薬をやめても効果が続く?OX40リガンド阻害薬アムリテリマブの効果:STREAM-AD試験

アトピー性皮膚炎の治療薬、次にくる可能性のあるOX40リガンド阻害薬とは?

■ アトピー性皮膚炎は、一度よくなってもまた悪くなることを繰り返し、皮膚の病気の中でも、患者さんの生活への影響がとても大きい病気の一つです。

■ この病気は、「免疫システムの暴走」が原因のひとつだと考えられています。具体的には、体の防御を担うT細胞という免疫細胞が、本来攻撃する必要のない自分自身の皮膚やホコリなどに過剰反応し、炎症を引き起こす物質を大量に放出してしまうのです。現在使われている治療薬の多くは、この免疫システムの特定の部分(2型炎症と呼ばれる)を抑えることで症状を改善させます。さまざまな薬が登場し、おおきな進歩をみせています。

■ しかし、これらの薬は症状を一時的に抑えることはできても、病気を根本的に治すことはできないと考えられています。

■ 近年、OX40とOX40Lというタンパク質のペアが、アトピー性皮膚炎の新しい治療標的として注目を集めています。OX40は、T細胞の表面にある「やる気スイッチ」のような役割を持っており、このスイッチが押されると、T細胞が活性化して炎症を引き起こすサイトカインを大量に放出します。OX40Lは、このスイッチを押す「手」の役割をしているといえばよいでしょうか。

■ 従来の治療薬が炎症の「結果」を抑えるのに対し、OX40/OX40L経路を標的とする薬は、T細胞の暴走そのものを防ぐことで、炎症の「大元」を断つことができます。まるで「暴走の原因となるスイッチそのものにカバーをかけて押せなくする」というアプローチです。

Valenzuela, F., & Meza, V. (2025). OX40/OX40L as a Therapeutic Target in Atopic Dermatitis: A Scoping Review. Biologics: Targets & Therapy, 19, 281-288.

■ 実際に、この分野では複数の薬が開発されており、既に臨床試験で効果を示しています。例えば、rocatinlimabという薬では、16週間の治療後に薬をやめても、その後24週間にわたって症状がさらに改善し続けるという、これまでの常識を覆すような現象が観察されました。

Guttman-Yassky, E., et al. (2023). An anti-OX40 antibody to treat moderate-to-severe atopic dermatitis: a multicentre, double-blind, placebo-controlled phase 2b study. The Lancet, 401(10372), 204-214.

■ このような「薬をやめても良くなり続ける」現象は、T細胞の「やる気スイッチ」をブロックすることで免疫システムの根本的な「リセット」が起こっている可能性を示唆しています。

■ そしてアトピー性皮膚炎の治療薬として開発が進められているOX40/OX40L経路の阻害薬には、主にロカチンリマブ(rocatinlimab)とアムリテリマブ(amlitelimab)があります。

■ そのうちアムリテリマブは、そのようなOX40Lを標的とした新しいタイプの薬の一つであり、今回の研究でその可能性が詳しく調べられました。

Weidinger S, Blauvelt A, Papp KA, Reich A, Lee CH, Worm M, et al. Phase 2b randomized clinical trial of amlitelimab, an anti-OX40 ligand antibody, in patients with moderate-to-severe atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol 2025; 155:1264-75.

中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者390名を対象に、OX40リガンドを標的とするアムリテリマブを4つの異なる用量(62.5mg、125mg、250mg、250mg+負荷投与)で24週間皮下投与し、その後28週間の追跡期間で有効性と安全性を評価した。

背景

■ アムリテリマブは、抗原提示細胞上のOX40リガンドを標的とする完全ヒト型非枯渇性モノクローナル抗体であり、アトピー性皮膚炎(AD)で見られるT細胞駆動性炎症を予防できる可能性がある。

目的

■ 本試験は、成人ADにおけるアムリテリマブの有効性と安全性を評価した。

方法

■ この2部構成、第2b相、ランダム化、二重盲検プラセボ対照試験(ClinicalTrials.gov番号NCT05131477)において、患者は250mg + 500mg負荷投与、250mg、125mg、または62.5mgのアムリテリマブまたはプラセボを4週間ごとに皮下投与され、第1部では24週間投与された(1:1:1:1:1ランダム化)。
■ 第2部では、臨床反応者を3:1でアムリテリマブ中止または前回の投与レジメン継続に28週間再割り付けした。

主要評価項目はベースラインから16週目までの湿疹面積・重症度指数(EASI)の変化率であった。

結果

■ 合計390名と190名の患者がそれぞれ第1部と第2部に登録された。
プラセボと比較してアムリテリマブ全用量でEASIの有意な変化率減少が観察された(P < .001)。

24週目の臨床反応(医師総合評価0/1および/またはEASI75%減少)は、アムリテリマブ継続または中止患者の両方で52週目まで維持された。

■ 治療中止後も52週目に臨床反応を維持した患者のうち、80%以上が52週目前の数週間にわたって血清アムリテリマブ濃度が4 mg/mL閾値未満であった。

■ 第1部におけるAD関連バイオマーカーの減少は第2部を通じて維持された。
■ アムリテリマブは52週間にわたって良好な忍容性を示した。

結論

■ アムリテリマブ治療は臨床およびバイオマーカー反応を有意に減少させ、52週間を通じて成人ADにおいて良好な忍容性を示した。
治療中止後28週間にわたって大多数の患者で持続的反応が観察された。

 

 

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