新生児期の洗浄に、石けん(洗浄剤)を使用してよいか? そのテーマのランダム化比較試験をご紹介します。
■ アトピー性皮膚炎の洗浄に対し総論を提示したことがありますが、結論ははっきりしていないという結果でした。
■ アトピー性皮膚炎の予防のために、新生児期から保湿剤を塗布するという方法は、広がりを見せていますが、一方で、洗浄をどうするかに関しては結論がでていません。
■ ハイリスク対象の新生児に対しての研究では、「基本毎日」になっていますし、
■ 一般新生児に対する研究では「2日おき」になっています。
■ 今回、すこし古めなのですが、新生児に対する洗浄に関し、洗浄剤を使用 vs 水のみでの洗浄でのランダム化比較試験を見つけました。
■ なお、TEWLとは、皮膚バリア機能をみるための非侵襲的な(痛くない)検査のことです。
Lavender T, et al. Randomized, controlled trial evaluating a baby wash product on skin barrier function in healthy, term neonates. Journal of Obstetric, Gynecologic, & Neonatal Nursing 2013; 42:203-14.
新生児に対する洗浄方法として、洗浄製品による入浴群 159人と水のみ入浴群 148人とを比較し、14日、28日における経皮水分蒸散量(TEWL)を比較した。
目的
■ 新生児(1カ月未満)の洗浄剤を使用した入浴が、水のみの入浴に劣らない(悪くない)という仮説を検討する。
デザイン
■ 評価者ブラインドランダム化対照非劣性試験
セッティング
■ 英国北西部にある教育病院と参加者の家庭。
参加者
■ 出生後48時間以内にリクルートされた健常新生児370人。
方法
■ 洗浄製品による入浴群 159人と水のみ入浴群 148人とを比較した。
■ プライマリアウトカムは出生14日後の経表皮水分蒸散量(TEWL)であり、有意ではないとする事前に決められた差は1.2だった。
■ セカンダリアウトカムは、角質水分量、表皮pH、皮膚の臨床的な観察、母の見解の変化が含まれた。
結果
■ 完全なTEWLデータは、242人(78.8%)の乳児について得られた。
■ TEWLの点で、洗浄群は、水のみ群と比較して非劣勢だった(intention‐to‐treat解析:湿疹・新生児期の状態・試験開始時の家族歴により調整した、洗浄群vs 水のみ群 -95%信頼区間[CI] -1.24~1.07; per protocol解析:95%CI -1.42~1.09)。
論文から引用。TEWLにおいて有意差なし。
■ セカンダリアウトカムにも有意差は認められなかった。
論文から引用。14日目の角質水分量に有意差が認められるが、本文中では”調整後、この差は統計的に有意であるとはみなされず、28日で減少した。”と記載されている。
論文から引用。洗浄方法に対する母の見解。「匂い」に関して有意差あり。また、「この洗浄方法を続けるか」にも有意差あり。
結論
■ 新生児における洗浄群と水のみ群に差を認めなかった。
■ これらの知見は、新生児に対する洗浄または他の同等の洗浄剤を使用することを選択した親に安心感を与え、医療従事者が親の選択を支持するエビデンスを提供している。
結局、何がわかった?
✅新生児に対する洗浄において、洗浄剤を使用しても、水のみでも、生後2~4週までのTEWL(=皮膚バリア機能を反映)に有意差は認められなかった。
✅ただし、保護者の感じる「匂い」に有意差があり、試験終了時、このスキンケアを続けるか?という質問に対しては、水のみの洗浄群の方が変更を多く希望した。
この研究のセッティングにおいて、洗浄剤は皮膚バリア機能に有意差は認めなかった。
■ 洗浄成分は、潜在的に皮膚を傷める可能性はあります。そのため、「洗いすぎ」が問題視されることはあってしかるべきでしょう。
■ ただし、今回の研究セッティングでは、洗浄剤が悪くはないという結果でした。
■ 一方、母の印象に関しての結果で、「匂い」や「これからも同じ方法で継続するか」という質問に、「洗剤を使いたい」方になることに注意が必要かもしれません。
今日のまとめ!
✅新生児期の洗浄において、洗浄剤は皮膚バリア機能を下げないようだ。