
赤ちゃんの激しい嘔吐の原因、卵黄FPIES(新生児乳児食物蛋白誘発胃腸症)とは何か
■ 通常の食物アレルギーは、食べた直後に蕁麻疹が出たり呼吸が苦しくなったりしますが、FPIES(新生児乳児食物蛋白誘発胃腸症)はそれとは違います。食べてから1〜4時間後に突然激しく嘔吐し、顔色が悪くなったり、ぐったりしたりする症状が特徴です。
■ この病気は主に赤ちゃんがかかります。もともとは牛乳が原因になることが多かったのですが、現在、日本では卵の黄身(卵黄)が最も多い原因です。近年、日本国内で鶏卵によるFPIES症例が急激に増えていることが報告されているのです。2018年から2019年にかけて、複数の医療機関で鶏卵FPIESの診断件数が顕著に増加したことが確認されています。
Akashi, M., et al. (2022). Recent dramatic increase in patients with food protein-induced enterocolitis syndrome (FPIES) provoked by hen's egg in Japan. Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice, 10(4), 1110-1112.e2.
■ この増加の背景には、離乳食での早期卵導入が推奨されるようになったことや、医療現場でのFPIESに対する認知度が向上したことが関係している可能性があります。また、診断基準を完全には満たさないものの、繰り返し症状が出る軽症例も多く存在することが最近の研究で明らかになっており、このような症例の発見が増えたことも、全体の症例数増加に寄与していると考えられています。
Hayashi, D., et al. (2024). Differences in Characteristics Between Patients Who Met or Partly Met the Diagnostic Criteria for FPIES. Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice, 12(7), 1831-1839.e1.
■ 興味深いことに、多くの赤ちゃんは最初のうちは卵黄を普通に食べられているのに、ある日突然症状が出るようになります。つまり、「何回か問題なく食べた後で、急に症状が出る」というパターンがあるのです。
■ これは、体の中で徐々に卵黄に対する過敏な反応が起こっているためだと考えられています。
■ しかし、具体的にどのような食べ方のパターンで症状が出るのかは、これまでよく分かっていませんでした。そこでこの研究では、「症状が出る前の赤ちゃんたちは、どのくらいの頻度で卵黄を食べていたのか」を詳しく調べられました。
Okura Y, Shimomura M, Takahashi Y, Kobayashi I. Symptoms of egg yolk-associated food protein-induced enterocolitis syndrome appear following prolonged cessation. JPGN Reports; n/a.
札幌のKKR札幌医療センターで2018年から2023年の間に経口食物負荷試験で確定診断された卵黄FPIES患者24名を対象に、発症前の卵黄摂取日に関する完全なデータを用い、無症候期における摂取間隔と最初のFPIESエピソード直前の摂取間隔を後方視的に比較した。
背景
■ 食物蛋白誘発性腸炎症候群(FPIES)は、非免疫グロブリンE(IgE)介在性の食物アレルギーである。
■ 固形食によるFPIESの患者の大部分は、発症前に原因食物の無症候性摂取期間を経験する。
目的
■ 本研究は、FPIESを誘発する卵黄(EY)摂取パターンを解明することを目的とした。
方法
■ 発症前のEY摂取日に関する完全なデータが利用可能な、経口食物負荷試験で確定診断されたEY-FPIES患者24名において、無症候期における摂取間隔と、最初のFPIESエピソード直前の摂取間隔を後方視的に比較した。
結果
■ 無症候期における平均摂取間隔は2.2±2.3日(中央値1日;四分位範囲[IQR]1~3日;95%信頼区間[CI]1.75~2.68日)であった。
■ 最後の無症候性摂取から発症までの平均間隔は17.1±12.7日(中央値13日;IQR 8~29日;95%CI 11.70~22.46日)であった。
結論
■ FPIESの発症は、無症候性摂取後の長期の摂取中断と関連している。
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