
麻疹予防接種率低下と流行拡大
■ 麻疹(はしか)は、予防接種が下がると、具体的には2回の予防接種率が95%を下回ると、流行が起こりうることがわかっています。
■ 最近、米国で麻疹による死者がでたという報道もありました。
■ 重い症状として、失明、肺炎、脳炎などがあり、国や年齢によって死亡率が大きく異なります(先進国では0.1%、発展途上国では15%に達します)。
■ それだけでなく、免疫健忘や亜急性硬化性全脳炎(SSPE)などの問題もあります。
■ 世界全体では、麻疹による死亡数は減少しているものの、2017年には10万件以上の死亡が発生し、特に低所得国で深刻な問題となっています。
■ エチオピアは麻疹撲滅に向けた取り組みを進めていますが、依然として流行が頻発し、症例負担が大きい国のひとつです。
■ そのようななかエチオピアで流行した、8回の麻疹発生調査のメタアナリシスが実施されました。
Tariku MK, Worede DT, Belete AH, Bante SA, Misikir SW. Attack rate, case fatality rate and determinants of measles infection during a measles outbreak in Ethiopia: systematic review and meta-analysis. BMC Infect Dis 2023; 23:756.
エチオピアで2010年から2022年に発表された麻疹の集団発生に関する研究を検索し、8件の麻疹発生調査(計3,004例の麻疹症例と33例の死亡)を系統的レビューとメタ分析により解析した。
背景
■ エチオピアは麻疹排除に向けて取り組んでいるにもかかわらず、麻疹の再興が起きている。
■ 適切な対策を講じるために、これまで多くの断片的で一貫性のない発生調査が行われてきたが、麻疹発生時の感染率、致死率、および麻疹感染の決定要因に関する総合的なエビデンスは存在しない。
■ この系統的レビューとメタ分析は、発生時の感染率、致死率、および麻疹感染の決定要因に関する累積的なエビデンスを特定することを目的とした。
方法
■ 系統的文献レビューとメタ分析を使用した。
■ Google Scholar、Medline/PubMed、Cochrane/Wiley Library、EMBASE、Science Direct、およびAfrican Journals Onlineデータベースを様々な検索語を用いて検索した。
■ 麻疹発生調査に関連する任意の研究デザイン、データ収集・分析方法を適用した調査を含めた。
■ データはExcelスプレッドシートに抽出し、メタ分析のためにSTATA version 17ソフトウェアにインポートした。
■ I²統計量を用いて異質性を検証し、BeggテストとEggerテストを用いて出版バイアスを評価した。
■ オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)をフォレストプロットを用いて提示した。
結果
■ 本研究には、麻疹症例3004例と死亡33例を含む8回の麻疹発生調査が含まれた。
■ プール解析された発生率(attack rate; A.R.)と致死率はそれぞれ34.51/10,000人[95% CI; 21.33–47.70/10,000人]と2.21%[95% CI; 0.07-2.08%]だった。
■ サブグループ解析により、オロミア地域で最高の発生率(10,000人あたり63.05人)、アムハラ地域で最低の発生率(10,000人あたり17.77人)が明らかになった。
■ 麻疹発生に関連する要因は、未接種であること(OR=5.96; 95% CI: 3.28–10.82)と接触歴(OR=3.90; 95% CI: 2.47–6.15)だった。
結論
■ この分析により、発生状況の説明の中で、高い発生率と致死率を示す説得力のあるエビデンスが明らかになった。
■ 麻疹感染は、未接種であること、接触歴と有意に関連があった。
■ 定期的な予防接種の実践強化と接触者追跡措置の拡充が、今後の重要な戦略である。
論文のまとめ
✅️ プール解析された発生率は34.51/10,000人[95% CI; 21.33–47.70/10,000人]、致死率は2.21%[95% CI; 0.07-2.08%]であり、地域別ではオロミア地域で最高の発生率(10,000人あたり63.05人)、アムハラ地域で最低の発生率(10,000人あたり17.77人)が明らかになった。
【簡単な解説】 エチオピアでは平均して1万人あたり約35人が麻疹に感染し、感染した人のうち約2.2%が亡くなったことがわかった。また、エチオピアの中でも地域によって感染状況が異なり、オロミア地域では1万人あたり約63人と最も多く感染したのに対し、アムハラ地域では1万人あたり約18人と比較的少なかった。
✅️ 麻疹発生に関連する要因は、未接種であること(OR=5.96; 95% CI: 3.28–10.82)と接触歴(OR=3.90; 95% CI: 2.47–6.15)であり、これらは統計的に有意な関連だった。
【簡単な解説】 なぜ麻疹に感染しやすくなるのかを調べたところ、麻疹のワクチンを接種していない人は接種した人に比べて約6倍も感染しやすいことがわかった。また、麻疹患者と接触した経験がある人は、接触していない人に比べて約4倍感染しやすいことがわかった。このことから、ワクチン接種を進めることと、患者との接触を減らすための対策が重要だとわかる。
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