鏡を見ながら反対側の腕を掻くと、アトピーの腕のかゆみが軽くなる?

痒みとアトピー性皮膚炎、目でみることが関連する?

■ 痒みは私たちが「掻きたい」という欲求を感じる不快な感覚のことです。普通は掻くと痒みが治まりますが、アトピー性皮膚炎などの皮膚病では掻くと炎症が悪化してしまうため、患者さんは掻くに掻けない辛い状況にあります。

■ 興味深いことに、痒い部分を直接掻かなくても、痒みから離れた場所を掻くだけで痒みが軽くなることがあります。また、自分で掻かなくても他の人に掻いてもらっても効果があります。これは痒みの軽減が皮膚だけでなく、脳や脊髄などの「中枢神経系」でも起こっていることを示しています。

■ すなわち、痒みが軽くなるのは、「触覚による刺激」と「視覚的な情報処理」の両方が重要な役割を果たしていることを示していて、今回の鏡を使った実験のヒントになったのです。

Helmchen C, Palzer C, Münte TF, Anders S, Sprenger A. Itch relief by mirror scratching. A psychophysical study. PLoS One 2013; 8:e82756.

健康な男性26人を対象に、ヒスタミン注射で人工的に誘発した右腕の痒みに対して、鏡やビデオ映像を使った視覚的錯覚による掻き刺激の効果を検証した。

目的

■ この研究の目標は、参加者が鏡像を用いて痒みのない四肢を痒みのある四肢として視覚的に知覚するように操作された場合に、痒みのある四肢の対側四肢を掻くことで掻痒誘発性痒み減弱の中枢機序を活性化できるかをテストすることであった。

方法

■ 健康な参加者に対し、右前腕で実験的に誘発された痒みの強度を評価してもらいながら、右(痒みのある)前腕または左(痒みのない)前腕における外部誘導による掻き動作を観察させた。

■ これらの掻き動作は鏡に映されるか、または映されないかのいずれかであった。
■ 第一の実験では、参加者の前腕間に配置された鏡を用いて、実際には痒みのない(左)前腕が掻かれているにもかかわらず、参加者の痒みのある(右)前腕が掻かれているという視覚的錯覚を作り出した。
■ 左(非鏡像)前腕の可視性を制御するため、第二実験では参加者の前腕の反転および非反転のリアルタイム映像表示を用いて、参加者が片方の前腕のみ、両前腕、または全く掻かれていないという掻き動作を視覚的に知覚する実験条件を作成した。

結果

■ 両実験において、鏡条件下で痒みのない四肢を掻くことが知覚される痒み強度を有意かつ選択的に減弱させた

■ すなわち、痒みのない前腕が痒みのある四肢として視覚的に知覚された場合にこの効果が観察された。

考察

■ これらのデータは、実際には痒みのある四肢の対側にある痒みのない四肢が掻かれているにもかかわらず、痒みのある四肢が掻かれているという視覚的錯覚が有意な痒み緩和をもたらすことの証拠を提供している。
■ この効果は、視覚、触覚、および痒覚信号の一過性の錯覚性感覚間知覚一致性によるものかもしれない。
 「ミラー掻き」は、患部皮膚に追加的な害を与えることなく持続性掻痒を伴う限局性皮膚疾患における痒み知覚を軽減する代替治療法を提供する可能性があり、したがって重要な臨床的インパクトを持つかもしれない。

 

※論文の背景や内容の深掘り、全体のまとめ、図解、個人的な感想などは、noteメンバーシップにまとめました。

※登録無料のニュースレター(メールマガジン)は、一部有料会員向けも始めていますが、定期的に無料記事も公開予定です。さまざまなテーマを深堀り解説していきますので、ご興味がございましたらリンクからご登録ください。

 

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモを記録しているものですので、細かい誤字脱字はご容赦ください。
基本的に医療者向けで、申し訳ありませんが、質問には基本的にお答えしておりません。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう