
花粉症と小青竜湯。
■ アレルギー性鼻炎は花粉やダニ、カビなどによって引き起こされる、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状が特徴の病気です。
■ まだまだスギ花粉の飛散時期がつづいています。
■ スギ花粉症は、年々増えています。
■ 2019年には、5~9歳の有症率が30%を超えています。
■ 抗ヒスタミン薬や点鼻、点眼薬を使用しても、鼻症状が治まらない場合に、漢方薬を追加することがあります。そのなかでもよく使用されるのが「小青竜湯」です。
■ とはいえ、これら漢方薬のエビデンスは決して多くはありません。
■ さて、鼻の内側を覆っている上皮細胞は、外からの有害物質が体内に入るのを防ぐバリアとして働いています。
■ さらに、様々な物質(サイトカインやケモカイン)を作り出して炎症反応をコントロールする役割も担っています。
■ IL-33は「インターロイキン」と呼ばれるタンパク質の一種で、アレルギー反応の遅延相で重要な役割を果たします。
■ IL-33は通常、鼻の上皮細胞の核内に存在していますが、アレルゲンに触れると細胞外に放出されます。
■ 放出されたIL-33は、TH2細胞や肥満細胞などを刺激してアレルギー反応を引き起こします。マウスの実験では、IL-33を持たないマウスはアレルギー反応がほとんど起こらないことがわかっているのだそうです。
■ そして、トルエンジイソシアネート(TDI)とは、工業用の化学物質で、職業性喘息やアレルギー性鼻炎の主な原因の一つです。
■ TDIに触れると、気道の上皮細胞からIL-4、IL-13、IL-25、IL-33などのインターロイキンが放出されることが報告されています。
■ 最近、小青竜湯がTDIによって起こるアレルギー性鼻炎の症状を改善するかどうか、またその効果が鼻上皮細胞からのIL-33放出を抑えることによるものかどうかを調べた研究が報告されました。
■ 小青竜湯のメカニズムを検討したということです。
Kitano M, Fukuoka S, Adachi N, Hisamitsu T, Sunagawa M: Shoseiryuto ameliorated TDI-induced allergic rhinitis by suppressing IL-33 release from nasal epithelial cells. Pharmaceutics. 2022, 14:2083.
背景・目的
■ トルエンジイソシアネート(TDI)は職業性喘息や鼻炎の主要な原因である。
■ 小青竜湯(SST)は、アレルギー性鼻炎(AR)や喘息などのアレルギー疾患に長く使用されてきた伝統的な漢方薬(漢方医学)の一つである。
■ 最近の研究によれば、上皮細胞のTH2サイトカイン応答を調節するIL-33の発現と放出は、鼻粘膜の炎症反応を発達させる重要なステップであることが示されている。
■ 本研究では、SSTがTDI誘発性ARに関連する症状をラットで改善し、鼻上皮細胞からのIL-33放出を阻害するかどうかを調査した。
方法
■ ARラットモデルはTDIによる感作と誘導によって生成された。
■ SSTは感作期間中に投与された。
■ ラットのAR関連症状を評価し、生体内および試験管内でのIL-33放出を測定した。
結果
■ SSTはTDI誘発性ARモデルラットに出現する症状、例えば血清ヒスタミンの上昇や鼻洗浄液(NLF)/血清中のIL-33レベルを抑制した。
■ これらはSST投与によって抑制された。
■ TDI誘発性の鼻上皮細胞核からのIL-33放出も観察され、SST処理したラットおよび培養鼻上皮細胞では抑制された。
結論
■ これらの結果は、SSTが少なくとも部分的には鼻上皮細胞からのIL-33放出を阻害することによってTDI誘発性ARの症状を改善することを示唆している。
論文のまとめ
5週齢の雄のSprague-Dawleyラット120-130gを用いて、トルエンジイソシアネート(TDI)によるアレルギー性鼻炎モデルに対し、感作期間から22日間にわたり小青竜湯(SST)を投与した。
✅️ SSTはTDI誘発性アレルギー性鼻炎モデルラットにおける血清ヒスタミンの上昇や鼻洗浄液(NLF)/血清中のIL-33レベルの上昇を有意に抑制した。
【簡単な解説】 アレルギー反応が起きると体内でヒスタミンというくしゃみや鼻水の原因となる物質が増えますが、小青竜湯を与えたラットではこのヒスタミンの量が少なくなりました。また、IL-33という炎症を引き起こす物質も減少しており、これはアレルギー症状が和らいだことを示しています。
✅️ TDI誘発による鼻上皮細胞核からのIL-33放出は、SST処理したラットおよび培養鼻上皮細胞においても抑制された。
【簡単な解説】 鼻の内側を覆っている細胞(鼻上皮細胞)は、アレルギー物質に触れるとIL-33という炎症を促進する物質を出しますが、小青竜湯を与えることで、この物質の放出が抑えられました。これは実験動物の体内でも、試験管内の細胞実験でも同じ結果が確認されました。
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