小児アトピー治療薬デュピルマブによる副作用で多い結膜炎。発症予測因子は?

アトピー治療薬デュピルマブの副作用「結膜炎」とは?子どものリスクは?

■ 成人では比較的高率(最大約40%)に発生しますが、半数は自覚症状がないこともあります。

■ 一方、小児は自分で目の異常を伝えにくいという問題があります。
■ しかし、デュピルマブを使用している小児のうち、結膜炎を起こしやすいリスク因子は十分わかっていません。
■ 最近、小児アトピー患者のデュピルマブ関連眼表面疾患(DAOSD)発生率を調べ、リスク因子を検討した研究が発表されました。

van der Rijst LP, van Luijk CM, van der Kamp S, et al.: Dupilumab-Associated Ocular Surface Disease in Paediatric Atopic Dermatitis Patients: Results From the BioDay Registry. Clinical & Experimental Allergy. n/a.

アトピー性皮膚炎を有する3〜17歳の小児患者104名を対象に、デュピルマブによる治療を行い、中央値70.5週間の追跡調査を実施した。

背景

■ デュピルマブ関連眼表面疾患(DAOSD)は小児アトピー性皮膚炎(AD)患者のデュピルマブ治療における一般的な副作用である。
■ しかし、長期的な実臨床安全性データは限られている。
■ そのため、本研究はデュピルマブで治療を受けている小児AD患者におけるDAOSDの発生率を調査し、関連するリスク因子を特定することを目的とした。

方法

■ この前向き研究はデュピルマブで治療を受けている小児AD患者(3〜17歳)を対象とした。
■ 眼症状は4〜12週ごとに評価された。
■ DAOSDは最初に潤滑点眼薬、抗ヒスタミン点眼薬、および/または外眼瞼のタクロリムス軟膏で治療された。
■ 持続する症状は眼抗炎症療法で治療された。
■ 眼抗炎症療法を必要とするDAOSDの患者には眼科検査が実施された。
■ DAOSDの発症予測因子を特定するために単変量および多変量回帰分析が実施された。

結果

■ 中央値70.5週の追跡期間を持つ104人の患者(11.7±4.0歳)が登録された。
 全体で、34.6%(36/104)の患者がDAOSDを発症し、そのうち30.6%(11/36)が眼抗炎症療法を必要とした
 DAOSDの発症は年齢依存的ではなく、既存のアレルギー性結膜炎とも関連していなかった
■ 最も一般的な眼症状は搔痒(75.0%)、発赤(72.2%)、流涙(58.3%)だった。
■ 眼科検査では、眼抗炎症療法を必要とするDAOSDのすべての患者に眼瞼結膜炎が認められた。
 ベースラインの血清IgEレベル≥3000 kU/Lは、DAOSD発症と独立して関連していた(OR 4.65;95% CI 1.43–15.11、p=0.011)

■ DAOSDによりデュピルマブの中止に至ったのは3.8%(4/104)の患者だった。

結論

■ この前向き、長期、実臨床研究は、デュピルマブで治療を受けている小児AD患者の34.6%がDAOSDを発症することを示している。
■ ベースラインの血清IgE高値(≥3000 kU/L)はDAOSDの発症を予測する可能性がある。
■ DAOSDの発生率が高いことは、特に眼症状の報告が困難で診断の遅れにつながる可能性がある(若年)小児患者において、デュピルマブ治療中の眼症状への注意喚起の重要性を強調している。

 

 

論文のまとめ

✅️ 患者の34.6%(36/104)がデュピルマブ関連眼表面疾患(DAOSD)を発症し、そのうち30.6%(11/36)が眼抗炎症療法を必要とした。
【簡単な解説】 デュピルマブを使用した子どもの約3人に1人(34.6%)が目の副作用を経験し、その中の約3割(30.6%)は炎症を抑える目薬などの本格的な治療が必要になりました。
✅️ ベースラインの血清IgE値が3000 kU/L以上の患者は、DAOSDを発症するリスクが約4.7倍高く、統計的に有意な関連が認められた(OR 4.65;95% CI 1.43–15.11、p=0.011)。
【簡単な解説】 治療開始前の血液検査でアレルギー抗体(IgE)の値が3000以上だった子どもは、目の副作用が出る確率が普通の子供より約4.7倍も高いことがわかりました。

 

 

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