デュピルマブと経口免疫療法を組み合わせるとピーナッツアレルギーが改善しやすい?

デュピルマブによる食物アレルギー治療戦略への期待

■ ピーナッツアレルギーは、米国では子どもの約2.2%、大人の約1.8%が患っている病気で、子どもの食べ物アレルギーの中で最も多いとされています。日本でも少なくなく、食物アレルギーの原因食物として、5位に位置しています。症状が重くなりやすく、大人になっても治りにくいという特徴があります。

■ 現在の治療方法は、主にピーナッツを食べないように気をつけることと、もしアレルギー反応が起きた時にエピペンという薬を使うことです。しかし、ピーナッツを完全に避けるのは、難しい場合もあります。

■ そこで注目されているのが経口免疫療法(OIT)という治療法です。これは、アレルギーの原因となるピーナッツを少しずつ食べることで、体をピーナッツに慣れさせていく方法です。AR101という薬が「Palforzia」として、最近、アメリカとヨーロッパで正式に認められました。

■ 「Palforzia」を検討したPALISADE試験やARTEMIS試験では良い結果が出ていますが、治療中にアレルギー反応が起こることがあり、重篤なアナフィラキシーという反応が9.4%の患者さんに起こりました(プラセボでは3.8%)。そのため、より安全な治療法が求められています。

 デュピルマブは、アレルギー反応を引き起こす体内の物質(IL-4とIL-13)をブロックする働きがあります。この薬は、アトピー性皮膚炎や喘息など、他のアレルギー疾患の治療にすでに使われています。興味深いことに、最近の研究では、デュピルマブ単独でも食物アレルギーに対して一定の効果があることが報告されています。小児アトピー性皮膚炎患者36例を対象とした研究では、1年間の治療で10種類の食品すべてに対する特異的IgE値が70-83%も減少することが示されました。

van der Rijst, L. P., et al. (2024). Dupilumab induces a significant decrease of food-specific IgE levels in pediatric atopic dermatitis patients. Clin Transl Allergy, 14(7), e12381.

■ また、複数の食物アレルギーを持つ患者20例では、デュピルマブ治療後に偶発的に摂取しても症状が出ない例が複数報告されており、さらには甲殻類アレルギーの成人がエビを誤食しても無症状だったという症例報告もあります。

Sernicola, A., et al. (2024). Dupilumab as Therapeutic Option in Polysensitized Atopic Dermatitis Patients Suffering from Food Allergy. Nutrients, 16(16), 2797.

■ これらの知見を踏まえ、デュピルマブを経口免疫療法と組み合わせることで、より安全で効果的にピーナッツアレルギーを治療できるかどうかが検証されました。現在、同様のアプローチが牛乳アレルギーを対象としたMAGIC試験でも進行中であり、食物アレルギー治療の新たな可能性が期待されています。

Long, A., et al. MAGIC Trial: Dupilumab and Milk Oral Immunotherapy for Cow's Milk Allergy (Phase II, NCT04148352). Ann Allergy Asthma Immunol, 131, 29-36.

■ 結果はどうだったのでしょうか?

※2025年7月現在、デュピルマブは食物アレルギーに保険適用はありません。

Chinthrajah RS, Sindher SB, Nadeau KC, Leflein JG, Spergel JM, Petroni DH, Jones SM, Casale TB, Wang J, Carr WW, Shreffler WG, Wood RA, Wambre E, Liu J, Akinlade B, Atanasio A, Orengo JM, Hamilton JD, Kamal MA, Hooper AT, Patel K, Laws E, Mannent LP, Adelman DC, Ratnayake A, Radin AR. Dupilumab as an Adjunct to Oral Immunotherapy in Pediatric Patients With Peanut Allergy. Allergy. 2025 Mar;80(3):827-842.

確定診断されたピーナッツアレルギーを有する小児患者148名(6歳以上17歳以下)を対象に、28-40週間の漸増期間中にデュピルマブ+経口免疫療法またはプラセボ+経口免疫療法を投与し、24週間の維持期間とその後12週間の追跡期間における治療効果を評価した。

背景

■ ピーナッツアレルギーは、小児における一般的で生命を脅かす食物アレルギーである。
■ そこで、インターロイキン(IL)-4/IL-13の活性を阻害するデュピルマブが、小児ピーナッツアレルギー患者における経口免疫療法(OIT)AR101の有効性を向上させるかどうかを評価した。

方法

■ 米国において、確定診断されたピーナッツアレルギーを有する小児患者(6歳以上17歳以下)を対象とした第II相、多施設、ランダム化、二重盲検試験(NCT03682770)を実施した。
■ 患者は2:1の比率でランダム化され、28-40週間の漸増期間中にデュピルマブ+OITまたはプラセボ+OITを受けた。
■ デュピルマブ+OIT群の患者は1:1で再ランダム化され、24週間のOIT維持期間中にデュピルマブ+OITまたはプラセボ+OITを受け、漸増後、維持期間後、および12週間の治療後フォローアップ時に
2044mg(累積)のピーナッツタンパク質による二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)を実施した。

結果

■ 本研究には148名の患者が登録され、そのうち123名が修正解析対象集団に含まれ、平均年齢は11.1歳であった。

 デュピルマブ+OIT治療(n=84)により、漸増期間後にDBPCFCで2044mg(累積)のピーナッツタンパク質に合格した患者数が、プラセボ(OIT単独、n=39)と比較して20.2%増加した(p<0.05)。

■ OIT維持期間後、持続的なデュピルマブ治療により、OIT単独を継続した患者と比較して、2044mg(累積)のピーナッツタンパク質のDBPCFCに合格した患者数が改善した(16.6%の差[95% CI −9.7, 42.8]、p=0.2123)。

 安全性は既知のデュピルマブ安全性プロファイルと一致していた

結論

■ デュピルマブは、小児および青少年のピーナッツアレルギーに対するOITの有効性をある程度向上させたが、OIT関連アナフィラキシーに対する保護効果は示さなかった。

 

 

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