負荷試験で摂取できることがわかっても、卵を食べたがらない子ども達。その要因とは?

鶏卵アレルギーの子どもが直面する新たな課題

■ 鶏卵は世界中で最もアレルギーを起こしやすい食べ物の一つで、100人中約2-10人がアレルギーを持っています。特に日本では、1歳未満の赤ちゃんの食物アレルギーの原因の半数以上が卵によるものです。

■ 卵アレルギーの良い点は、確かに多くの子どもが成長とともに治っていくことです。3歳までに約3割、6歳までに約7割の子どもが卵を食べられるようになるという報告もあります。また、卵を食べ続けることで、より早く治るようになることも分かっています。

■ 近年、アレルギー治療では「経口免疫療法(OIT)」という新しい治療法も注目されています。これは少量ずつアレルギー食品を食べ続けることで体を慣らす治療法です。しかし、この治療法には課題があることが最近の研究で明らかになってきました。

■ OITの成功を妨げる要因として、患者の年齢と心理的な嫌悪感が大きな役割を果たしています。特に6歳を超える子どもでは、味覚嫌悪と不安がOITの開始や継続の主要な障壁となることが報告されています。

Trevisonno, J., Venter, C., et al (2024). Age-Related Food Aversion and Anxiety Represent Primary Patient Barriers to Food Oral Immunotherapy. JACI: In Practice, 12:1809–1818.e3.

■ 病院では「経口食物負荷試験」という検査を行います。これは医師の監督の下で実際に卵を食べてみて、アレルギー症状が出ないかを確認するテストです。しかし問題は、このテストに合格した後でも、実際には卵を食べたがらない子どもたちがいることです。

■ 過去の研究によると、安全性テストに合格した後でも、子どもの15-30%、大人の40%が実際には卵を避け続けてしまいます。これは栄養バランスが悪くなったり、再びアレルギーが起こりやすくなったりする問題につながります。

■ 同じ卵を使った食品でも、調理方法によって患者の受け入れやすさが大きく変わることが他の研究でも示されています。加熱卵(ベイクドエッグ)を用いた治療と、鶏卵そのものを用いたOITを比較した研究では、両者とも一定の効果を示しましたが、完全な治療を目指す場合にはOITの方が優位であることが明らかになっています。

Kim, E. H., Sampson, H. A., et al (2020). Induction of sustained unresponsiveness after egg oral immunotherapy compared to baked egg therapy in children with egg allergy. Journal of Allergy and Clinical Immunology, 146(4):851–862.e10.

■ 個人的には、鶏卵によるOITは、鶏卵そのもので、より年齢が低い段階から始めることが肝要と思っていますが、一方で、年齢が高くなるまで持ち越した鶏卵アレルギーのお子さんをご紹介いただくことは少なくありません。その時は、「これは大変だぞ」と感じます。というのも、もし治療を頑張っても、そして摂取できるようになっても、卵を嫌がる子どもがすごく多いからです。では、どんな子どもが鶏卵を嫌がりやすいのでしょうか?この「鶏卵への嫌悪感」に対する検討が、日本で実施されました。

Fusayasu N, Asaumi T, Nagakura KI, Takahashi K, Yanagida N, Sato S, et al. Factors associated with egg aversion after a negative oral food challenge result in children with egg allergies: A multicenter questionnaire survey in Japan. Allergol Int 2025.

2018年に日本の7病院で、過去に卵でアレルギー症状が出たことがある3-18歳の小児140名を対象に、経口負荷試験に合格してから6か月以上経過後の卵嫌悪について、多施設アンケート調査を実施した。

背景

■ 多くの鶏卵アレルギー児は(鶏卵に対する)嫌悪感を経験し、これが経口負荷試験(OFC)陰性後の再導入を阻害する。
■ そこで、卵OFC陰性後の小児における卵嫌悪に関連する因子を評価することを目的に調査した。

方法

■ 2018年1月から12月に多施設アンケート調査を実施し、医療記録から背景データを後方視的に収集した。
■ 加熱全卵半個相当のOFC陰性から6カ月以上経過後に、卵に対する即時型反応の既往を有する3-18歳の小児を対象とした。
■ 「嫌悪」は卵や卵を含む加工食品を嫌って食べたがらないこととして定義した。

結果

140名の小児(年齢中央値:6.7歳)を対象とし、OFC通過時の年齢中央値は3.3歳、卵白特異的IgE中央値は10.0 kUA/Lであった。
■ 全体で57名(41%)の子どもが卵に対する嫌悪を示した。
■  「食感や味が嫌い」(61%)が最も多い嫌悪の理由であった
■ 多変量解析における関連因子は、OFCで陰性となった時により年齢が高いことであった(調整オッズ比:1.24、95%信頼区間:1.04-1.49)。
■ 嫌悪の頻度は調理方法によって大きく異なり、68%がゆで卵の白身に嫌悪を示したが、卵入りのから揚げに対する嫌悪は5%未満であった。

結論

■ OFCで陰性となった子どもの約半数が卵に対する嫌悪を持っており、これは負荷試験で陰性となった時の年齢がより高いことと関連していた。
年齢の高い群では、嫌悪の少ない調理法を考慮した慎重な経過観察と食事指導が重要である。

 

 

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