アトピー性皮膚炎に対する内服JAK阻害薬による治療効果は、外用アドヒアランスに左右される

JAK阻害薬の中止タイミングを探る、その最新研究は?

■ 最近、アトピー性皮膚炎の治療で、全身治療薬が注目されています。

■ 外用薬だけでは十分な効果が得られない中等症以上の患者に使われる治療方法です。

■ そのうち、ウパダシチニブ(UPA)は、当科でも使用することがある薬剤で、JAK1という酵素を強くブロックし、炎症を抑える作用があります。

■ この薬は、炎症を引き起こす物質(IL-4、IL-13、IL-31、TSLP)の働きを抑制します。

■ UPAの効果と安全性は臨床試験で確認され、症状が改善する患者が増えています 。

■ しかし、これらの全身治療薬使用開始後に、薬をやめるタイミングを決める方法はまだ決まっておらず、医師が個々に判断しています。

■ 最近、UPAを使った治療経験を振り返り、どのように薬をやめるかの手掛かりや方法を探索した研究結果がありましたので、共有します。

Koga T, Okada K, Shimizu T, Morita E, Itazawa T. Consideration of treatment goals and termination algorithm for adolescent atopic dermatitis using upadacitinib. Journal of Cutaneous Immunology and Allergy 2024; 7.

ウパダシチニブによる治療を受けた12〜19歳(中央値15歳)のアトピー性皮膚炎患者14人に対し、ウパダシチニブ15mg(症状悪化時には30mgに増量)の経口投与と外用抗炎症治療およびスキンケアを最大96週間(中央値30-64週)併用した。

目的

■ アトピー性皮膚炎の全身治療の疾患活動性と治療終了に関する標準的な基準は確立されていない。
■ この研究の目的は、ウパダシチニブの使用経験をレトロスペクティブに調査し、全身治療からの離脱の手がかりを見つけ、治療目標の設定と全身治療の終了のアルゴリズムを決定することである。

方法

■ 2021年11月1日から2023年12月31日にウパダシチニブによる治療を受けた患者14人を試験に登録した。

■ 抗炎症外用薬治療を併用した。
■ 治療成績は、アトピー性皮膚炎の欧州タスクフォースガイドラインに従って設定した。

■ 疾患状態とコントロールの評価には、Treat to target戦略を採用した。

■ 血清バイオマーカー(血清TARC値とIgE値)の変化も観察した。

結果

■ 全例が52週後にEASI50を達成した。

■ 76週後には、80%の患者がEASI 75を、30%の患者がEASI 90を達成した。
■ 4人の患者がウパダシチニブの投与を終了し、5人の患者が治療を中断し、5人の患者が治療を継続した。
■ 2例は抗炎症外用薬治療なしで完全寛解を達成した。
■ 2例は有害事象により治療を中止した。

■ 外用療法を中心とした治療アドヒアランスの良好な患者はUPAから離脱できる傾向があった。

■ IgE値は11例(78.6%)でベースラインから上昇し、TARCは14例(100%)で上昇した。
■ これらのバイオマーカーは、治療開始から24~48週後、湿疹の改善後にピークから減少した。

結論

■ 全身治療と局所治療の併用はAD患者の寛解を効果的に誘導する。
■ 全身治療からの移行は、外用療法のみで維持される寛解を達成することから始まり、アドヒアランスの重要性が強調された。

 

 

論文のまとめ

✅️全例が52週後にEASI50を達成し、76週後には80%の患者がEASI 75を、30%の患者がEASI 90を達成した。
【簡単な解説】 EASIというのは、アトピー性皮膚炎の重症度を測る指標です。数字が大きいほど症状が良くなったことを示します。治療を始めて1年後には、全ての患者さんの症状が少なくとも半分以上改善し、1年半後には80%の患者さんの症状が75%以上改善しました。これは治療がとても効果的だったことを示しています。

✅️観察期間終了時、4例がウパダシチニブ治療を終了し、うち外用療法を中心とした治療アドヒアランスの良好な患者はウパダシチニブから離脱できる傾向があった。
【簡単な解説】 「アドヒアランス」とは、医師の指示通りに治療を続ける度合いのことです。研究の最後には4人の患者さんが飲み薬(ウパダシチニブ)の服用を終了できました。特に、塗り薬治療をきちんと続けることができた患者さんは、飲み薬をやめても症状が悪化しにくい傾向がありました。これは、正しく治療を続けることの大切さを示しています。

 

 

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