
アトピー性皮膚炎治療におけるデュピルマブと、実臨床での疑問
■ アトピー性皮膚炎は、皮膚がかゆくなったり、赤くなったりする慢性的な病気です。
■ デュピルマブは比較的新しい治療薬で、注射で投与します。
■ 体の中で炎症を起こしているIL-4やIL-13という物質の働きを妨害することで、皮膚の炎症を抑えます。
■ これまでの臨床試験では効果が確認されていますが、これらの試験は非常に厳密な条件で行われているため、実際の医療現場での効果とは異なる可能性があります。
■ そこで、
1) 実際の医療現場で、患者さんがどのくらい長くこの薬を使い続けられるのか?
2) どのような患者さんが薬をやめることになりやすいのか?
3) 効果がない場合と副作用の場合で、やめやすい患者さんの特徴が違うのか?
に関し、オランダの実際の病院で治療を受けた715人の患者さんを調べることで、これらの疑問が検討されました。
Spekhorst LS, de Graaf M, Zuithoff NPA, van den Reek J, Kamsteeg M, Boesjes CM, et al. Dupilumab Drug Survival and Associated Predictors in Patients With Moderate to Severe Atopic Dermatitis: Long-term Results From the Daily Practice BioDay Registry. JAMA Dermatol 2022; 158:1048-56.
オランダの14の病院で、中等症から重症のアトピー性皮膚炎と診断された成人患者715人を対象に、デュピルマブ(初回600mg、その後300mgを2週間ごとに皮下注射)による治療を行い、その薬剤継続性(治療を続けられる期間)と関連因子を2017年10月から2020年12月まで追跡調査した。
背景
■ 中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者におけるデュピルマブの薬剤継続性に関する長期データは不足している。
■ さらに、アトピー性皮膚炎におけるデュピルマブの薬剤継続性に関連する因子についてはほとんど知られていない。
目的
■ アトピー性皮膚炎患者におけるデュピルマブの薬剤継続性を記述し、関連する予測因子を特定する。
研究デザイン・設定・参加者
■ このコホート研究は、オランダの4つの大学病院と10の非大学病院が参加する多施設前向き実践データベースBioDay registryのデータに基づく。
■ 解析には、最低4週間の追跡調査があるBioDay registry参加患者(18歳以上)が含まれた。
■ デュピルマブ治療を受けた初回患者は2017年10月にBioDay registryに記録され、データロックは2020年12月に実施、データ解析は2017年10月から2020年12月まで実施された。
主要評価項目
■ 薬剤継続性はKaplan-Meier生存曲線により解析し、関連特性は単変量および多変量Cox回帰解析を用いて解析した。
結果
■ 計715名のアトピー性皮膚炎成人患者(平均[SD]年齢、41.8[16.0]歳;418名[58.5%]が男性)が含まれ、1年、2年、3年のデュピルマブ薬剤継続性はそれぞれ90.3%、85.9%、78.6%であった。
■ 効果不十分による短い薬剤継続性と関連する特性は、ベースラインでの免疫抑制薬使用(ハザード比[HR]、2.64;95% CI、1.10-6.37)と4週目の無効症例(HR、8.68;95% CI、2.97-25.35)だった。
■ 副作用による薬剤継続性の短さと関連する特性は、ベースラインでの免疫抑制薬使用(HR、2.69;95% CI、1.32-5.48)、65歳以上の年齢(HR、2.94;95% CI、1.10-7.87)、医師総合評価スコアが最重症のアトピー性皮膚炎(HR、3.51;95% CI、1.20-10.28)だった。
結論と意義
■ このコホート研究は、良好な1年、2年、3年のデュピルマブ薬剤継続性を実証した。
■ ベースラインで免疫抑制療法を使用している患者と4週目に治療効果がない患者は、効果不十分により治療中止する傾向が高い。
■ ベースラインでの免疫抑制薬使用、高齢、医師総合評価スコアが最重症のアトピー性皮膚炎は、副作用による中止リスク増加と関連する特性であった。
■ これらのデータは、アトピー性皮膚炎におけるデュピルマブ治療についてより深い洞察と新たな視点を提供し、患者アウトカムの最適化に貢献できる。
論文のまとめ
✅️ デュピルマブの薬剤継続率は1年で90.3%、2年で85.9%、3年で78.6%と良好であった。
【簡単な解説】デュピルマブを使い始めた人の多くが、長期間治療を続けることができた。1年後でも10人中9人、3年後でも10人中8人近くが治療を続けていた。
✅️ ベースライン(治療開始時)に他の免疫抑制薬を使用していた患者や、治療開始4週目の時点で効果が不十分(EASIスコアの改善が見られないか悪化)だった患者は、効果不足を理由にデュピルマブ治療を中止する可能性が高かった(それぞれハザード比2.64、8.68)。
【簡単な解説】治療を始める前から他の免疫抑制薬を使っていた人や、デュピルマブを使い始めて1ヶ月経ってもあまり効き目がない人は、治療中断が多かった。特に最初の1ヶ月の効き目は、その後の治療継続に大きく関係しているようだった。

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