アトピー性皮膚炎は皮膚の痛みを起こし、アブロシチニブはその痛みを早期に改善する

アトピー性皮膚炎と皮膚の痛み。

■ アトピー性皮膚炎といえば「かゆい」というイメージがありますが、実は「痛み」も重要な症状であることがわかっています。

■ 米国の検討で、アトピー性皮膚炎の成人602人に関し、アトピー性皮膚炎に関連した痛みの頻度、強さ、特徴を検討したところ、61%が痛みがあると報告しています。

■ この痛みは、掻き壊し(27%)や皮膚のひびわれ(27%)、炎症を起こした皮膚(25%)が原因になっていたそうです。
■ すなわち、この痛みはアトピー性皮膚炎がひどくなるとさらに悪化するということです。

■ この皮膚の痛みは、患者さんの生活の質(QoL)に影響します。

■ そこで、かゆみだけでなく、痛みにフォーカスした研究が行われました。
■ この論文では、内服JAK阻害薬のひとつアブロシチニブ(商品名サイバインコ)が使用されました。
■ サイバインコは体内の炎症に関係する「JAK1」という酵素を抑える新しい薬で、ウパダシチニブ(リンヴォック)やバリシチニブ(オルミエント)が、その仲間です。

■ なお、この研究には「PSAAD」という評価ツールが使われました。
■ これは患者さん自身が自分の症状を11の項目で評価するものです。
■ そのうちの1つが「過去24時間、あなたの皮膚はどれくらい痛かったですか?」という質問であり、その項目がピックアップされました。

Thyssen JP, Bewley A, Ständer S, et al.: Abrocitinib Provides Rapid and Sustained Improvement in Skin Pain and Is Associated with Improved Quality of Life Outcomes in Adult and Adolescent Patients with Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis. Dermatology. 2024, 240:243-253. 10.1159/000535285

中等度から重度のアトピー性皮膚炎のある成人と青少年計1,822人を対象に、経口JAK阻害薬アブロシチニブ(200mg、100mg)またはプラセボを1日1回、12週間(一部試験では16週間)投与した。

背景

■ アトピー性皮膚炎(AD)における皮膚の痛みは、疾患の重症度とともに増加し、生活の質(QoL)に大きな負担を与える。

目的

■ 本研究の目的は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年における皮膚の痛みとQoLに対するアブロシチニブの有効性を評価することである。

方法

■ この事後解析では、アブロシチニブを単剤療法として投与した試験(フェーズ2b [NCT02780167]とフェーズ3のJADE MONO-1 [NCT03349060]およびJADE MONO-2 [NCT03575871]のプール解析)、または外用療法との併用療法として投与した試験(フェーズ3のJADE COMPARE [NCT03720470]とJADE TEEN [NCT03796676])のデータを含む。
■ 患者は経口で1日1回、アブロシチニブ200mg、アブロシチニブ100mg、またはプラセボを12週間または16週間(JADE COMPARE)投与された。
■ 皮膚の痛みは、アトピー性皮膚炎の掻痒と症状評価(PSAAD)の皮膚痛数値評価スケール(NRS)項目(「過去24時間、あなたの皮膚はどれくらい痛かったですか?」)を用いて、0(痛みなし)から10(極度に痛い)のスケールで評価した。

■ 掻痒(最大掻痒NRS)とQoL(皮膚科生活質指数または小児皮膚科生活質指数)も評価された。
■ ベースラインからの最小二乗平均(LSM)変化は、混合効果反復測定モデリングを用いて分析された。

結果

■ 計1,822人の患者(単剤療法プール、n = 942;JADE COMPARE、n = 595;JADE TEEN、n = 285)が分析された。
■ PSAAD皮膚痛スコアのベースラインからのLSM変化は、すべての3つの研究集団で、2週目から12週目または16週目まで、プラセボと比較してアブロシチニブで有意に大きく、用量依存的に発生した。
■ 単剤療法(アブロシチニブを単独で使用した複数の臨床試験のデータを統合した群)(56%と38% vs. 12%;12週目)、JADE COMPARE群(72%と52% vs. 26%;16週目)、JADE TEEN群(51%と60% vs. 31%;12週目)において、アブロシチニブ(200mgと100mg)はプラセボと比較して、より多くの患者がPSAAD皮膚痛スコアでベースラインから≥4ポイントの改善を達成した。
■ さらに、プラセボと比較してアブロシチニブでより多くの患者が皮膚の痛みの改善(PSAAD皮膚痛スコア<2)の厳格な閾値を達成した。
(「厳格な閾値」とは、アトピー性皮膚炎の掻痒感と症状の評価である皮膚痛みスコア(PSAAD)が「2未満」になる)。
■ 皮膚の痛みで≥4ポイントの改善を達成した成人および青少年は、達成しなかった患者よりもQoLの改善が大きいことを報告した。
■ 3つの研究集団すべてにおいて、皮膚の痛みとQoLそれぞれ別個に皮膚の痛みと掻痒の間に正の相関(≥0.3)が観察された。

結論

■ アブロシチニブは単剤療法または外用療法との併用療法として、評価されたすべての研究において、中等度から重度のADを有する成人および青少年の両方において皮膚の痛みを改善し、QoLの改善と関連していた。

 

 

論文のまとめ

✅️ アブロシチニブ投与群では、プラセボと比較して皮膚痛スコアが用量依存的に有意に改善し、治療2週目から12週目または16週目まで維持された。
【簡単な解説】
アブロシチニを飲んだ人たちは、飲み始めてから2週間後には皮膚の痛みが減り始め、その効果は研究の最後まで続きました。また、200mgを飲んだ人たちの方が、少ない量(100mg)を飲んだ人たちよりも痛みの改善が大きかったです。
✅️ 単剤療法群では、12週目にアブロシチニブ200mgと100mg投与患者のそれぞれ56%と38%が皮膚痛スコアで4ポイント以上の改善を達成し、プラセボ群の12%を大きく上回った。
【簡単な解説】
アブロシチニブのみを使った治療では、強い薬(200mg)を飲んだ人の半分以上(56%)が、皮膚の痛みが大幅に(4ポイント以上)減りました。100mgでも38%の人で同じくらい痛みが減りました。一方、偽薬を飲んだ人では、そこまで痛みが減ったのは12%だけでした。

 

 

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