
増える木の実アレルギー、一度に複数を負荷試験してもよいか?
■ 食物アレルギーは、特に子どもたちにとって生活の質に大きな影響を与える問題です。
■ 現在、木の実類アレルギーは著しく増えています。2024年の調査では、日本人の食物アレルギーの原因食物の2位にまで上がってきました。
■ 2007年の統計からは隔世の感があります。
■ 複数の木の実(クルミやカシューナッツ、アーモンドなど)に対してアレルギー検査で陽性反応を示すと、安全のためにすべての木の実を避けるよう指導されることが多いです。
■ しかし、アレルギー検査の陽性結果だけでは、実際に食べた時にアレルギー反応が起こるかどうかは分かりません。
■ これを確認するには、実際に食べてみるという食物負荷試験が必要になることが多いです。
■ しかし、個別の木の実ごとにテストを行うとなると、多くの時間と労力がかかります。
■ そこで、複数の木の実類を同時に負荷をするという「混合木の実類オープン負荷試験」という効率的な方法が検討されました。
Van Erp FC, Knulst AC, Kok IL, van Velzen MF, van der Ent CK, Meijer Y: Usefulness of open mixed nut challenges to exclude tree nut allergy in children. Clin Transl Allergy. 2015, 5:19. 10.1186/s13601-015-0062-y
ヘーゼルナッツ負荷試験が陰性で複数の木の実類除去食を実施していた平均年齢10.1歳(範囲:5.4〜17.1歳)の小児19人に対し、アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオ、ピーカン、ブラジルナッツなどを含む混合ナッツオープン負荷試験が実施された。
背景
■ アトピー体質で複数の木の実に感作がある子どもたちは、偶発的なアレルギー反応のリスクを最小限に抑えるために、すべての木の実を避けるよう指導されている。
■ 臨床的な関連性を確認するためには複数の食物負荷試験が必要となるが、これは負担が大きく実用的とはいえない。
■ そこで、安全性、負荷試験中の反応、負荷試験材料の忍容性、除去食への影響、保護者の満足度の観点から混合ナッツオープン負荷試験の有用性を評価した。
結果
■ ヘーゼルナッツ負荷試験が陰性で長期間の木の実除去食を行っていた19人の子どもにオープン混合ナッツ負荷試験を実施した。
■ 13人(68%)の子どもでは負荷試験は陰性であり、4人(21%)の子どもでは(非重症の)アレルギー症状が観察された。
■ 負荷試験は十分に受け入れられ、安全かつ効率的だった。
■ 15人(79%)の子どもにおいて、複数のナッツごとの負荷試験を避けることができた。
結論
■ 混合ナッツオープン負荷試験は、長期間にわたり木の実を除去した食事をしており、臨床的アレルギーの疑いが低い子どもたちにおいて、複数の木の実アレルギーを効率的に除外できる。
論文のまとめ
✅️ 混合ナッツオープン負荷試験の結果、19人中13人(68%)では陰性(アレルギー反応なし)であり、4人(21%)では重症でないアレルギー症状が観察された。
【簡単な解説】 テストの結果、19人の子どものうち13人(約7割)は、混ぜた木の実を食べてもアレルギー反応が出ませんでした。4人(約2割)の子どもには軽いアレルギー症状が出ましたが、重い症状は誰にも出ませんでした。
✅️ 15人(79%)の子どもでは複数の木の実ごとに個別の負荷試験を行う必要がなく、14人(74%)の子どもたちで食事に木の実類を安全に摂取することができた。
【簡単な解説】 この方法を使うことで、子どもたちの約8割は、木の実の種類ごとに別々のテストをしなくてもよくなりました。また、約7割の子どもたちは、このテストの後で実際の食事に木の実を取り入れることができるようになりました。これにより、不必要に多くの食べ物を避ける必要がなくなり、子どもたちの食事の選択肢が増えました。
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