
デュピルマブによるアトピー性皮膚炎患者の「かゆみ」改善、維持されるか?
■ アトピー性皮膚炎は、少なくない皮膚の炎症性疾患です。
■ 最近では先進的な全身療法が増えました。特に、生物学的製剤と内服JAK阻害薬が双璧でしょう。
■ そのようななか、「treat-to-target(T2T)」の概念が導入されてきています。
■ Treat-to-target治療は、治療の目的やゴール(たとえば、寛解状態や病態の活性が低い状態)の目標を明確に定め、その達成を目指して治療戦略を調整・変更するアプローチです。
■ このT2T概念では、初期の3か月間の相対的目標と、6か月間の絶対的な最適目標が設定されています。
■ 患者が特に重視する症状は「かゆみ」であり、アトピー性皮膚炎は、過剰なかゆみは睡眠障害を引き起こします。
■ かゆみは生活の質を低下させるだけでなく、かゆみ-ひっかきサイクルにより皮膚バリアがさらに損なわれ、病態が進行します。
■ 最適な6か月治療目標として、患者自身が評価する最大のかゆみ数値評価尺度(PP-NRS)のスコアが4点以下であることが求められます。
■ デュピルマブは、外用治療で十分な効果が得られなかった中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者に対する初の全身療法として、かゆみの改善効果が複数の臨床試験で示されています。
■ そこで、デュピルマブ治療を受けたアトピー性皮膚炎患者において、かゆみ反応の改善(PP-NRS 4点以下)が現れ、その長期の維持を評価するため、52週間のCHRONOS試験および36週間のSOLO‑CONTINUE試験の事後解析が実施されました。
■ さらにいえば、この2つの試験の大きな違いとして、「ステロイド外用薬を併用しているか否か」が大きなポイントです。
■ ですので、あくまで事後解析ながら、外用の重要性を見た研究でもあります。
Ständer S, Yosipovitch G, Simpson EL, Kim BS, Kabashima K, Thaçi D, et al. Onset and Long-Term Maintenance of Optimal Itch Response in Adult Patients with Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis Treated with Dupilumab: Post Hoc Analysis from Two Phase 3 Trials. Advances in Therapy 2025.
18歳以上の中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者を対象に、CHRONOS試験(デュピルマブ300mg隔週投与+ステロイド外用薬(TCS)群とプラセボ+TCS群、52週間)とSOLO-CONTINUE試験(デュピルマブ単独療法の投与間隔を変えた4群とプラセボ群、36週間)の2つの第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。
背景
■ 従来の「treat-to-target」コンセプトは、アトピー性皮膚炎(AD)の全身性治療において到達すべき目標を定め、その中には最も患者に負担となる症状とされる掻痒の改善目標も含まれている。
■ 本研究の目的は、デュピルマブ治療を受けた患者において、treat-to-target基準に基づく最適な掻痒反応の発現およびその長期維持を評価することである。
方法
■ 本事後解析では、18歳以上の中等症から重症のAD患者を対象とした、2件の第3相無作為化二重盲検プラセボ対照試験のデータを用いた。
■ CHRONOS試験では、患者は52週間、局所用ステロイド剤(TCS)併用下で、デュピルマブ300 mgを2週間ごとに投与される群またはプラセボ+TCS群に割り付けられた。
■ 一方、SOLO1/2試験において、16週間の治療後にEczema Area and Severity Index(EASI)改善75%またはInvestigators Global Assessment(IGA)0/1を達成した患者を対象に、SOLO‑CONTINUE試験で、デュピルマブ単独療法(300 mgを毎週、または2週間ごと、4週間ごと、8週間ごとに投与)またはプラセボが36週間投与された。
■ 最適な掻痒反応は、Peak Pruritus Numeric Rating Scale(PP‑NRS)が4以下と定義された。
結果
■ デュピルマブ+TCS群の患者は、プラセボ+TCS群と比較して、有意に早期にかつ高い割合で最適な掻痒反応を達成した(P < 0.0001)。
■ また、デュピルマブ+TCS群では、その最適反応が長期間維持され、中央値(第1四分位–第3四分位)は40 [11–50]週間であったのに対し、プラセボ+TCS群では3 [0–23]週間であった(P < 0.0001)。
■ さらに、デュピルマブ単独療法により最適な掻痒反応を達成し治療を継続した患者は、プラセボに切り替えた患者と比較して、より長期間その反応を維持したが、投与間隔が長くなるにつれて維持期間は短縮された(すべてのデュピルマブレジメン vs プラセボでP < 0.0001)。
結論
■ デュピルマブ治療(外用ステロイド剤併用の有無にかかわらず)を受けた成人患者では、最適な掻痒反応が迅速に達成され、長期間維持された。
■ 【試験登録】NCT02395133およびNCT02260986。
論文のまとめ
✅️ デュピルマブ+ステロイド外用薬(TCS)群では、最適な掻痒反応(PP-NRS≦4)の達成までの期間中央値が29.0日であり、プラセボ+TCS群の64.0日と比較して有意に早期であった(P<0.0001)。
【簡単な解説】 デュピルマブを使った患者さんは、使わなかった患者さんと比べて、かゆみスコアが低くなるまでの時間が約1ヶ月と早く、この差は統計的にも意味のある結果でした。
✅️ SOLO-CONTINUE試験における36週時点での最適な掻痒反応の維持率は、デュピルマブ週1回投与群で75.8%、2週間ごと投与群で77.6%と高値を示し、投与間隔が長くなるにつれて低下し(4週間ごと60.4%、8週間ごと47.3%)、プラセボ群では30.4%と最も低値であった。
【簡単な解説】 デュピルマブを定期的に続けて使用した患者さんは、約8ヶ月後でもかゆみが良好な状態を保てていました。特に1-2週間ごとに投与を受けた人の7割以上で効果が続いていましたが、投与の間隔が空くほど効果は減っていきました。
※論文の背景や内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。
※登録無料のニュースレター(メールマガジン)は、一部有料会員向けも始めていますが、定期的に無料記事も公開予定です。さまざまなテーマを深堀り解説していきますので、ご興味がございましたらリンクからご登録ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。