブを再開した。
■ デュピルマブ中止後、外用療法のみで寛解を維持できたのは7名(5.1%)のみであった。
■ これら7名の特徴として、開始時(ベースライン)のPOEM、瘙痒のVAS、血清TARC値、LDH値、好中球数がいずれも低く、デュピルマブ投与期間が長かった(24.0 ± 13.3カ月 vs. 12.8 ± 7.3カ月)こと、さらにデュピルマブ中止時のEASIおよび皮膚病変の体表面積(BSA)が低値であったことが挙げられた。
■ デュピルマブを1年以上投与した118名のうち、38名(32.2%)が少なくとも1回中止した。
■ そのうち4名(3.4%)のみがデュピルマブ中止後に外用療法のみで寛解を維持し、ベースラインのPOEMが低値であり、中止時点のEASIが低いことが特徴として示された。
結論
■ デュピルマブを中止した後に寛解を維持することは困難である。
■ ベースラインでPOEMが低く、2年以上デュピルマブを投与したうえでEASIが大きく低下した患者では、中止を検討する余地があると考えられる。
論文のまとめ
✅️デュピルマブ中止後に外用療法のみで寛解を維持できたのは138名中7名(5.1%)のみであり、これらの患者は治療開始時のPOEM、瘙痒VAS、血清TARC値、LDH値が低く、投与期間が長かった(24.0±13.3カ月)という特徴を有した。
【簡単な解説】 この結果は、デュピルマブという薬をやめても、塗り薬だけで症状が安定する人は20人に1人程度しかおらず、その人たちは、もともとの症状があまり重くなく、長期間しっかり治療を続けた人たちだったということを示してる。
✅️デュピルマブを1年以上投与した118名のうち、外用療法のみで寛解を維持できたのは4名(3.4%)のみであり、これらの患者は治療開始時のPOEMが低く、中止時点のEASIが低値であった。
【簡単な解説】 この結果は、1年以上しっかり治療を続けた人の中でも、塗り薬だけで症状が安定する人は30人に1人程度しかおらず、その人たちは治療開始時の症状が軽く、やめる時点でも症状がとても落ち着いていた人たちだったということを示しています。
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