
アトピー性皮膚炎におけるデュピルマブ治療効果の予測指標
■ アトピー性皮膚炎は、皮膚が赤くなって痒くなる病気で、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
■ アトピー性皮膚炎は日常生活に大きな支障をきたし、医療費もかかるため、社会全体にとっても負担の大きい病気です。
■ 最近、デュピルマブが開発され、効果が高いことがわかってきています。小児に関しても使用できるようになりました。
■ しかし、薬価が高いこと、どの患者に効果があるかを事前に見極めるのが難しいこと、いつ中止するのか(中止可能なのか)が問題でした。
■ アトピー性皮膚炎の患者は、皮膚のバリア機能が低下しています。
■ これは経皮水分蒸散量などで予測することができ、病気が重症な人ほど皮膚の水分量が少なく、水分が逃げやすい状態になっています。
■ デュピルマブは、この経皮水分蒸散量は改善させる(低下させる)可能性がわかっていますが、角層水分量はかならずしも改善しないことも報告されています。
■ では、これらの皮膚バリア機能評価で、デュピルマブの効果を予想できるでしょうか?
Montero-Vilchez T, Rodriguez-Pozo JA, Cuenca-Barrales C, Sanabria-de-la-Torre R, Torres-de-Pinedo JM, Arias-Santiago S. Stratum Corneum Hydration As a Potential Marker of Response to Dupilumab in Atopic Dermatitis®: A Prospective Observational Study. Dermatitis 2024; 35:250-7.
スペインの大学病院で18歳から65歳の初回デュピルマブ治療開始患者32名を対象に、16週間の治療効果と皮膚バリア機能の変化を前向きに観察した。
背景
■ デュピルマブはアトピー性皮膚炎(AD)の効果的な治療法であり、皮膚バリア機能も回復させる。
■ しかし、持続的な治療反応や治療失敗に関連する表皮バリアパラメータの早期変化は不明である。
■ そのため、本研究の目的は、16週間のデュピルマブ治療後の皮膚バリア機能の変化が持続的な治療反応または治療失敗を予測できるかどうかを評価することである。
方法
■ デュピルマブを開始するAD患者を対象とした前向き観察研究を実施した。
■ 臨床スコア、患者報告アウトカム評価(PROMs)、および皮膚バリア機能パラメータをベースラインと16週間治療後に評価した。
■ 患者はデュピルマブに失敗するまで、または研究期間終了まで追跡された。
■ 参加者は、治療失敗患者と持続的治療反応患者の2つのグループに分けられた。
結果
■ 計32名のAD患者が研究に含まれ、平均年齢は28.03歳(標準偏差10.65)で、20名(60.6%)が女性であった。
■ 計22名(66.7%)が研究期間中デュピルマブの反応を維持し、10名(33.3%)のみが治療に失敗した。
■ 16週間治療後、臨床スコアは両グループで改善した。
■ 持続的治療反応患者では非病変部皮膚(34.25 arbitrary units [AU] vs 44.90AU、P = 0.001)および湿疹病変部(20.71 AU vs 40.94 AU、P < 0.001)の角質層水分量(SCH)が増加し、また湿疹病変部の経皮水分蒸散量(TEWL)が減少した(28.22 g/[m²·h] vs 14.83 g/[m²·h]、P = 0.002)。
■ 治療失敗患者ではTEWLやSCHに変化がなかった。
■ 16週間治療後の非病変部皮膚のSCH(オッズ比[OR]=0.83、P=0.018)と湿疹病変部のSCH(OR=0.86、P=0.028)がデュピルマブの治療失敗と関連していた。
結論
■ SCHはAD患者におけるデュピルマブ反応の予測バイオマーカーとして使用できる可能性がある。
論文のまとめ
✅ デュピルマブ治療効果が持続した群(22名、66.7%)では、16週間後に角層水分量が病変部・非病変部ともに有意に増加し、同時に経皮水分蒸散量が有意に減少した。
【簡単な解説】デュピルマブがよく効いた患者さんでは、皮膚に水分をしっかり蓄えられるようになり、皮膚から水分が逃げにくくなった。
✅ 16週間後の角層水分量が、デュピルマブ治療の継続的な成功を予測する有用な指標となる可能性が示された(非病変部皮膚でオッズ比0.83、病変部でオッズ比0.86)。
【簡単な解説】デュピルマブ治療開始から16週間後に皮膚の水分量を測定することで、その後も治療がうまくいくかどうかを予測できることがわかった。これは医師が治療方針を決める際の重要な判断材料になるかもしれない。
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