Maruyama Y, et al. Effects of Japanese herbal medicine, Juzen-taiho-to, in otitis-prone children–a preliminary study. Acta oto-laryngologica 2009; 129:14-8.
乳幼児の反復性中耳炎に対する裏技。
■ ちょっと古い論文ですが、小児急性中耳炎診療ガイドラインにも言及がある報告で、十全大補湯が中耳炎の反復を減らすという前後比較研究です。
反復性中耳炎の幼児24人に、十全大補湯を3ヶ月間投与し、中耳炎の反復回数、発熱期間などを検討した。
目的
■ 未発達の免疫系における難治性/再発性の感染症に対する十全大補湯(Juzen-taiho-to [JTT]; TJ-48)の有効性を評価するために、十全大補湯を中耳炎を起こしやすい幼児に投与して、十全大補湯の投与前および投与中の臨床的変化を調べた。
参加者および方法
■ 中耳炎に罹患しやすい幼児24人に、1日2回3ヶ月間、十全大補湯を0.10-0.14g / kg /日投与した。
■ 十全大補湯投与前後の急性中耳炎(AOM)の頻度、発熱および抗生物質投与の期間、病院受診に関する臨床経過を比較した。
結果
■ 投薬遵守率は87.5%であり、十全大補湯の投与は95.2%の患者が寛解した。
■ 明らかな副作用は観察されなかった。
■ 十全大補湯投与により、急性中耳炎(AOM)の頻度が有意に低下した(Wilcoxon signed rank test、p = 0.000)。
論文から引用。中耳炎の回数が有意に低下した。
■ 十全大補湯投与後、発熱(p = 0.000)および抗生物質の使用(p = 0.001)、入院回数(p = 0.001)、緊急入院(p = 0.000)は、有意に減少した。
論文から引用。発熱期間が有意に短縮した。
■ 十全大補湯使用期間終了後、化膿性中耳炎および/または他の感染症を発症したため、21人中14人(66.7%)はJTTの服用を再開した。
■ 急性中耳炎の頻度は、十全大補湯を中止した後に有意に増加し(p = 0.004)、十全大補湯再開で再び減少した(p = 0.005)。
論文から引用。十全大補湯を中断後、中耳炎回数が増加し再開で少なくなった。
結論
■ 免疫機能を改善する日本のハーブ療法である十全大補湯(Juzen-taiho-to [JTT]; TJ-48)は、小児の中耳炎に効果的であることが明らかとなった。
結局、何がわかった?
✅小児の反復性中耳炎に対し、十全大補湯は中耳炎の回数を減らし、発熱期間も短縮する。
漢方薬も裏技として持っておくと、大きな武器になるでしょう。
■ あくまでこの検討は前後比較研究ですので、ランダム化比較試験を要します。ただ、ガイドラインにその結果の記載があるものの、まだ報告書の段階で論文が見つけられませんでした。
■ 漢方薬は、エビデンスベースの研究になじまないことがあるのは確かですが、きちんと証(東洋医学的診断)を合わせれば、「裏技」として大きな武器になると思っています。
■ 十全大補湯は、小児科領域では肛門周囲膿瘍にもファーストラインで使われる様になってきています。
今日のまとめ!
✅十全大補湯は、小児の反復性中耳炎に有効である。