川崎病の膜様落屑(手足の皮むけ)が、冠動脈瘤リスクを予測する新たな指標?

川崎病と膜様落屑(手足の皮むけ)とは?

■ 川崎病は主に5歳未満の子ども、特にアジア系の子どもがかかりやすい病気です。この病気は血管に炎症が起きる病気で、治療が遅れると心臓の血管(冠動脈)が太くなったり、こぶ(動脈瘤)ができたりする危険な病気です。

■ 川崎病の原因はまだはっきりわかっていませんが、何らかの細菌やウイルスが関係していて、遺伝的にかかりやすい体質の子がいると考えられています。心臓の血管では炎症が起きて、白血球の一種である好中球という細胞が集まってきて、冠動脈瘤を起こしてしまうことがあります。

■ 今回深堀りした論文で注目しているのは、手足の膜様落屑です。これは通常、熱が出始めてから2〜3週間後に起こり、指先から手のひらや足の裏まで皮がむけることがあります。これまでの研究では、68%から98%の川崎病の子どもでこの症状が見られることがわかっています。

■ 最近、学生さんが「なぜ膜様落屑が起こるのですか?」と聞かれたのですが、その場でメカニズムなどを答えられなかったんですよね。それで調べていたところ、ちょっと興味深い論文が目に留まりました。

Chang LS, Weng KP, Yan JH, Lo WS, Guo MM, Huang YH, Kuo HC. Desquamation in Kawasaki Disease. Children (Basel). 2021 Apr 21;8(5):317.

2018年から2019年に台湾の病院で112名の川崎病の子どもを対象に、手足の膜様落屑の程度と心臓への影響の関係を調査した。

背景

 川崎病(KD)において落屑は一般的な特徴である。
■ 本研究では、臨床症状との相関において、患者の手足における様々な落屑の程度
を分析し、その関係性を評価した。

方法

■ 川崎病患児を後ろ向きに検討した。

■ 手足の落屑レベルに基づいて、年齢、静注用免疫グロブリン(IVIG)治療前の検査データ、および冠動脈異常(CAA)を分析した。
■ 落屑レベルを0から3に分類し、高度落屑をグレード2および3と定義した。

結果

■ 計112名の患者が登録された。

■ 手の高度落屑は年齢および分葉核好中球の割合と正の相関を示し(それぞれp = 0.047およびp = 0.029)、リンパ球および単球の割合とは負の相関を示した(それぞれp = 0.03およびp = 0.006)。

■ 一方、足の高度落屑は総白血球数と正の相関を示した(p = 0.033)。
■ さらに、手の高度落屑は低度と比較してCAA形成の確率が低いことが判明した(7.1% vs. 40.8%、p = 0.016)。

結論

 本報告は、川崎病における手足の落屑レベルが冠動脈異常や検査所見と関連することを実証した初の研究である。

 

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