
乳幼児アトピー治療に対するデュピルマブ。併存疾患の影響を受けるか?
■ アトピー性皮膚炎は、乳幼児に非常に多く見られる皮膚の病気で、世界中で6ヶ月から5歳の子どもの約12%がこの病気を持っていると報告されています。
■ この病気は単なる「肌荒れ」ではなく、激しいかゆみや睡眠障害などを引き起こし、子どもだけでなく家族の生活の質にも大きな影響を与えます。
■ さらに、アトピー性皮膚炎の子どもたちは、しばしば他のアレルギー性疾患も同時に持っていることが多いのです。
■ 例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどです。
■ これらの病気は「2型炎症性疾患」と呼ばれ、体の免疫系統が似たような仕組みで過剰に反応することで起こります。
■ 「デュピルマブ」は、日本でも生後6ヶ月の重症アトピー性皮膚炎のひとに使用できるようになっており、これらの病気の原因となる免疫反応を抑える働きがあります。
■ 具体的には、インターロイキン(IL)-4とIL-13というタンパク質のシグナル伝達をブロックすることで、炎症を抑えます。
■ 大人や子どもを対象とした臨床試験では、デュピルマブは効果的で安全性も良好であることが示されていますが、アトピー性皮膚炎だけでなく、喘息やアレルギー性鼻炎などの症状も同時に改善する可能性があることです。
■ しかし、まだ解決されていない疑問があります。
■ それは「乳幼児のアトピー性皮膚炎の治療において、他のアレルギー疾患を持っているかどうかによって、デュピルマブの効果は変わるのか?」というものです。
■ そこで、生後6ヶ月から5歳の子どもを対象に、デュピルマブの効果と安全性が、喘息やアレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどの併存疾患によってどのように影響されるかが調査されました。
Boguniewicz M, Sher LD, Paller AS, Arkwright PD, Yoshihara S, Chen Z, et al. Dupilumab is Efficacious in Young Children with Atopic Dermatitis Regardless of Type 2 Comorbidities. Adv Ther 2024; 41:4601-16.
6ヶ月から5歳の中等症から重症のアトピー性皮膚炎で外用療法で適切に制御できなかった、または外用療法が医学的に不適切と考えられた小児162名(平均年齢3.1歳、61%が男性)を対象に、デュピルマブ群+ステロイド外用薬(TCS)(83名)とプラセボ群+TCS(79名)に分けて16週間の治療介入を行った。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)の患者は、しばしば他の2型炎症性の併存疾患を有している。
■ 本研究の目的は、幼児ADにおけるデュピルマブの反応性と安全性に2型併存疾患が与える影響を評価することだった。
方法
■ LIBERTY AD PRESCHOOL パートBは、6ヶ月から5歳の中等症から重症のADの小児を対象としたランダム化、プラセボ対照試験である。
■ この事後解析では、ベースライン時に介護者が報告した特定の2型併存疾患(喘息、アレルギー性鼻炎(AR)、食物アレルギー(FA))の有無によって患者を層別化した。
結果
■ 16週時点で、喘息やARの有無にかかわらず、デュピルマブ群はプラセボ群に比べ、有意に多くの患者が治験医による全体評価(IGA)が0または1となり、かつ湿疹面積および重症度指数(EASI)が75%以上改善した(すべて p < 0.05)。
■ FAを有する患者において、デュピルマブ群はプラセボ群に比べ有意に多く、またFAを有さない患者においても数値上、デュピルマブ群の方が多くIGAが0または1となった(p = 0.0007 および p = 0.06)。
■ 喘息を有する患者ではデュピルマブ群がプラセボ群に比べ数値上多く、喘息を有さない患者では有意に多く、最悪の掻痒/掻破数値評価尺度(WSI‐NRS)の1日平均スコアが週あたり4ポイント以上減少した(p = 0.6 および p < 0.0001)。
■ さらに、ARの有無(p = 0.008 および p < 0.0001)やFAの有無(p = 0.0002 および p = 0.004)にかかわらず、デュピルマブ群はプラセボ群に比べ、WSI‐NRSの日平均スコアが週あたり4ポイント以上減少した患者が有意に多かった。
■ 全体として、安全性は既知のデュピルマブ安全性プロファイルと一致した。
結論
■ デュピルマブ治療は、喘息、AR、FAなどのタイプ2併存疾患の有無にかかわらず、6ヶ月から5歳までの小児におけるADの所見および症状を改善する。
【試験登録】ClinicalTrials.gov登録番号 NCT03346434。
論文のまとめ
✅️16週時点で、喘息やアレルギー性鼻炎の有無にかかわらず、デュピルマブ群はプラセボ群に比べ、有意に多くの患者が治験医による全体評価(IGA)が0または1となり、かつ湿疹面積および重症度指数(EASI)が75%以上改善した(すべてp<0.05)。
【簡単な解説】この結果は、デュピルマブが、喘息やアレルギー性鼻炎がある子どもでも、ない子どもでも、同じように皮膚の状態を良くする効果があったことを示している。医師が見て「ほぼきれいになった」と判断された子どもの割合がプラセボ(偽薬)よりもデュピルマブを使った方が多く、湿疹の広さと重さを示す数値(EASI)も75%以上改善した子どもが多かった。
✅️食物アレルギーの有無にかかわらず、デュピルマブ群はプラセボ群に比べ、最悪の掻痒/掻破数値評価尺度(WSI-NRS)の1日平均スコアが週あたり4ポイント以上減少した患者が有意に多かった(FAあり:p=0.0002、FAなし:p=0.004)。
【簡単な解説】この結果は、デュピルマブという薬が、食物アレルギーがある子どもでも、ない子どもでも、同じようにかゆみを軽くする効果があったことを示している。かゆみの強さを数字で表した時に、4ポイント以上減った(かゆみが大幅に軽くなった)子どもの割合が、プラセボ(偽薬)よりもデュピルマブを使った方が多かった。
※論文の背景や内容の深掘り、個人的な感想は、noteメンバーシップにまとめました。
※登録無料のニュースレター(メールマガジン)は、一部有料会員向けも始めていますが、定期的に無料記事も公開予定です。さまざまなテーマを深堀り解説していきますので、ご興味がございましたらリンクからご登録ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。