デュピルマブは食物アレルギーを改善するか?血液検査と皮膚テストの意外な違い

アトピー性皮膚炎治療薬デュピルマブの食物アレルギーへの影響はある?ない?

デュピルマブは、アレルギー反応を起こすときに重要な役割を果たす「IL-4」と「IL-13」という物質の働きを邪魔することで、アレルギー症状を抑える薬です。現在、この薬はアトピー性皮膚炎、喘息などの治療に使われています。

■ しかし、食物アレルギーについては、デュピルマブの効果がはっきりと分かっていません。食物アレルギーは年々増えていて、デュピルマブの効果も明らかにしたいところです。

■ 先行研究で分かっていることは、デュピルマブを使うと血液中のアレルギー物質(IgE抗体)が低下することです。成人、小児ともに、食物アレルゲンの値(特異的IgE抗体価)が低下したという報告があります。

Spekhorst, L. S., et al (2023). Dupilumab has a profound effect on specific-IgE levels of several food allergens in atopic dermatitis patients. Allergy, 78(3), 875–878.

van der Rijst, L. P., et al (2024). Dupilumab induces a significant decrease of food-specific immunoglobulin E levels in pediatric atopic dermatitis patients. Clinical and Translational Allergy, 14:e12381.

■ 興味深いことに、この現象は食物アレルギーだけでなく、鼻の病気(慢性副鼻腔炎)でも観察されており、血清中だけでなく鼻汁中のIgEも低下することが報告されています。

Bachert, C., et al (2019). Efficacy and safety of dupilumab in patients with severe chronic rhinosinusitis with nasal polyps (LIBERTY NP SINUS-24/-52). The Lancet, 394(10209), 1638–1650.

■ でも、血液検査の数値が良くなったからといって、本当に食べ物を安全に食べられるようになったかどうかは別の問題でしょう。

■ 実際に、ピーナッツアレルギーに対してデュピルマブを試した研究では、あまり良好とは言えない結果でした。デュピルマブを24週間使った研究では、ピーナッツを安全に食べられるようになった子どもは8%だけでした。

Sindher, S. B., et al (2025). Efficacy and Safety of Dupilumab in Children With Peanut Allergy: A Multicenter Study. Allergy, ePub ahead of print.

■ 一方で、他の生物学的製剤である抗IgE抗体のオマリズマブでは、複数の食品に対する反応しきい値の改善が示されており、食物アレルギーに対する生物学的製剤のアプローチは多様性を見せています。

Wood, R. A., et al (2024). Omalizumab for the Treatment of Multiple Food Allergies. New England Journal of Medicine, 390(10), 889–899.

■ 症例報告では、デュピルマブを使った後にトウモロコシやピスタチオ、魚類などを食べられるようになった患者が報告されていますが、まだ十分な研究はされていません。

■ そこで最近、小児患者でデュピルマブが食物アレルギーにどのような影響を与えるかを調査されました。

 

Emerson AG, Krantz MS, Robison RG. Food Allergy Clinical Course in Children and Adolescents Treated with Dupilumab for Atopic Dermatitis. Ann Allergy Asthma Immunol 2025.

アトピー性皮膚炎と食物アレルギーを併存する生後6か月から18歳までの小児60名を対象に、皮膚炎治療のためのデュピルマブ投与が食物アレルギーに与える影響を、中央値17か月間の治療期間で後方視的に調査した。

背景

■ デュピルマブは、IL4Rαの阻害を通じて2型炎症を抑制するモノクローナル抗体である。
■ 多くのアトピー性疾患に対して承認されているが、食物アレルギーに対するデュピルマブの効果については十分に評価されていない。

目的

■ アトピー性皮膚炎を併存する患者においてデュピルマブを使用した際の食物アレルギーの臨床経過に対する効果を記述すること。

方法

■ 単一の三次医療センターにおいて、アトピー性皮膚炎の治療でデュピルマブを投与された食物アレルギーのある小児の電子カルテを後方視的に検討した。
■ 皮膚プリックテスト(SPT)と特異的IgE(sIgE)を含む食物アレルギー検査、および日常診療で実施された経口食物負荷試験の結果を調査した。

結果

■ 生後6か月から18歳までの60名の小児が含まれた。
■ デュピルマブ治療月数による測定値の変化率の線形回帰解析では、sIgEは治療1か月ごとに0.6%減少した(95% CI -0.8%~-0.4%、p<0.001)が、SPTは変化しなかった(0.1% [95% CI -0.6%~0.7%]、p=0.8)。
■ このコホートにおける経口食物負荷試験の結果は、デュピルマブ使用の有無に関わらず実臨床環境で食物負荷試験を受ける既報告のコホートと類似していた(76%の合格率)。

結論

■ 食物アレルギー患者においてデュピルマブを投与すると、治療期間の延長とともにsIgEはより大きく減少するが、SPTはより安定している
■ これは、食物アレルギーでデュピルマブを投与されている患者では、血液検査(sIgE)と比較してSPTの経時的な大幅な減少が食物アレルギーの症状改善のより良い指標である可能性を示している。

 

 

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