
魚アレルギーの世界的実態と治りにくさとは?
■ 魚アレルギーは世界中で見られる重要な食物アレルギーの一つです。
■ 魚アレルギーをどれくらいの人が罹患しているのかに関して様々な報告がありますが、調査方法によって0.2%から4.3%と幅があります。
■ 魚をよく食べる国や地域(北欧、アジア、オーストラリア、ギリシャなど)では、魚アレルギーがより多く見られます。すなわち、日本もその地域にあたるといえましょう。
■ 魚アレルギーの主な原因は「β-パルブアルブミン」というタンパク質です。このタンパク質は魚の筋肉に含まれていて、熱を加えても壊れにくく、消化されにくいという特徴があります。
■ β-パルブアルブミンは、ほとんどの魚に共通して含まれているため、一つの魚種にアレルギーがある人は他の魚種にも反応することが多いです。
■ 魚アレルギーは幼い頃に始まり、重いアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こすことがあります。
■ 一部の人は自然に治ることもありますが、特にβ-パルブアルブミンへの反応が強い人は長期間続くことが多いとされます。
■ 魚アレルギーが確認された小児58人(0.5~5歳; 中央値1.3歳)が、その後、自然軽快するかどうかを調査したところ、13人(22%)しか耐性を得なかったという検討があります。
■ しかし、魚アレルギーのデータは決して多いものとは言えません。
■ そこで、欧州6つの医療機関で、パルブアルブミンに反応する魚アレルギーの患者さんが、どのくらいの量で反応するか、症状がどれくらい長く続くか、どれくらい重い症状が出るかが調査されました。
Vera-Berrios RN, Vázquez-Cortés S, Gonzalo-Fernández A, et al.: Persistence, Severity, and Reactivity Thresholds in Fish-Allergic Patients Sensitized to Parvalbumin. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice. 2025, 13:793-802.e798.
欧州6施設で、魚に対する即時型反応を報告し、魚の皮膚プリックテストが5mm以上、タラおよびコイのβ-パルブアルブミンに対するIgEが0.70kUA/L以上であった12~65歳の患者42人を対象に、タラによる二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を実施した。
背景
■ 魚アレルギーは世界中の小児および成人に発症し、一過性の表現型と持続性の表現型がある。
目的
■ パルブアルブミンに感作された魚アレルギー患者の持続性、重症度、反応性閾値を解析することを目的とした。
方法
■ 魚に対する即時型反応を報告し、魚の皮膚プリックテストが5mm以上、タラおよびコイのβ-パルブアルブミンに対するIgEが0.70kUA/L以上であった12~65歳の患者を、ヨーロッパの6施設でリクルートした。
■ 最近、重篤なアナフィラキシーを起こした症例を除き、患者はタラによる二重盲検プラセボ対照食物負荷試験を受け、陰性であった場合は、その後、オープン食物負荷試験が行われた。
■ 報告された反応および誘発された反応の重症度は食物アレルギー重症度スコア(Food Allergy Severity Score)を用いて評価し、誘発用量(ED)は区間補償生存分析および確率モデルを用いて算出し、食物負荷試験陽性および重症反応に関連する因子はロジスティック回帰により分析した。
結果
■ 組み入れ基準を満たす42人のうち、30人(71.4%)で魚アレルギーが確認された。
■ 魚アレルギーの持続期間の中央値は23年であった。
■ 70%の症例が呼吸器または心血管系のアナフィラキシーを報告したが、食物負荷試験の結果は口腔咽頭症状(34.7%)または軽度の全身反応(73.9%)であり、気管支痙攣を伴うアナフィラキシーは1例(4.3%)のみだった。
■ 男性は重篤な反応と関連していた(オッズ比:5.44、95%信頼区間:1.04-28.53)。
■ 客観的症状のED10は、蛋白0.99~2.54mgであった。
■ 重症度とEDの間に相関は認められなかった。
結論
■ パルブアルブミン感作に関連した持続性魚類アレルギーを有する青年および成人は、実生活において重篤なアレルギー反応を経験しており、反応性の閾値は低い。
■ この知見は、これらの魚アレルギー患者に対する大規模研究と新たな治療選択肢の必要性を支持するものである。
論文のまとめ
✅️ 組み入れ基準を満たす42人のうち、30人(71.4%)で魚アレルギーが確認され、魚アレルギーの持続期間の中央値は23年であった。
【簡単な解説】 研究の条件を満たした42人のうち、実際に30人(約7割)が本当に魚アレルギーを持っていることが確認されました。また、これらの人たちは平均して23年間もの長い期間、魚アレルギーを持ち続けていたことがわかりました。
✅️ 患者の70%が日常生活で呼吸器または心血管系のアナフィラキシーを報告したが、食物負荷試験では口腔咽頭症状(34.7%)や軽度の全身反応(73.9%)が主であり、気管支痙攣を伴うアナフィラキシーは1例(4.3%)のみであった。
【簡単な解説】 患者さんの約7割は、普段の生活で魚を食べると息苦しくなったり、血圧が下がったりするような重い症状(アナフィラキシー)を経験していると言いました。しかし、病院での検査では、ほとんどの人は口や喉の症状や軽い全身症状だけで、重いアレルギー反応は1人だけでした。
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