プロバイオティクスで小児の風邪の熱が2日早く下がる?

プロバイオティクスによる発熱期間短縮の可能性

■ 上気道感染症(ざっくりいって風邪)は小児において高頻度にみられ、特に発熱を伴う患者では頻繁な医療機関受診の原因となります。近年、プロバイオティクス(善玉菌)が上気道感染症に対する補助治療として注目されており、複数の大規模研究でその効果が報告されています。

■ 2022年に発表されたコクラン・レビューでは、17の研究と10,290人のデータを統合した結果、プロバイオティクスが上気道感染症の罹患リスクを24%減少させ、平均罹病日数を約2日短縮することが示されました。

Hao Q & Lu Z  (2022). Probiotics for Preventing Acute Upper Respiratory Tract Infections (Cochrane Review, 2022 Update). Cochrane Database Syst Rev CD006895.pub4

■ さらに興味深いことに、2025年の最新の系統的レビューでは、32の研究(8,415例)を解析した結果、78%の研究で発症減少効果が報告され、特にLactobacillus rhamnosus GG(LGG)が保育園環境で一貫して効果的であることが明らかになっています。

Orlando Loyola  (2025). The Effect of Probiotics on Prevention of Respiratory Tract Infections in Children and Adolescents: A Systematic Review. Principles and Practice of Clinical Research 10(4)

■ しかし、これまでの研究の多くは予防効果に焦点を当てており、実際に風邪をひいて発熱している小児における治療効果、特に発熱期間の短縮に関する明確な根拠は限られていました

■ 最近、JAMA Network Openに、特定の善玉菌3種類を内服することで、風邪をひいた子どもの熱を早く下げることができるかが調査されました。本研究は、すでに発熱を伴う上気道感染症を発症した小児を対象とした点で、従来の予防研究とは一線を画します。また、3種類の特定菌株を組み合わせた混合プロバイオティクスの有効性を、厳密な三重盲検法で検証した初めての研究として、臨床応用への重要な一歩となる可能性があります。

※この結果に関して、大久保先生からご意見をいただきましたのでリンクを提示させていただきます。
(大久保先生は臨床疫学の専門家で、風邪に対する教科書を単著で執筆されている先生です)

https://x.com/Dr_KID_/status/1941362273773289663

 

Bettocchi S, Comotti A, Elli M, De Cosmi V, Berti C, Alberti I, et al. Probiotics and Fever Duration in Children With Upper Respiratory Tract Infections: A Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open 2025; 8:e250669.

生後28日から4歳までの発熱(38.5°C以上)を伴う上気道感染症の小児128名を対象に、3種類の特定プロバイオティクス混合物を14日間毎日投与する三重盲検ランダム化臨床試験を実施した。

重要性

■ 上気道感染症(URTIs)は小児において高頻度にみられ、特に発熱を伴う患者では頻繁な医療機関受診になる。
■ プロバイオティクスはURTIsに対する補助治療として可能性を示すが、小児における根拠は限られている。

目的

■ Bifidobacterium breve M-16V、Bifidobacterium lactis HN019、およびLactobacillus rhamnosus HN001を含むプロバイオティクス混合物のURTIs患児における発熱期間短縮に対する有効性を評価する。

デザイン、設定、および参加者

■ このランダム化臨床試験は2021年11月19日から2023年6月20日にかけて、イタリア・ミラノのCa' Granda Ospedale Maggiore Policlinicoの小児救急部門で実施された。

■ 生後28日から4歳で発熱(38.5°C以上)およびURTIsを有する患者が適格とされた。
■ 除外基準には最近のプロバイオティクス使用、慢性自己免疫疾患、免疫抑制治療、入院の必要性が含まれた。
■ ランダム化はコンピューターで生成され、参加者は介入群(プロバイオティクス)または対照群(プラセボ)に割り付けられた。
■ 参加者、保護者または介護者、および研究者は群の割り付けに対して盲検化された。
■ 主解析はintention-to-treat解析に従った。

介入

■ プロバイオティクス群は、Bifidobacterium breve M-16V、Bifidobacterium lactis HN019、およびLactobacillus rhamnosus HN001を含むプロバイオティクス混合物0.5mLを14日間にわたって1日1回投与された。
■ プラセボ群はプラセボ0.5mLを14日間にわたって1日1回投与された。

主要アウトカムおよび評価項目

■ 主要アウトカムは発熱期間であり、発熱初日から最終日までの日数として定義された。

結果

■ 登録された128例の患者(男性69例[54%];平均(標準偏差)年齢2.5(1.3)歳)のうち、65例(51%)がプラセボ投与に、63例(49%)がプロバイオティクス投与にランダムに割り付けられた。
■ 発熱期間の中央値(四分位範囲)は、プロバイオティクス群でプラセボ群より短かった(中央値[四分位範囲]3[2-4]日対5[4-6]日;調整リスク比0.64;95%信頼区間0.51-0.80)。
■ 軽微な有害事象はわずかに報告され、便秘(6例[16%]対6例[12%];P = .80)および腹痛(3例[8%]対2例[4%];P = .65)を含め、プロバイオティクス群とプラセボ群間で有意差は認められなかった。

結論および意義

■ このランダム化臨床試験において、プロバイオティクス混合物の投与はプラセボと比較して発熱期間を2日間短縮し、安全性に関する重要な懸念は認められなかった
■ 今回検討したプロバイオティクス混合物は、URTIs患児における発熱期間短縮のための有効な補助療法となり得る。

 

 

 

 

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