デジタル吸入器が喘息治療を変える?

デジタル技術で変わる(かもしれない)喘息治療?

■ 喘息は呼吸器の病気で、治療には毎日ステロイド吸入薬を吸入する必要があります。が、実は患者さんの多くが薬を正しく使えていないという問題があるとされています。

■ 薬を正しく使わない理由は様々です。薬を飲むのを忘れてしまう、正しい吸入方法がわからない、病気に対する理解が不足している、薬への不安があるなどです。

■ そこで最近、「デジタル吸入器」という新しい技術が開発されました。これは従来の吸入器にセンサーを取り付け、スマートフォンと連携させたものです。いつ薬を使ったかを自動で記録し、薬を忘れているとお知らせしてくれたり、症状の変化を追跡したりできます。

■ これまでの研究では、このデジタル吸入器を使うと患者さんが薬をきちんと使うようになることがわかっていました。ただし、研究期間が短く(3~8ヶ月程度)、本当に喘息の症状が良くなるかはよくわかっていませんでした

■ また、ほとんどの研究は大学病院などの専門施設で行われていましたが、実際には喘息患者さんの多くは地域のクリニックで治療を受けています。

■ そこで、実際の診療現場でデジタル吸入器が本当に効果的なのか、使いやすいのか、費用に見合う価値があるのかを1年間という長期間にわたって調べられました

van de Hei SJ, van den Berg LN, Poot CC, Gerritsma YH, Meijer E, Flokstra-de Blok BMJ, et al. Long-Term Effectiveness of a Digital Inhaler on Medication Adherence and Clinical Outcomes in Adult Asthma Patients in Primary Care: The Cluster Randomized Controlled ACCEPTANCE Trial. J Allergy Clin Immunol Pract 2025.

オランダの地域クリニックで治療を受けている喘息コントロール不良の成人164名を対象に、デジタル吸入器とスマートフォンアプリを使用する群と従来治療群に分けて12ヶ月間比較した。

背景

デジタル吸入器は短期的な服薬アドヒアランスと喘息コントロールをサポートできる。
■ しかし、長期的な効果は不明である。

目的

■ デジタル吸入器の臨床効果、使いやすさ、費用対効果を調査すること。

方法

■ これはオランダのプライマリケアにおける12ヶ月間の非盲検クラスターランダム化比較試験であった。
■ 理想的ではない喘息コントロール状態で、アドヒアランスの悪い成人が適格であった。

■ 一般診療所は診療所の規模で層別化され、介入群または対照群のいずれかにランダムに割り付けられた。

■ 介入群と対照群の患者は、ブデソニド/ホルモテロール SYMBICORT Turbuhaler維持吸入器に装着された電子モニタリング機器を受け取った。
■ 介入群の患者は、データの洞察とリマインダーのためのスマートフォンアプリケーションを使用した。
■ 対照群の患者の吸入器使用は受動的にモニタリングされた。
■ 主要評価項目は1年間の服薬アドヒアランスであった。
■ 副次評価項目には、喘息コントロール、生活の質、使いやすさ、費用対効果が含まれた。

結果

■ 2019年6月27日から2022年9月30日の間に、164名の参加者を含む136クラスターがランダム化された(両群とも68クラスターにわたり82名の参加者)。

■ 服薬アドヒアランスの推定周辺平均(EMM)は、介入群で71.4%(95% CI, 67.1-75.4)、対照群で59.9%(95% CI, 55.0-64.7)であった。
■ 服薬アドヒアランスは第2週において介入群で高かった(オッズ比[OR] = 2.19; 95% CI, 1.63-2.95)。
■ 群間の服薬アドヒアランスの差は時間とともに減少し(P < .0001)、研究終了時には有意差は認められなかった(OR = 1.23; 95% CI, 0.91-1.66)。

■ 全体的に、喘息コントロール質問票-5スコアは介入群で有意に良好であった(P = .0056)(介入群:EMM, 1.31; 95% CI, 1.18-1.44 vs 対照群:EMM, 1.56; 95% CI, 1.44-1.68)。

■ 生活の質(Mini喘息生活の質質問票スコア)は群間で有意差がなかった(P = .0530)。
■ しかし、介入群は喘息関連生活の質の最小臨床的重要差に到達する可能性がほぼ3倍高かった(OR = 2.73; 95% CI, 1.02-7.54)。
■ 平均システム使いやすさスコアは80.1(SD, 13.8)であった。
■ 喘息コントロール質問票-5の0.5ポイント減少あたりの費用は€278であった。

結論

■ このデジタル吸入器の使用は、短期的な服薬アドヒアランスの有意な改善と12ヶ月にわたる持続的な喘息コントロールの改善をもたらした。

 

 

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