ピーナッツを離乳食へ早期導入すると、新生児乳児食物蛋白誘発胃腸症はどれくらい発生するか?

ピーナッツを離乳食に早期に導入すると、食物蛋白誘発胃腸症をどれくらいの確率で発症するか?

■ ピーナッツアレルギーを予防するには、赤ちゃんが1歳になる前にピーナッツを食べ始めることが効果的だということが、LEAP研究で示されています。

■ しかし、ピーナッツの早期導入が始まってから、「FPIES(日本でいう新生児乳児食物蛋白誘発胃腸症)」という特殊なアレルギー反応を起こす赤ちゃんが増えているという報告があります。
■ 日本でも、鶏卵を早期摂取開始が推奨された後、卵黄による新生児乳児食物蛋白誘発胃腸症が増えたのではないかと考えられています。

■ 海外では「FPIES」といわれるこの疾患の特徴は、原因となる食べ物を食べてから1〜4時間以内に激しい嘔吐が起き、さらに少なくとも3つの副症状がみられることです。
■ しかしピーナッツによるFPIESの増加を報告した研究は、症例集積研究にすぎず、大規模な調査はありませんでした。

■ そこで、オランダでおこなわれたPeanutNLコホート研究は、アレルギー体質の親を持つ892人の乳児を調査したものです。
■ 湿疹があるか、食べ物に即時反応を示した乳児が参加したこの研究では、1歳になる前にピーナッツアレルギーの検査を受けました。

■ この集団の大部分(706人)は以前にピーナッツを食べたことがなかったため、先入観なく調査できました。残りの186人は家でピーナッツに反応したため紹介された子どもたちでした。

■ もともと、このPeanutNLコホート試験の主な目的は、ピーナッツアレルギーのリスクが高い乳児を対象に、ピーナッツの早期導入がアレルギー発症予防に有効かどうかを検証する研究であって、ピーナッツ負荷試験の結果を見ることでした。
■ しかし、副次的な目的の一つとして、このコホートにおけるピーナッツによるFPIESの頻度を調査可能でした。

■ では、ピーナッツ早期導入した子どものうち、実際にFPIES(≒新生児乳児食物蛋白胃腸症)を発症した頻度はどれくらいだったのでしょうか?

Verhoeven DHJ, Hofstra G, Faber J, Aalst OB-v, Breukels M, Hendriks T, et al. The prevalence of peanut-triggered food protein-induced enterocolitis syndrome in a prospective cohort of infants introducing peanut in the first year of life. Pediatric Allergy and Immunology 2025; 36:e70058.

ピーナッツアレルギーのリスクがある乳児706人と自宅でピーナッツに反応した乳児186人を含むPeanutNLコホート研究において、生後12か月までにピーナッツを導入し、経口食物負荷試験で評価を行った。

背景

■ IgE依存性ピーナッツアレルギーを予防するための生後1年以内のピーナッツ早期導入が推奨されて以降、ピーナッツが誘因となる食物蛋白誘発性腸炎症候群(FPIES)の発生率が増加しているとの症例報告がある。
■ しかし、前向きコホートにおけるピーナッツ誘発性FPIESの有病率に関するデータは不足している。

方法

■ PeanutNLコホートは、ピーナッツアレルギーのリスクがある乳児(n=706)と早期導入後に自宅でピーナッツに反応した乳児(n=186)を含む前向きコホート研究である。
■ これらの乳児はすべて生後12か月までにピーナッツを導入した。ピーナッツ導入や自宅での反応を評価するため、経口食物負荷試験が実施された。

結果

■ ピーナッツを初めて導入した706人の乳児のうち、2人がFPIESに適合する症状を示した(0.3%)。自宅でピーナッツに反応した186人の乳児のうち、6人がFPIESと診断された(3.2%)。
■ 8例中7例は、FPIESが明らかになる前に、自宅または臨床導入時にピーナッツを摂取しても反応がなかった。
■ 3年間の追跡調査で、6人の乳児(75%)が3歳までにピーナッツに対する耐性を獲得した。

結論

■ 生後4〜11か月の間にピーナッツを導入したアトピー性乳児のオランダのコホートにおいて、チャレンジテストで確認されたピーナッツ誘発性FPIESの有病率は0.3%である。
■ 症例の大部分は3歳までにピーナッツに対する耐性を獲得した。
■ 生後1年以内にピーナッツを導入する際、医師はFPIES反応に注意すべきだが、これがピーナッツの早期導入を避ける理由とはならない。

 

論文のまとめ

✅️ ピーナッツを初めて導入した706人の乳児のうち0.3%(2人)、自宅でピーナッツに反応した186人の乳児のうち3.2%(6人)がピーナッツによるFPIESと診断された。
【簡単な解説】この研究では、ピーナッツを初めて食べる赤ちゃんと、すでに家で食べて何らかの反応があった赤ちゃんの両方を調べました。どちらのグループでも、通常のアレルギーとは違う「FPIES」という特殊な食物アレルギーが見つかり、ピーナッツを初めて食べる子どもでは、0.3%でした。
✅️ ピーナッツ誘発性FPIESと診断された8例中7例は症状が出る前に問題なくピーナッツを摂取しており、さらに3年間の追跡調査で75%(6人)が3歳までにピーナッツに対する耐性を獲得した。
【簡単な解説】FPIESという反応の特徴は、最初は何も問題なく食べられても、数回食べた後に突然症状が出ることです。この研究では8人中7人が、症状が出る前に1〜3回は問題なくピーナッツを食べていました。しかし、いったんFPIESと診断されても、3歳までに8人中6人(75%)は再びピーナッツを食べられるようになりました。

 

 

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