
乳児期に様々な食品を導入すると、食物アレルギーリスクが低下する?
■ 世界において、食物アレルギーが増えている傾向があります。
■ そのなかで、乳児期の食事がアレルギーの発症に大きく影響することがわかっています。
■ そのため、例えば最近のガイドラインの更新により、鶏卵やピーナッツなどの食品を離乳食早期に取り入れられるようになりました(日本では鶏卵のみ)。
■ 卵とピーナッツの早期導入は、それぞれのアレルギーリスクを下げることが明確であるためですが、他の食品についてはまだ不明な点が多いです。
■ そのため、赤ちゃんがいろいろな食品を摂ることで、全体の食物アレルギーリスクがどう変わるかを調べる必要がありました。
■ そこで最近、乳児期の食事の多様性と18ヶ月時点のアレルギー発症との関係を詳しく解析した検討が、スウェーデンから報告されました。
Bodén S, Lindam A, Venter C, Ulfsdotter RL, Domellöf M, West CE: Diversity of complementary diet and early food allergy risk. Pediatric Allergy and Immunology. 2025, 36:e70035.
スウェーデン北部で実施されたNorthPop出生コホート研究において、2060人の乳児を対象に、生後6ヶ月および/または9ヶ月時の3種類の食事の多様性(DD)評価と生後18ヶ月時の食物アレルギー(FA)との関連を調査した。
背景
■ 乳児期の食事の多様性(DD)が早期の食物アレルギー(FA)に対して防御的に働く可能性があるが、摂取頻度を含めたDDがFAリスクにどのように影響するかについての知見は限られている。
方法
■ NorthPop出生コホート研究において、2060人の乳児を対象に生後6ヶ月および/または9ヶ月時の3種類のDDの評価を調査した:すなわち、摂取頻度に基づく加重DDスコア、導入された食品の数、導入されたアレルゲン性食品の数である。
■ 有向非巡回グラフに基づく多変量ロジスティック回帰モデルにより、生後9ヶ月と18ヶ月時の親が報告した医師診断のFAとの関連を推定し、感度分析と層別分析を含めて実施した。
結果
■ 生後9ヶ月時に高い加重DDスコア(24-31点)を持つ乳児は、最も低いDDスコア(0-17点)の乳児と比較して、18ヶ月時のFAのオッズが61%減少した[OR (95% CI) = 0.39 0.18–0.88]。
■ この関連性は、早期のFA例を除外した後も有意だった。
■ 摂取頻度とは無関係に、9ヶ月時に13-14種類の食品を導入した場合、0-10種類の食品を導入した場合と比較して、FAのオッズが45%減少した[OR (95% CI) = 0.55 (0.31–0.98)]。
■ 層別分析では、湿疹のある子どもと、家族にFAの既往がない子どもで、FAのオッズが有意に減少した。
■ 生後6ヶ月時のDDと18ヶ月時のFAとの間には関連性が見られなかった。
結論
■ 生後9ヶ月時の多様な食事は、18ヶ月時のFAを予防する可能性がある。
■ 私たちの結果は、乳児期の摂取頻度の影響についてのさらなる調査の必要性を強調している。
論文のまとめ
✅️ 生後9ヶ月時に高い加重DDスコア(24-31点)を持つ乳児は、最も低いDDスコア(0-17点)の乳児と比較して、18ヶ月時のFAのオッズが61%減少した[OR (95% CI) = 0.39 (0.18–0.88)]。
【簡単な解説】生後9ヶ月の赤ちゃんが多種類の食品を頻繁に食べていると、生後18ヶ月時点で食物アレルギーになる確率が大幅に低くなることが示された。具体的には、様々な食品をよく食べている赤ちゃんは、食品の種類が少ない赤ちゃんと比べて、食物アレルギーになる可能性が約60%低くなった。
✅️ 摂取頻度とは無関係に、9ヶ月時に13-14種類の食品を導入した場合、0-10種類の食品を導入した場合と比較して、FAのオッズが45%減少した[OR (95% CI) = 0.55 (0.31–0.98)]。
【簡単な解説】食べる頻度に関係なく、9ヶ月の時点で13〜14種類もの異なる食品を赤ちゃんに食べさせていると、食品の種類が少ない(10種類以下)赤ちゃんよりも、食物アレルギーになる確率が約半分になることを示された。
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