
食塩摂取とアトピー性皮膚炎が関連する?
■ アトピー性皮膚炎は、有病率が高く、様々な問題と関連しています。
■ 食事がアトピー性皮膚炎に重要な役割を果たしている可能性が指摘されており、 例えば、ファストフードの摂取はアトピー性皮膚炎のリスクを高める可能性が指摘されています。
■ 実際、最近の研究では、体内の余分なナトリウムの大部分が皮膚に蓄積されると、このナトリウムが自己免疫疾患や慢性炎症性疾患(アトピー性皮膚炎を含む)と関連しているという研究結果もあるそうです。
■ その理由として、ファストフードに多く含まれる塩分(ナトリウム)が、アトピー性皮膚炎と関連している可能性があるという先行研究などもあります。
■ そこで、大規模横断研究が実施されました。
Chiang BM, Ye M, Chattopadhyay A, Halezeroglu Y, Van Blarigan EL, Abuabara K: Sodium intake and atopic dermatitis. JAMA dermatology. 2024, 160:725-731.
英国バイオバンクの成人参加者215,832人(平均年齢56.52歳、54.3%が女性)を対象とし、2006年3月31日から2010年10月1日に採取された単回スポット尿サンプルを用いて24時間尿中ナトリウム排泄量をINTERSALT方程式により推定した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)と食事の関連性については十分に解明されておらず、これを理解することは疾患経過の多様性を説明するのに役立つ可能性がある。
目的
■ 尿中ナトリウムをバイオマーカーとして用いて推定した、食事からのナトリウム摂取が大規模な人口ベースのコホートにおけるADとどの程度関連しているかを判断する。
デザイン、設定、参加者
■ 英国バイオバンクの成人参加者(37〜73歳)を対象としたこの横断研究では、2006年3月31日から2010年10月1日に採取された単回のスポット尿サンプルを用いて24時間尿中ナトリウム排泄量を推定した。
■ 計算には性別特異的な国際協力研究(INTERSALT)の方程式を使用し、体格指数、年齢、尿中のカリウム・ナトリウム・クレアチニン濃度を組み込んだ。
■ データ分析は2022年2月23日から2024年3月20日に行われた。
曝露
■ 主な曝露要因は24時間尿中ナトリウム排泄量だった。
主なアウトカムと検査
■ 主なアウトカムは、連携した電子医療記録からの診断コードと処方コードに基づくADまたは活動性ADだった。
■ 年齢、性別、人種と民族、Townsend剥奪指数、教育を調整した多変量ロジスティック回帰モデルを用いて関連性を測定した。
結果
■ 分析サンプルは215,832人の参加者で構成され(平均[SD]年齢、56.52[8.06]歳;54.3%が女性)、推定24時間尿中ナトリウム排泄量の平均(SD)は1日あたり3.01(0.82)gで、10,839人(5.0%)がADと診断されていた。
■ 多変量ロジスティック回帰分析の結果、推定24時間尿中ナトリウム排泄量が1g増加するごとに、ADのオッズが増加(調整オッズ比[AOR]、1.11;95%CI、1.07-1.14)、活動性ADのオッズが増加(AOR、1.16;95%CI、1.05-1.28)、ADの重症度増加のオッズが増加(AOR、1.11;95%CI、1.07-1.15)することが明らかになった。
■ 米国国民健康栄養調査からの13,014人の検証コホートでは、食事リコール質問票を用いて推定した食事性ナトリウム摂取量が1日あたり1g高いことは、現在のADのリスク増加と関連していた(AOR、1.22;95%CI、1.01-1.47)。
結論と関連性
■ これらの結果は、食事からのナトリウム摂取量の制限がADに対する費用対効果の高い低リスクの介入となる可能性があることを示唆している。
論文のまとめ
✅️ 推定24時間尿中ナトリウム排泄量が1g増加するごとに、アトピー性皮膚炎のオッズが増加(調整オッズ比1.11;95%CI、1.07-1.14)、活動性アトピー性皮膚炎のオッズが増加(調整オッズ比1.16;95%CI、1.05-1.28)した。
【簡単な解説】1日に尿から排出されるナトリウム(塩分)の量が1グラム増えるごとに、アトピー性皮膚炎にかかるリスクが約11%高くなり、現在症状が出ているアトピー性皮膚炎のリスクは約16%高くなることがわかりました。
✅️ 米国国民健康栄養調査の検証コホート13,014人では、食事リコール質問票で推定した食事性ナトリウム摂取量が1日あたり1g高いことが、現在のアトピー性皮膚炎リスク増加と関連していた(調整オッズ比1.22;95%CI、1.01-1.47)。
【簡単な解説】この研究結果を確認するため、アメリカの別の健康調査データ(約1万3千人)でも調べたところ、食事から摂るナトリウム(塩分)が1グラム多いと、アトピー性皮膚炎のリスクが約22%高くなることがわかりました。
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