焼いたゴマ」vs「生のゴマ」—子どものゴマアレルギー治療、7.1倍の安全性の差?

ごまアレルギーの治療の報告。

■ ゴマは私たちの食生活に広く浸透しています。パン、お菓子、ドレッシング、フムスなど様々な食品に使用されており、ゴマアレルギーを持つ方が知らないうちに摂取してしまうリスクが年々高まっています。「うちの子はゴマアレルギーだから完全除去している」というご家庭も多いかもしれませんが、その「完全除去」が本当に最善の選択なのか、近年の研究では議論が進んでいます。

■ ゴマアレルギーの有病率は世界的に0.1%〜2.2%と報告されていますが、この幅の大きさは国・地域によるゴマ消費量の違いや、研究ごとの「アレルギー」定義の差異に起因します。

Moonesinghe, H., et al. (2015). The prevalence of "novel" food allergens worldwide: a systematic review. Clinical and Translational Allergy, 5(S3), P9.

■ 日本では、全国規模の即時型食物アレルギー実態調査においてゴマは原因食物の上位には入っていません。しかし、だからといって軽視できるわけではありません。ゴマアレルギーの特徴として、自然寛解率が20〜30%と低く、多くの患者さんが一生付き合っていく必要があること、そしてアレルギー保有者の約70%が重篤なアナフィラキシーを経験しているという報告があり、重症化しやすい傾向が指摘されています。

消費者庁 (2024). 令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書.

■ 現在の標準治療は「ゴマの完全除去」ですが、これは日常生活において非常に困難です。そこで注目されているのが「経口免疫療法(OIT)」です。これはアレルギーの原因となる食物を少量から段階的に摂取し、体を慣れさせていく治療法で、ピーナッツ、牛乳、卵のアレルギーでは有効性が確立されつつあります。しかし、ゴマアレルギーに対するOITでは、「焼いたゴマ」と「生のゴマ」のどちらを使用すべきかを直接比較した研究はこれまで存在しませんでした。

■ 今回ご紹介する論文は、この疑問に答える世界初の比較研究です。

※経口免疫療法は、標準療法ではありません。

Khalaf R, Mulé P, Kaouache M, Sigman K, McCusker C, Saker S, et al. Comparing Two Oral Immunotherapy Strategies for Sesame Allergy: Baked Goods with Sesame Paste versus Crushed Sesame Seeds. International Archives of Allergy and Immunology. 2025.

モントリオール小児病院のアレルギー外来を受診した、皮膚テスト陽性かつIgE依存性ゴマアレルギーの病歴を持つ小児76名(焼成群39名、種子群37名)を対象に、焼いたゴマペースト入りマフィンまたは生のゴマ種子を用いた経口免疫療法を実施し、安全性と効果を比較した後方視的コホート研究である。

背景

■ ゴマアレルギーは、食物によって引き起こされる重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)の主要な原因の一つとして報告されており、誤って摂取してしまうリスクが高いことと関連している。
■ 本研究は、実際の診療現場において、小児を対象としたゴマへの感受性を下げるための修正プロトコルの効果と安全性を評価することを目的とした。

方法

■ モントリオール小児病院のアレルギー外来を受診し、皮膚テストが陽性で、IgE依存性ゴマアレルギーの病歴がある小児が研究に登録された。
■ 保護者からインフォームド・コンセントを得た後、医師の監督のもとで、焼いたゴマペースト(タヒニ)入りマフィン、または生のゴマ種子のいずれかの形でゴマタンパク質の初回投与が行われた。
■ 焼成群には約5 mgのゴマタンパク質(1/4ティースプーン相当)から開始し、最終的にフムス(ゴマペーストとひよこ豆を混ぜた食品)2ティースプーン(タンパク質600 mg)の維持量に到達した。
■ 一方、種子群には約15粒の砕いたゴマ種子(75 mg)から開始し、タヒニ大さじ1杯(タンパク質3 g)の維持量に到達した。
■ 維持量に達した後、参加者は5年間にわたり年1回の外来受診を求められた。

結果

■ 研究対象は76名の患者で、39名が焼成ゴマを、37名が生ゴマの投与を受けた。
■ 2つの治療法を比較した結果、生のゴマ種子を使用した群は、焼成ゴマペースト製品を使用した群と比較して、より重いアレルギー反応を起こすリスクが7.1倍高かった(統計的に有意:95%信頼区間 3.6–14.1)

■ 焼成群・種子群の両方において、重症の反応が起こる可能性は、治療が進むにつれて有意に減少した

結論

■ 焼成ゴマペーストを用いた改良版の減感作プロトコルは、ゴマアレルギーを持つ小児に対して安全に使用できる

 

 

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