JAK阻害薬アブロシチニブで早期に効果があったアトピー性皮膚炎は、長期の効果も期待できる

アトピー性皮膚炎治療の治療の初期効果があると、その後はどうか?

■ アトピー性皮膚炎は、世界中の約10%の大人が抱えている慢性的な皮膚の病気で、最も特徴的な症状は激しいかゆみです。
■ 従来、アトピー性皮膚炎の治療では外用薬(塗り薬)が中心でしたが、近年新しい飲み薬や注射薬が開発されています。アブロシチニブは、そうした新しい飲み薬の一つで、「JAK阻害剤」という種類の薬です。小児でも12歳以上で使用できるようになっています。

■ これまでの研究で、アブロシチニブがかゆみを素早く改善することは分かっていましたが、「早期にかゆみが改善した人は、その後の皮膚の状態も良くなりやすいのか?」という疑問がありました。実は、この疑問は単にアブロシチニブだけでなく、アトピー性皮膚炎治療全体にとって重要な課題といえます。

■ つまり、薬剤の効果だけでなく、「早期治療反応による長期予測」という、アトピー性皮膚炎治療における共通のテーマを検証しようとした研究は、いくつかあります。もし早期のかゆみ改善が後の治療成功を予測できるなら、医師は治療方針をより適切に判断できるようになるからですね。

■ そのうちのひとつの研究を共有します。

Ständer S, Kwatra SG, Silverberg JI, Simpson EL, Thyssen JP, Yosipovitch G, et al. Early Itch Response with Abrocitinib Is Associated with Later Efficacy Outcomes in Patients with Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis: Subgroup Analysis of the Randomized Phase III JADE COMPARE Trial. Am J Clin Dermatol 2023; 24:97-107.

中等症から重症のアトピー性皮膚炎を有する成人患者387名を対象に、アブロシチニブ200mgまたは100mg 1日1回、皮下デュピルマブ300mg隔週投与、またはプラセボに加えて外用薬治療を16週間実施した無作為化二重盲検試験を実施し、その事後解析を実施した。

背景

■ アブロシチニブは経口ヤヌスキナーゼ1阻害剤であり、第III相JADE COMPARE試験において、中等症から重症のアトピー性皮膚炎(AD)患者に対して2週間以内に有意なかゆみの軽減をもたらした。

目的

■ このJADE COMPAREの事後解析は、かゆみ反応をさらに詳しく特徴づけ、早期のかゆみ軽減が後のAD重症度の改善を予測できるかどうかを判定することを目的とした。

方法

■ JADE COMPAREは、ランダム化二重盲検、二重ダミー、プラセボ対照試験であった。
■ 中等症から重症のADを有する成人患者(18歳以上)を、経口アブロシチニブ200mgまたは100mg 1日1回、皮下デュピルマブ300mg隔週投与(600mgの初回負荷用量後)、またはプラセボに加えて外用薬治療を16週間受けるようにランダムに割り付けた。
■ 評価項目は、2日目から15日目におけるPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS4)の4ポイント以上の改善、湿疹面積・重症度指数(EASI)、医師による総合的評価(IGA)反応、12週目における皮膚科生活の質指数(DLQI)スコアであった。
■ 2週目のPP-NRS4と12週目の有効性との関連性はカイ二乗検定により評価された。
■ 早期反応の後期有効性に対する予測値は、受信者動作特性曲線下面積により評価された。

結果

治療開始4日目という早期から、アブロシチニブ200mgでPP-NRS4反応を達成した患者の割合(18.6%)は、デュピルマブ(5.6%;p < 0.001)およびプラセボ(6.0%;p < 0.003)と比較して有意に高かった。
■ アブロシチニブ100mg用量でも同様の傾向が観察され、9日目からプラセボと比較して有意に高いPP-NRS4反応率を示した。

■ アブロシチニブの両用量において、12週目のIGA 0/1、EASI-75、EASI-90、およびDLQI 0/1の反応率は、2週目のPP-NRS4反応者で非反応者よりも高かった一方で、デュピルマブ群およびプラセボ群では2週目のPP-NRS4反応者と非反応者の間に差は観察されなかった。

2週目のPP-NRSの早期改善は、アブロシチニブ治療患者において12週目の皮膚クリアランスと関連していた

結論

■ アブロシチニブは中等症から重症のAD患者において迅速なかゆみ軽減をもたらし、アブロシチニブ200mgではデュピルマブおよびプラセボと比較して治療開始4日目という早期からかゆみの有意な改善を示した。
アブロシチニブによる2週間以内のかゆみ軽減は、12週目の後続する改善と関連していた

 

 

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