幼児期のスクリーンタイムは、親子の会話をどれくらい減らす?

スクリーンタイムによる子どもの発達への影響はある?あるならば、どんな点が影響する?

■ 私たちは、子どもが言葉を覚えるためには、言葉が豊かな環境で育つことがとても大切だということを知っています。
 幼い頃に多くの言葉を聞いた子どもは、言葉の発達だけでなく、感情の発達やIQ、さらには脳の機能にもよい影響があるという報告は、さまざまあります。

■ そのため、親子が一緒にたくさん話すことを促すプログラムが人気を集めています。
■ しかし、子どもと話すことは簡単そうに見えつつも、忙しい家庭生活の中では難しいこともありますよね。

■ そのようななか、最近の研究では、スマートフォンやタブレット、テレビなどのスクリーンの使用時間と、親子の会話の関係に注目が集まっています。
■ 「テクノファレンス」という言葉があり、これは技術(テクノロジー)が親子の交流を「干渉」(じゃまをする)していることを指します。例えば、親がスマホを見ている時間が増えると、子どもに話しかけたり、子どもの言葉に反応したりする機会が減る可能性があります。

■ ただし、これまでの研究には限界もありました。
■ たとえば、食事中や公園での限られた状況だけを調べていたり、親のスマホ使用だけに焦点を当てていたりするものが多かったのです。
■ また、多くの研究は親自身の報告に頼っていましたが、自分の行動を正確に報告することは難しいものです。

■ 最近、新しいアプローチを使って、子どものスクリーンタイムと親子の会話の関係を時間をかけて調べた研究が公開されていました。
■ 特に、子どもが1歳から3歳までの重要な時期に、スクリーンタイムが親の発話数、子どもの発声数、そして親子の会話のやりとり回数にどのように影響するかを理解しようとしたのです。

※この研究のDiscussionでは、単に「スクリーン(スマホ)を使うな」と言うのではなく、現実的な対応方法も述べられていました(くわしくはnoteメンバーシップで)。

Brushe ME, Haag DG, Melhuish EC, Reilly S, Gregory T. Screen Time and Parent-Child Talk When Children Are Aged 12 to 36 Months. JAMA Pediatr 2024;178:369-375. 

オーストラリアの220家族を対象に、子どもが12、18、24、30、36ヶ月齢の時点で日常生活における平均16時間の音声を記録し、スクリーンタイムと家庭の言語環境の関連性を調査した。

重要性

■ 言語が豊かな家庭環境で育つことは、幼少期の子どもの言語発達において重要である。
■ 「テクノファレンス」(技術による干渉)の概念は、スクリーンタイムが親子間の会話や交流の機会を妨げている可能性を示唆しているが、この関連性を探る縦断的証拠は限られている。

目的

■ 子どもが12~36ヶ月齢の時点におけるスクリーンタイムと親子の会話の3つの指標(大人の発話数、子どもの発声数、会話のやりとり)の縦断的関連性を調査する。

研究デザイン、環境、参加者

■ このオーストラリアの前向きコホート研究では、先進的な音声認識技術を用いて、平均16時間の日における幼児のスクリーンタイムと家庭の言語環境を記録した。
■ データは2018年1月1日から2021年12月31日に、子どもが12、18、24、30、36ヶ月齢の時点で6ヶ月ごとに家庭内で220家族から収集された。
■ 統計分析は2022年11月1日から2023年7月31日に実施された。

曝露

■ Language Environment Analysis(LENA)技術により、子どもの言語環境と電子ノイズへの曝露の自動カウントが提供された。
■ 関心のある曝露はスクリーンタイムであり、LENAの電子ノイズ音声セグメントの手動コーディングに基づいて計算された。

主要な結果と測定

■ 親子の会話の3つの指標が主要な結果として注目された。すなわち、大人の発話数、子どもの発声数、会話のやりとりである。
■ 3つの結果それぞれについて別々のモデルが実行され、子どもの性別、年齢、母親の教育レベル、家庭内の子どもの数、家庭内活動の数、主な養育者の心理的苦痛を調整した。

結果

■ 研究には220家族(女児120人[54.6%]、子どもの平均[SD]妊娠期間、39.3[1.5]週、出産時の母親の平均[SD]年齢、31.3[4.8]歳)が含まれた。

■ 調整された線形混合効果モデルにより、スクリーンタイムの増加は親子の会話指標の減少と関連していることが示された。
■ 最大の減少は36ヶ月時に見られ、スクリーンタイム1分の追加が、大人の発話6.6語(95%CI、-11.7から-1.5)、子どもの発声4.9回(95%CI、-6.1から-3.7)、会話のやりとり1.1回(95%CI、-1.4から-0.8)の減少と関連していた。

結論と関連性

■ この研究の結果は、オーストラリアの家族における「テクノファレンス」の概念を支持しており、幼児のスクリーンタイムへの曝露が家庭環境での会話や交流の機会を妨げていることを示唆している。
■ この知見は、言語が豊かな家庭環境を促進するための介入とサポートに影響を与え、家族がスクリーンタイムと子どもや大人が家庭環境で会話し交流する機会との潜在的な関連性を理解するためのサポートを必要としていることを示している。

 

論文のまとめ

✅️ 子どものスクリーンタイムは年齢とともに増加し、1歳時の平均1時間28分/日から3歳時には平均2時間52分/日となった。
【簡単な解説】 子どもが成長するにつれてスクリーンを見る時間が増えており、1歳では1日平均約1時間半スクリーンを見ていたが、3歳になると約3時間近くまで増えていた。

✅️ 調整された分析モデルでは、36ヶ月齢の時点でスクリーンタイム1分の追加ごとに、大人の発話6.6語(95%CI、-11.7から-1.5)、子どもの発声4.9回(95%CI、-6.1から-3.7)、会話のやりとり1.1回(95%CI、-1.4から-0.8)の減少が関連していた。
【簡単な解説】 スクリーン時間が増えると親子の会話が減っていた。
特に3歳児では、スクリーン時間が1分増えるごとに、大人が話す言葉が約7語、子どもの発声が約5回、会話のやりとりが約1回減っていた。これを1時間に換算すると、スクリーン時間が1時間増えると、約400語の大人の言葉、約300回の子どもの発声、約66回の会話のやりとりが減る可能性がある。

画像

Claudeを利用して管理人作成

 

 

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