
皮膚の水分バランスとアトピー性皮膚炎の関係。その検査には何を使う?
■ 皮膚は、体内の水分を保ち、外部からの刺激や病原体を防ぐバリアとして機能します。
■ このバリア機能の評価には、経皮水分蒸散量(TEWL)と角層水分量(SCH)が広く用いられています。
■ TEWLは皮膚からの水分がどれくらい蒸発して逃げていっているかを測定し、バリア機能の障害を示す指標です。
■ 一方、SCHは角層の水分保持能を反映し、皮膚の乾燥や保湿状態を評価します。
■ アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア機能の低下が特徴的な慢性炎症性皮膚疾患であり、TEWLの増加やSCHの低下が報告されています。
■ たとえば私達は、生まれたばかりの赤ちゃんがTEWLが高いと、その後にアトピー性皮膚炎を発症しやすいことを明らかにしています。
■ 最近、アトピー患者と健常者の皮膚バリア機能を比較し、TEWLとSCHの単独、そして組み合わせの評価法の有効性を検証しました。
Sreekantaswamy S, Meyer J, Grinich E, Leshem Y, Simpson E, Abuabara K. Utility of transepidermal water loss-stratum corneum hydration ratio in atopic dermatitis. Skin Res Technol 2024; 30:e13709.
17歳以上の参加者50名の健常者群と50名のアトピー性皮膚炎患者群を対象に、前腕内側において経皮水分蒸散量(TEWL)と角層水分量(SCH)を測定する比較研究を行った。
今回は短報のため、要約のみ。
✅️経皮水分蒸散量(TEWL)単独での測定は、アトピー性皮膚炎患者の非病変部と健常対照群の識別において最も優れた結果を示し、ROC曲線下面積(aROC)は0.68であった。
【簡単な解説】 TEWLだけを測ることで、アトピー性皮膚炎の人の症状が出ていない皮膚と、健康な人の皮膚の違いを見分けることができました。
✅️保湿剤使用後の治療効果の評価においては、TEWL:SCH比が従来の単独測定よりも優れた識別能を示し、ROC曲線下面積(aROC)は0.63であった。
【簡単な解説】 保湿剤を使った後の効果を調べる時は、TEWLとSCHの両方の値を組み合わせて見ることで、より正確に治療の効果を確認できることがわかりました。
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