
オープン食物負荷試験は、盲検法に劣るのか?
■ 食物アレルギーは、大きな社会問題と言えます。
■ そして、食物アレルギーを正確に診断することはとても大切です。というのも、診断がつけば、患者さんはアレルギーの原因となる食物を避ける方法や、緊急時に使うエピネフリン注射器の使い方を学ぶこともでき、リスクを避けやすくなってくるからです。
■ 食物アレルギーを診断する方法として、ガイドラインでは「食物経口負荷試験」が推奨されています。
■ その中でも「二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)」は最も信頼性の高い方法とされていますが、時間やコストがかかる検査です。
■ 一方、「オープン食物負荷試験」はより簡便で普及している方法です。
しかし、本当はアレルギーがないのに陽性と判定される「偽陽性」の可能性も残るとされています。
■ 実際、DBPCFCのプラセボ(偽薬)の負荷であっても12.9%に症状を示したという報告があります。
■ これは検査日の緊張や、症状が出るだろうという先入観、または普段からある症状の変動が原因かもしれないとされています。
■ しかし、どちらの検査を選ぶべきかという推奨は、まだ科学的根拠が十分ではありません。
■ そこで、「ALDORADO試験」で、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツのアレルギーが疑われる児を対象に、DBPCFCとオープン食物負荷試験の比較が行われました。
de Weger WW, Sprikkelman AB, Herpertz CEM, et al.: Comparison of Double-Blind and Open Food Challenges for the Diagnosis of Food Allergy in Childhood: The ALDORADO Study. Allergy. 2025, 80:248-257.
カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツへのIgE依存性アレルギーが疑われる4歳から18歳の小児63名を対象に、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)を実施した後、1〜6週間の間隔で同じ食物に対するオープン食物経口負荷試験を行う単一施設非劣性研究を実施した。
背景
■ 二重盲検プラセボ対照食物経口負荷試験(DBPCFC)は食物アレルギー診断の「ゴールドスタンダード」として広く認識されている。
■ バイアスを減らすために最大限の努力がなされているが、DBPCFCはコスト、時間、資源を多く必要とする。
■ そこで、より負担の少ないオープン食物経口負荷試験が臨床実践で増加している。
■ しかし、これらの負荷試験の使用に関する推奨事項は確実性の低いエビデンスに基づいており、最新の国際的な食物経口負荷試験ガイドラインを使用した比較研究は行われていない。
■ そこで、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツアレルギーが疑われる小児において、開放食物経口負荷試験がDBPCFCに劣らないという仮説を立てた。
方法
■ カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツへのIgE依存性アレルギーが疑われる場合に紹介された4歳以上の小児63名が含まれた。
■ すべての研究参加者はまずDBPCFCを受け、その後同じ食物に対する開放食物経口負荷試験を受けた。
■ 負荷試験の結果は、陽性、陰性、判定不能に分類するための事前に定義された基準によって評価された。
結果
■ DBPCFCとオープン食物経口負荷試験の結果は、41人中36人(87.8%)の患者で一致した。
■ オープン食物経口負荷試験の感度と特異度はそれぞれ0.91(95%CI 0.79, 1.03)と0.83(95%CI 0.63, 1.01)であり、AUC値は0.87だった。
■ 反応が誘発された用量と中止された用量は両方の食物経口負荷試験間で有意な差はなかった。
結論
■ オープン食物経口負荷試験の診断精度はDBPCFCに劣らない。
■ この知見は、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ピーナッツにアレルギーがあると疑われる4歳以上の小児に対して、より負担の少ない開放食物経口負荷試験を実施できることを示している。
■ この知見を検証し、他の主要な食物アレルゲンに対する診断精度を調査するためのさらなる研究が必要である。
論文のまとめ
✅ DBPCFCとオープン食物経口負荷試験の結果は、41人中36人(87.8%)の患者で一致した。
【簡単な解説】 二つの異なる方法(盲検あり・なし)で行った食物アレルギー検査の結果を比べたところ、検査を両方受けた41人のうち36人(約88%)では、両方の検査結果が同じでした。つまり、ほとんどの場合で盲検の有無は検査結果に影響しなかったということです。
✅ オープン食物経口負荷試験の感度と特異度はそれぞれ0.91(95%CI 0.79, 1.03)と0.83(95%CI 0.63, 1.01)であり、AUC値は0.87であった。
【簡単な解説】 盲検なしの検査がどれだけ正確かを調べたところ、本当にアレルギーがある人を見つける能力(感度)は91%、アレルギーがない人を正しく見分ける能力(特異度)は83%でした。また、検査の総合的な精度を示すAUC値は0.87と高い値でした。これは盲検していないオープン検査でも、かなり正確にアレルギーを診断できることを意味しています。
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