アトピー性皮膚炎は思春期を遅らせる?遅らせない?

アトピー性皮膚炎と成長への心配。思春期の発来には関係する?

 アトピー性皮膚炎は、皮膚にかゆみや炎症が起こる病気で、子どもによく見らる慢性の病気です

■ 喘息などの慢性的な病気があると、思春期が遅れることがあると報告されています。すなわち「アトピー性皮膚炎も同じように思春期を遅らせるのでは?」と懸念もあるわけです。

■ アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が弱くなり、普通なら皮膚を通らない物質が体に入ってしまうことがあります。これもホルモンのバランスを崩し、思春期に影響を与える可能性があるともいえます。

■ また、アトピー性皮膚炎の人は夜にかゆくて眠れないことが多く、睡眠不足もホルモンバランスに影響します。

■ しかし、これまでアトピー性皮膚炎と思春期の関係を十分に調べた研究はほとんどありませんでした。そこでこの関連があるかを、大規模コホート試験から検討されました

Kjersgaard CL, Ernst A, Clemmensen PJ, Harrits Lunddorf LL, Arendt LH, Brix N, et al. Atopic dermatitis in childhood and pubertal development: A nationwide cohort study. JAAD Int 2025; 19:21-31.

デンマークで2000年から2003年に生まれた約15,500人の子どもを対象に、6か月・18か月・7歳時点でのアトピー性皮膚炎の医師診断と、11歳から18歳までの思春期発達の関連を最大7年間追跡調査した。

背景

■ アトピー性皮膚炎(AD)は思春期を遅らせる可能性があるが、研究は不足している。

目的

■ ADと思春期の関連性を調査すること。

方法

■ デンマーク国民出生コホート内のサブコホートには、2000年から2003年の間に生まれた子どもたちが含まれ、母親が6か月、18か月、7歳時に医師診断によるADを報告した。
■ 国立患者登録システムが病院診断によるADを特定した。
11歳から、子どもたちは思春期発達について半年ごとに情報を提供した。

Tanner段階1から5の到達および腋毛の発達、にきび、初回射精、変声、初潮年齢における平均年齢差(月単位)を、区間打ち切り回帰モデルを用いて推定した。

結果

■ 計15,534人の子どもが参加し、21.5%が自己報告による医師診断AD、0.7%が病院診断ADを有していた。
■ 自己報告による医師診断ADを有する女児では、すべての思春期マイルストーンに達する平均年齢差は0.0か月(95%信頼区間[CI]: -0.8; 0.8)であり、病院で診断されたADでは-0.3か月(95% CI: -5.4; 4.8)であった。

■ 男児では、平均年齢差はそれぞれ0.1か月(95% CI: -0.6; 0.9)および-0.3か月(95% CI: -3.6; 3.0)であった。

制限事項

■ 治療に関する情報は入手できなかった。
■ 共変量の欠損データ(<5%)は対処されなかった。

結論

女児、男児のいずれにおいても、ADと思春期の間に関連性は認められなかった

 

 

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