
新規外用薬が増える、アトピー性皮膚炎治療の選択肢のひとつデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏
■ アトピー性皮膚炎(AD)の治療において、外用ステロイド薬(TCS)は長年にわたり第一選択薬として広く使用されてきました。しかし、長期使用に伴う皮膚萎縮や毛細血管拡張といった局所副作用への懸念から、特に顔や首などの敏感な部位では、ステロイドを避けたいと考える患者や医師は少なくないでしょう。
■ 近年、日本のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024年版では、従来のTCSやタクロリムス軟膏に加えて、デルゴシチニブ軟膏やジファミラストといった新しい外用薬が一次治療の選択肢として明記されるようになりました。これにより、ステロイド回避が望ましい場面での治療の幅が大きく広がっています。
Japanese Dermatological Association / Japanese Society of Allergology (2025). English Version of Clinical Practice Guidelines for the Management of Atopic Dermatitis 2024. Journal of Dermatology. DOI: 10.1111/1346-8138.17544
■ 日本国内で使用可能な複数の外用薬を比較したネットワークメタ解析では、デルゴシチニブ軟膏が有効性と安全性のバランスに優れていることが示されており、標準治療の一角として期待が高まっています。
Murota, H., et al. (2025). Systematic Literature Review and Network Meta-Analysis of Clinical Efficacy and Safety of Topical Treatments for Patients with Atopic Dermatitis. Dermatology and Therapy. DOI: 10.1007/s13555-025-01390-6
■ 今回紹介する論文は、顔や首にアトピー性皮膚炎の症状がある患者さんを対象に、ステロイド外用薬からデルゴシチニブ軟膏0.5%へ切り替えた際の治療満足度、有効性、安全性を12週間にわたって調査した実臨床に近い研究です。ステロイドから別の治療法へ切り替える際の不安や疑問に、実際のデータで答えを出そうとする、とても意義深い試みといえるでしょう。
Abe M, Igarashi A, Kitajima H, Toyama H, Kabashima K, Saeki H. Treatment Satisfaction, Efficacy, and Safety of Delgocitinib Ointment for Atopic Dermatitis-Induced Rash on the Face and Neck: Efficacy at Reducing Local Side Effects of Topical Steroid and Tacrolimus Ointment. J Dermatol 2025; 52:1232-42.
顔や首にアトピー性皮膚炎があり、3カ月以上ステロイドまたはタクロリムス軟膏を使用していた18歳以上の患者38名に対して、デルゴシチニブ軟膏0.5%を1日2回、12週間塗布した。
背景
■ この非盲検、単一群、多施設共同臨床試験では、アトピー性皮膚炎(AD)患者において、3カ月以上の外用ステロイドまたはタクロリムス軟膏の使用により生じた顔面・頸部病変に対して、0.5%デルゴシチニブ軟膏を1日2回12週間塗布した際の治療満足度、有効性、安全性を評価した。
■ 主要評価項目は、治療満足度の変化(Treatment Satisfaction Questionnaire for Medication-9[TSQM-9])とした。
■ 副次評価項目には、modified Eczema Area and Severity Index(mEASI)スコアおよびEASIスコアの変化、掻痒に関する数値評価尺度(NRS)、副作用の重症度、標的病変における皮膚状態、疾患コントロール(Atopic Dermatitis Control Tool[ADCT])、デルゴシチニブ軟膏に対する嗜好性(Patient Preference Questionnaire[PPQ])を含めた。
方法
■ 全体で、平均年齢40歳、AD罹病期間30.7年の患者38名が研究に組み入れられた。
結果
■ TSQM-9スコア(治療満足度のスコア)は、全般的満足度(Week 0:58.8±14.7、Week 4:68.5±16.6、Week 12:73.2±16.0)、有効性(57.0±14.1、67.0±12.6、70.9±13.4)、利便性(64.9±15.0、73.6±12.7、76.1±13.6)(すべてp<0.01)において有意に改善した。
■ mEASI(湿疹の重症度スコア)(Week 0:1.31、Week 12:0.68、p<0.001)およびNRS(かゆみのスコア)(4.53、2.71、p<0.001)スコア、ならびにADCT(8.3、5.6、p<0.01)が有意に改善した。
■ Week 0(開始時)と比較して、軽度以上の皮膚萎縮、毛細血管拡張症、皮膚刺激の発現率が低下した。
■ PPQ(患者さんの好みを調べる質問)では、約80%の患者がすべての質問に対して「強く同意する」または「同意する」と回答した。
■ さらに、皮膚状態はすべての項目(乾燥、感触、弾力性/ハリ、外観)において1~2週および12週で有意に改善した(p<0.001)。
結論
■ 本研究の結果は、デルゴシチニブ軟膏が、皮膚病変を有する顔面・頸部AD患者の治療切り替え、またはステロイドやタクロリムスに関連する副作用の発現を懸念する患者に対して、有効な治療選択肢となりうることを示している。
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