指先採血による好酸球検査で乳幼児の喘息発作が予測可能?

好酸球数が、小児喘息発作予測の新たな可能性?

■ 現在、小さな子どもの喘息発作がいつ起こるかを予測するのは難しいとされています。
■ しかし、大規模な研究では、好酸球の基準値を少し高めに設定すると、発作や入院の予測精度が上がることも分かっています。

■ ただし、小さな子どもは大人に比べて元々好酸球の数が多く、成長とともに減っていくという特徴があります。
■ そのため大人のデータをそのまま使うことはできません。

■ 現在は好酸球数が0.3×10⁹/L以上の場合に治療方針を決める目安として使われていますが(日本の一般的な単位でいえば300 /μL)、実際の診察で即座に結果が分かる簡単な検査方法が求められています。

■ 最近、クリニックなどでは「指先から少量の血液をとって検査をする」方法が広く行われています。
■ そのような方法で好酸球を確認することで、3か月以内の喘息発作を予想できるかどうかが検討されました。

Hillson K, Fontanella S, Almeida H, Pavlou B, Lajunen K, Irving S, et al. Point-of-Care Blood Eosinophils to Predict Preschool Wheeze Attacks. Allergy 2025; 80:1038-46.

反復性喘鳴を有する1~5歳の小児73名に対し、指先穿刺によるポイント・オブ・ケア好酸球検査(指先から血液を採る簡単な検査)、強制オシレーション法および症状スコア評価を実施し、3か月間のフォローアップを行った。

背景

■ 臨床試験の事後解析では血中好酸球数(BEC)が将来の就学前喘鳴発作を予測することが示されているが、臨床現場での前向きな有用性については報告されていない。
■ 就学前喘鳴患児におけるポイント・オブ・ケア(POC)好酸球測定の実行可能性を評価し、BECと症状、肺機能、および発作予測における有用性との関連を検討した。

方法

■ 反復性喘鳴を有する1~5歳の小児に対し、外来診療中に指先穿刺によるPOC好酸球検査、強制オシレーション法(FOT)および/またはスパイロメトリー、症状スコア(TRACKアンケート)を実施した。
■ その後3か月間の喘鳴発作予測におけるBECおよび/またはその他の検査の有用性を、発作の有無による比較および予測決定木(DT)モデルを用いて解析した。

結果

■ 73名の小児(年齢中央値4.27歳)が登録され、BECはアトピー性小児でより高値であった(中央値0.5×10⁹/L対非アトピー性0.3×10⁹/L、p<0.01)。

■ BECはFOT反応性気管支拡張薬可逆性zスコア変化と中等度の相関を示したが(r=0.495、p=0.005)、他の肺機能指標やTRACKスコアとは相関しなかった。
■ 68/73名(93%)の小児が3か月後にフォローアップされ、29/68名(43%)の小児が予定外医療受診を要する1回以上の喘鳴発作を経験した。
■ ベースライン時の絶対値および好酸球パーセンテージは、発作を起こした群で高値であった(中央値0.5×10⁹/L対0.3×10⁹/L、p=0.03および中央値6%対4%、p<0.01)。

■ DTモデルでは、BEC≥4%かつTRACKスコア<75の小児が将来の発作を起こしやすいことが示された(確率0.63)。

結論

■ POC血中好酸球検査は臨床現場で実行可能であった。
■ 我々の予備的データは、低い症状スコアを伴う好酸球上昇が3か月以内の喘鳴発作を予測することを示唆している。

 

 

論文のまとめ

 ポイント・オブ・ケア血中好酸球検査(指先から血液を採る簡単な検査)は臨床現場で実行可能であり、84%の保護者が検査に同意し、94%の症例で1回で検査が成功した。
【簡単な解説】 指先から血液を採る簡単な検査は、実際の診察室で問題なく行うことができ、ほとんどの親御さんが検査を受けることに同意し、ほぼ全ての子どもで1回で検査を成功させることができたということである。

 好酸球が4%以上かつ症状スコアが75点未満の小児は、3か月以内に喘鳴発作を起こす確率が63%と高いことが決定木モデルにより示された。
【簡単な解説】 血液中の好酸球という細胞の割合が4%以上で、普段の症状の程度を示すスコアが75点未満の子どもは、今後3か月以内に喘息発作を起こす可能性が63%と高いことが、コンピューターを使った分析で明らかになったということである。

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