
アレルギーマーチを防ぐ新しいアプローチとは?
■ アトピー性皮膚炎は、「アレルギーマーチ」と呼ばれる現象の始まりとなることがあります。
■ これは、最初にアトピー性皮膚炎になり、その後食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎などが順番に発症する流れのことです。
■ なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
■ 健康な皮膚はバリアの役割を果たし、外部の物質が体内に侵入するのを防いでいます。
■ しかし、アトピー性皮膚炎になると、この皮膚のバリア機能が壊れてしまいます。すると、食べ物に含まれるタンパク質などのアレルギー物質が皮膚表面の樹状細胞に感知され、免疫システムがこれを敵として認識するという経皮感作を起こしうるからです。
■ このテーマでもっとも重要な研究は「PACI試験」です。
■ 生後7から13週の650人を対象にした日本における検討で、介入はステロイド外用薬によるプロアクティブ療法です。結果として、鶏卵アレルギーを減らすことができたのですが、唾液中コルチゾールの低下や、一部一時的な成長低下がみられるなど、懸念点も提示されました。

■ 現在、Difense試験という、ジファミラスト軟膏をもちいた検討が開始されましたが、実は、すこし先行してピメクロリムス(タクロリムスと似た免疫抑制薬)による観察研究が2023年に発表されています。PACI試験の前で、ややエビデンスレベルが低いのですが、重要な研究ですので、すこし深堀りして共有します。
Murashkin NN, Namazova-Baranova LS, Makarova SG, Ivanov RA, Grigorev SG, Fedorov DV, et al. Observational study of pimecrolimus 1% cream for prevention of transcutaneous sensitization in children with atopic dermatitis during their first year of life. Front Pediatr 2023; 11:1102354.
アレルギー疾患の家族歴を持つ生後1-4ヶ月の中等症から重症のアトピー性皮膚炎の乳児108人を対象に、受診タイミングによる2群に分けてピメクロリムス維持療法の効果を12ヶ月間観察した。
背景
■ アトピー性皮膚炎の小児における表皮バリア機能障害は、アレルゲンに対する経皮感作およびアレルギー疾患を引き起こす可能性がある。
■ そこで、長期維持療法としてピメクロリムスを使用したアトピー性皮膚炎治療の早期介入アルゴリズムの有効性を、乳児における経皮感作の軽減という観点から評価した。
方法
■ これは、アレルギー疾患の家族歴、中等症から重症のアトピー性皮膚炎、調査対象アレルゲンの1つ以上に対する感作を有する生後1~4か月の小児を対象とした単施設コホート観察研究だった。
■ アトピー性皮膚炎発症時(10日以内)に医療機関を受診した患者を群1「外用ステロイドによるベースライン治療後、維持療法としてピメクロリムスへ移行」とし、受診が遅れた患者を群2「外用ステロイドによるベースライン治療および維持療法、ピメクロリムスの後続使用なし」とした。
■ アレルゲン特異的IgEの感作クラスおよびレベルを、ベースライン時、6か月時、12か月時に測定した。
■ アトピー性皮膚炎の重症度は、ベースライン時および6、9、12か月時に湿疹面積重症度指数(EASI)スコアを用いて評価した。
結果
■ 群1および群2にそれぞれ56名および52名の患者が登録された。
■ 群2と比較して、群1では6か月時および12か月時に牛乳タンパク質、卵白、ハウスダストマイトアレルゲンに対する感作レベルがより低く、6、9、12か月時にアトピー性皮膚炎重症度のより顕著な低下を示した。
■ 有害事象は発生しなかった。
考察
■ ピメクロリムス含有アルゴリズムは、乳児におけるアトピー性皮膚炎の治療および早期型アレルギー疾患の予防に有効であった。
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