
JAK阻害薬と生物学的製剤、2種類の新薬の特徴と長期効果
■ アトピー性皮膚炎は、世界中で多くの人が苦しんでいる皮膚の病気です。この病気の原因には、体の中で作られる炎症を起こす物質、サイトカインが深く関わっています。これらの物質は、皮膚の炎症や赤み、かゆみを引き起こします。
■ 大きく分けると、全身治療薬として「JAK阻害薬」と「生物学的製剤」があります。今回の研究で比較された2つの薬は、それぞれ違った方法でこの病気にアプローチします。すなわち、生物学的製剤デュピルマブは注射薬で、炎症を起こす物質の働きを直接ブロックします。JAK阻害薬ウパダシチニブは飲み薬で、炎症を起こす信号の伝達を止めることで効果を発揮します。
■ JAK阻害薬、とくにウパダシチニブは短期の効果に優れ、16週くらいまでは多くの研究でもっとも高い効果を示したとする報告が多いです。
■ しかし、長期的にどちらの薬がより良い効果を示すかは、まだ報告が多くはありません。そこで、最近の研究で、約10ヶ月間という長期間にわたって2つの薬の効果を比較することにした検討が報告されました。
Waligóra-Dziwak K, Dańczak-Pazdrowska A, Jenerowicz D. Long-Term Real-World Effectiveness of Dupilumab vs. Upadacitinib in Early Treatment Responders with Atopic Dermatitis: Results from Central European Health Fund Registry. Int J Mol Sci 2025; 26.
ポーランド国民健康基金レジストリから435名のアトピー性皮膚炎患者(デュピルマブ220名、ウパダシチニブ215名)を対象に、最低40週間の治療期間で2つの薬の長期効果を比較した後向きコホート研究が実施された。
背景
■ 臨床試験では、アトピー性皮膚炎(AD)の治療においてデュピルマブとウパダシチニブの有効性が示されているが、長期的な実臨床データは限られている。
方法
■ この後向きコホート研究では、ポーランド国民健康基金レジストリのデータを活用し、早期治療反応者におけるデュピルマブ対ウパダシチニブの長期有効性を評価し、持続的な有効性アウトカムと高レベルの皮膚症状改善に焦点を当てた。
■ ポーランド国民健康基金レジストリから435名の患者データを解析し、220名がデュピルマブで、215名がウパダシチニブで治療され、それぞれ最低40週間の治療を受けた。
結果
■ ウパダシチニブはより迅速な作用発現を示し、16週目と28週目においてデュピルマブと比較して有意に高い完全皮膚症状改善率をもたらした(16週目のEASI100:19.5% 対 7.3%、p < 0.001;28週目:26.5% 対 12.7%、p < 0.001)。
■ デュピルマブは継続的な有効性の向上を示し、40週目でのEASI75およびEASI90達成において最終的に優位性を実証したが、EASI100達成では有意差は認められなかった。
結論
■ 両治療法とも持続的な皮膚症状の改善と生活の質の向上を提供し、長期間にわたって高レベルの皮膚症状改善を達成した。
論文のまとめ
✅️ ウパダシチニブは16週目と28週目においてデュピルマブと比較して有意に高い完全皮膚症状改善率を示した(16週目のEASI100:19.5% 対 7.3%、28週目:26.5% 対 12.7%)。
【簡単な解説】治療開始から4〜7ヶ月の間は、ウパダシチニブの方が症状が完全になくなる人の割合が約2〜3倍多かったということです。
✅️ デュピルマブは40週目でのEASI75およびEASI90達成において最終的に優位性を実証し、症状改善の持続率も91.6% vs 81.3%とウパダシチニブより高かった。
【簡単な解説】10ヶ月後の最終的な結果では、デュピルマブの方が75%以上の大幅改善を達成する人が多く、一度良くなった効果も長続きするということです。
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