
アトピー性皮膚炎のかゆみへの冷却…どれくらいメカニズムや効果がわかっている?
■ アトピー性皮膚炎は、複雑な原因が絡み合って起こります。アトピー性皮膚炎患者は、目に見える皮膚の症状と、本人にしかわからない症状(かゆみなど)の両方で苦しんでいます。そしてかゆみは、アトピー性皮膚炎の患者さんが最もよく訴える、つらい症状です。このかゆみには、体の中の様々な物質が関わっています。
■ 現在のかゆみの治療法には、保湿剤、抗炎症薬などがあります。一方、かゆみを改善させる方法として、皮膚を冷やすことがよく使われます。
■ 水で湿らせた包帯を使う「ウエットラップ療法」は、保湿の効果を上げたり、抗炎症作用の増強が主な目的と考えられてきましたが、実際には「冷却と気化熱」が主要な作用点であることが示唆されています。
Andersen RM, Thyssen JP, Maibach HI. The role of wet wrap therapy in skin disorders – a literature review. Acta Derm Venereol 2015; 95: 933-44.
■ 先行研究では24度の冷たいプレートを使った治療法がありましたが、最近、マイナス20度から10度まで自由に温度を調整できる新しい機械を使って、効果的かどうかは調査されました。
Lee EH, Lee HJ, Park KD, Lee WJ. Effect of a new cryotherapy device on an itchy sensation in patients with mild atopic dermatitis. J Cosmet Dermatol 2021; 20:2906-10.
軽度から中等度のアトピー性皮膚炎患者28名を対象に、新しい冷却療法装置(-5°C、5秒間適用)を用いて週1回、8週間にわたる治療効果を検証した。
背景
■ アトピー性皮膚炎患者において痒みの存在は一般的な訴えである。
■ アトピー性皮膚炎における痒みに対処するための治療法のさらなる選択肢が依然として必要とされている。
目的
■ アトピー性皮膚炎患者が経験する痒みに対する新しい冷却療法装置の効果を評価することを目的とした。
方法
■ 軽度から中等度のアトピー性皮膚炎患者28名がこの研究に参加した。
■ 2か月間のスプリットボディ臨床試験(Split-body clinical trial)を実施し、各参加者の片側を新しい冷却療法装置で治療し、他方の側をコントロールとして観察した。
■ 冷却療法装置は-5°Cに設定し、5秒間適用した。
■ 冷却療法適用後10分、30分、60分、および1週間、2週間、8週間後に痒みの視覚的アナログスケール(VAS)スコアを評価した。
■ さらに、患者満足度と有害事象のレベルを毎回の来院時に評価した。
結果
■ 治療直後の日において、治療側群の痒みのVASスコアは、コントロール側群と比較して冷却療法適用後に低下した。
■ さらに、治療側群の痒みのVASスコアは、ベースライン(治療前)時と比較して治療後1週間、2週間、8週間で有意に改善した。
■ 良好または優秀な満足度を報告した患者の割合は14.3%であった。
■ 重篤な有害事象は記録されなかった。
結論
■ ここで検討された新しい冷却療法は、アトピー性皮膚炎患者における有用な抗掻痒治療法となり得る可能性がある。
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