
アトピー性皮膚炎の新薬、即効性と持続性で見る治療効果
■ アトピー性皮膚炎は、かゆみと皮膚の炎症が慢性的に続く病気です。
■ 新しい治療法として、デュピルマブ(デュピクセント)をはじめとした生物学的製剤とウパダシチニブ(リンヴォック)をはじめとした内服JAK阻害薬の有効性が示されています。
■ 特にデュピルマブは、体内の炎症を引き起こす物質をブロックする抗体で、有効性が高く重症のアトピー性皮膚炎の方に広く使用されるようになっています。
■ ウパダシチニブは、JAK-1という酵素を阻害する薬で、短期的にはデュピルマブよりも早期に強力な効果を示すことが報告され、12歳以上の小児も使用可能です。
■ しかし、これらの薬剤をどのように使い分けるのかは、治療を中断した後の再発や、長期的な比較データも含め十分ではなく、難しい面もあります 。
■ 最近、思春期以上の患者を対象にこれらの薬の効果と安全性、さらに治療中断後の再発の状況を比較した研究結果が示されており、参考になります。
Zhu J, Wu H, Ye Y, Xu Q, Shao J, Bai Z, et al. Efficacy, Safety, and Early Relapse After Cessation of Upadacitinib Versus Dupilumab in Adolescents with Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis®: A Real-World Study in China. Dermatitis 2024; 35:636-45.
中等症から重症のアトピー性皮膚炎と診断された12-18歳の青年期の患者83名に対して、デュピルマブ(50名)またはウパダシチニブ(33名)による治療を実施した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)に対するウパダシチニブとデュピルマブの有効性と安全性は、青年期患者の臨床試験で証明されている。
■ しかし、この患者集団において薬剤を比較した日常診療での研究はほとんど実施されていない。
目的
■ この単施設後ろ向きコホート研究は、中国人青年期患者における中等症から重症のADに対するウパダシチニブとデュピルマブの有効性、安全性、および投与中止後の早期再発を調査することを目的とした。
方法
■ 2021年10月から2023年10月までにウパダシチニブまたはデュピルマブを投与された83名の青年期患者のコホートデータを後ろ向きに収集した。■ この研究は2つの主要な焦点で構成された。
■ 第一の焦点は治療期で、2つの治療法の有効性と安全性を評価した。
■ 主要評価項目には、ベースラインからのEczema Area and Severity Index (EASI)が50%以上、75%以上、90%以上改善した患者の割合(EASI-50、EASI-75、EASI-90)と、4週目と40週目にValidated Investigator Global Assessment (vIGA) 0/1を達成した患者の割合が含まれた。
■ 第二の焦点では、治療中止後のAD再発を2つの治療群で評価した。
■ 再発までの中央値を算出した。
結果
■ 合計83名の患者が登録された。
■ 4週目において、EASI-75とEASI-90を含む主要評価項目を達成した患者の割合は、デュピルマブと比較してウパダシチニブで著しく高かった(51.5%対14.0%[P < 0.001]、18.2%対2.0%[P < 0.05])。
■ しかし、40週目では、デュピルマブ投与患者でEASI-50とEASI-75およびvIGA 0/1の達成割合が高かった。
■ デュピルマブまたはウパダシチニブ療法の中止後、カプラン・マイヤー曲線は、再発までの中央値がデュピルマブ群で270日、ウパダシチニブ群で18日であることを示した。
結論
■ この研究により、中等症から重症のADを有する青年期患者において、ウパダシチニブはデュピルマブと比較して短期的な有効性が優れていることが示された。
■ 一方、一部の患者における治療中止の条件下では、デュピルマブはウパダシチニブと比較して長期寛解が良好である傾向が示された。
論文のまとめ
✅️ 治療開始4週目ではウパダシチニブ群の方がデュピルマブ群よりも症状改善が高かった(EASI-75達成率:51.5%対14.0%)が、40週目になるとデュピルマブ群の方が高い改善率を示した(EASI-75達成率:82.0%対51.5%)。
【簡単な解説】 治療を始めてから1ヶ月程度の早い段階では、ウパダシチニブの方が症状の改善が速かったのですが、治療を続けて約10ヶ月が経過すると、逆にデュピルマブという薬の方が多くの患者さんの症状を改善させることができました。
✅️ 治療中止後の症状再発までの期間を比較すると、デュピルマブ群は270日、ウパダシチニブ群は18日であり、デュピルマブの方が治療効果の持続が長いことが判明した。
【簡単な解説】 薬を中止した後、症状が再び悪くなるまでの期間を比べると、デュピルマブという薬の方が効果が長く続きました。デュピルマブは約9ヶ月効果が持続したのに対し、ウパダシチニブは約2-3週間で効果が弱まった。
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